16話 デオルとフィー1
はぁレオン様にはもう会いたくないけど、パーティーだから嫌でも顔を合わせることになるんだよねぇ。今日も明日も担当教師がこの魔道具で見てくれるって話だけど、本当に映っているのかは僕らでは確認が出来ないってことらしい。
「デオルくん、今日はよろしく」
「そうですね。よろしくお願いします」
「それと昨日はすまない。ボクの発言権が弱いばかりに」
「えっと、大丈夫です」
吉沢湊ね。日本人の名前だけど、赤髪に青い瞳かぁ。ここでハーフかと聞くと前世がある人間だとバレるからあえて聞かないようにしないと。僕が人生2度目ってことは誰にも言っていない。フィーすら知らないから此処でバレるわけにはいかないかな。
もちろん深い意味はないけど、フィーには機会があれば話そうと思っているから最悪な形でバレたくない。もしかしたら嫌われるかもしれ__いやこんなことを考えてはダメだ。レオン様のせいで色々と考えてしまう。
「デオルくん、大じょ__ッ!?」
「どうかしました?」
「いや君は……なんでもない。みんなの所に行こう」
「そうですね」
僕の肩に手を置いた瞬間に何かを感じ取ったのか? 異世界からの勇者ってことだし、まぁあり得ないことはないだろうけどねぇ。僕に何かしてこないのを見るに変なことではないと思うんだけど、一応警戒はしておこうかな?
日本人だったら色々と抵抗があることが起きるかもしれないからフォローできるようにしておかないとね。だって僕も抵抗はあったし、経験者が助けてあげないといけないこともあるってもんだよ。吉沢もこっちに来て長いとは思うけど。
「やっと来たか。貴様らで最後だったぞ」
「すまない。彼と話していてね」
「おぉデオルではないか。息災か?」
「えぇ」
「貴様にいい知らせだ。我々の監督教師様だ」
レオン様が白々しく演技しながら指を差していたのでそちらを見るとフィーが女子陣に囲まれていた。他のパーティーの女子も一緒に彼女を取り囲んでいた。絶対にこの人は自分のコネで引き込みやがったなぁ。顔に「嬉しいであろう」と書いているしねぇ。
フィーの困ったように笑うことなんて僕は見たことなかったから良かったと思うけどねぇ。フィーは周りに馴染めないことを悩んでいたけど、全然問題なさそうに見えるから本当によかった。あの時に助けた選択は間違っていなかったんだ。
「どうしたのだ? 俺の采配はいいものであろう?」
「僕には関係ありませんね」
「兄さん!! 殿下に向かってな__ッッ~」
「アデルよ。少し黙っておけ。貴様に発言を許した覚えはな__」
「レオン・ゲルハーツ殿下、誰の弟に剣と魔力の圧を向けているんですか?」
「・・・そういう貴様は無礼ではないのか?」
アデルは圧倒的な魔力で体を抑え込まれている中で剣を喉元に向けられている。だから僕は王太子に対して刀を向ける。兄として最低限は弟を守る義務を果たすつもりだ。それがこの国の王太子だろうが、何だろうが関係ない。
まぁ度が過ぎる時は何もしないけどね。痛い目に合わないと分からない奴は一定数いる訳だしねぇ。それに王太子自体が言った言葉もあるしねぇ。
「無礼講にしては度が過ぎるのでは?」
「うむ……だがある程度の礼節は守るべきではないか?」
「アデルよりも僕の方が良くないのでは?」
「二人とも辞めるんだ。仲間内で争うなんて」
「ローレンにも勝てぬ者は黙っておけ」
「そっソレは関係ないだろ」
「ある。デオルは勝ったぞ」
やられた。僕はアデルのことを守ろうとすることも吉沢が首を突っ込んでくることも想定してこの行動をとったのか。今朝のことをこの場で言うためだけに今の流れを作ったのか。今から無かったことにする方法は……ないですね。
全員が僕らの方を見て話しているから聞かれているわぁ。此処から入れる保険ってないモノですか? 周りが何かコソコソと話しているし、フィーは……どうゆう表情? 優しく微笑んでいるような感じがするけど、何?
「デオルよ。刀を収めよ」
「えっ?」
「俺はもう収めておる」
「コレは失礼しました。無礼を詫びます」
「よい、俺も貴様の実力を伝える為にしたとはいえすまなかったな」
「僕ではなく弟のアデルに」
「うむ。もちろんだ。アデルすまなかったな」
「・・・いえ」
「だが貴様は兄を見下しすぎるぞ。最低限は礼儀を持て」
しっかりとした王太子なことで。ちゃんと目的を周りに聞こえるように大きな声で言ったなぁ。しかも自分の非を認めて謝れるなんて、国王夫妻の教育が行き届いている証拠にもなるかもしれないね。ここまで計算しているのであれば怖いよ。
周りから拍手が鳴りやまないし、王太子を称賛する教師陣もいるな。吉沢も止めようとしたことを称えるような声も聞こえるな。アデルは婚約者が心配して駆け寄っているし、気絶しなかったことを褒めている魔導士? の教師もいる。
僕には特に何もないわけではないけど、疑う声ばかりだった。あとは王太子の喉元に刃を触れさせたことに対しての謝罪を求める声も聞こえる。まぁそうなるだろうねぇ。僕は堕落貴族で、コネを使いこのパーティーに入ったって今朝、噂で回っていたみたいだし。
「デオル」
「フィー?」
「デオルが一緒に住んでいた時に言っていたことがある」
「いっぱいあるよ」
「守った。誰よりも早く」
「ぁ……」
フィーの言葉に理解するのに少し時間がかかった。言葉が出てこなかった。確かにフィーと一緒だった時に言ったことがある。「僕は愛や恋が分からないんだ。だから家族を簡単に見捨てられる」と言った。僕は確かに分からなかった。
僕は兄としての最低限を務めたつもりだったけど、アデルは度が過ぎていたのかもしれない。じゃあどうしてアデルを助けたんだ? 度が過ぎているのであれば僕は見捨てるつもりだったのに、一体何を気にして__
「デオルは偉い。私がご褒美に愛称を考える」
「愛称?」
「そう。私だけが呼ぶ愛称」
「それは 最高のかも」
本当にこれが恋だと言うのであれば……僕はフィーにそんなところを見せたくなかったからなのかもしれないねぇ。王太子はムカつくから一回斬りたいけど。まぁそのおかげで気が付いたこともあるから感謝はしないと。斬りたいけど。
あとはフィーにも感謝を伝えないと。フィーを助けて一緒に住んでいた時から僕の心に暖かさが宿るようになった気がする。フィーに恋しているのかが分からないけど僕なりに考えて答えを出そう。好きってことは分かっている。
王太子は斬れないけど、どさくさに紛れて殴るからな。
~フィー視点~
デオルが落ち込んでいた。周囲はデオルのことを褒めようとなんて一切しなくて、あの平民聖女すら何も行動もせずに呆然としていた。多分高濃度の魔力に当てられたからだと思うけど、関係ない。王太子は私や聖女、婚約者たちにも魔力を当てていた。
二人の婚約者は足を無理やり動かしていた。加減されても立っているのがやっとで気を緩めると崩れ落ちるくらいには強い魔力を受けた後でも婚約者の下に行けるのは凄い。貴族の方の聖女は気絶したけど、まぁ興味はない。
あの王太子も酷いことをする。もう少し経てば森に入ってモンスターを討伐するってのにこんなことしてしまったら少し時間がズレ込む。それのおかげで私はデオルに愛称を呼ぶ権利をもらえた。デオルは周りにもっと褒められるべきなのに、どうして。
「フィー」
「どうした?」
「ありがとう。フィーのおかげだ」
「???」
私は何も言っていないし、欲に忠実なだけ何にどうして? 感謝されたんだろうか。デオルはまだ何を考えているかがわかないなぁ。私は好きだし、離す気はないから何を考えているかが分からなくてもいい。




