第5話:実家の貧困と、逆転へのカウントダウン
第1章:【覚醒編】平成元の6歳児、神の玩具を起動する
第5話:実家の貧困と、逆転へのカウントダウン(1989年冬・6歳・小1)
一九八九年の冬、鈴木家の狭いリビングには、どんよりとした重苦しい空気が漂っていた。
無口な父親の健一が持ち帰った一枚の支給明細。
不況の波は、地方のしがないサラリーマンである健一の冬のボーナスを無慈悲にカットしていた。
「健一さん、大丈夫よ。私がパートの時間を少し増やせば、雄大の学用品だって、お正月の準備だってちゃんとできるわ」
母親の恵子が、引き締まった家計簿を前に健一を気遣うように補足する。
だが、健一はただ申し訳なさそうに、ブラックコーヒーの入ったマグカップを両手で包み込んだまま静かに俯いていた。
居間の片隅で自由帳を広げていた鈴木雄大は、その光景をじっと見つめていた。
(前世の俺が味わったあの底なしの貧困を、この優しい両親に二度と味あわせてたまるか。俺を育ててくれるこの身内だけは、何があっても俺が一生、贅沢すぎるほどの富で護り抜く)
雄大は静かに立ち上がり、自分の部屋へと戻った。
学習机の引き出しの奥から、二〇二六年の5G回線を受信し続ける神のスマホを取り出す。
滑らかなガラス面に触れ、数年後に日本国内で開始される「ナンバーズ4」の過去データベースを逆引きで検索した。
液晶画面に、一九九四年秋に開催される記念すべき「第1回抽選」の当選番号が、一点の狂いもなく浮かび上がる。
(ナンバーズ4の開始まであと数年。それまでに、ガキの俺が大金を動かしても両親が不自然に思わないための完璧な『言い訳』を家庭内に設計する。親父、お袋、待ってろ。数年後、実家の口座に一生遊んで暮らせる現生を叩き込んでやる)
雄大は、自由帳の最も深いページの隅に、その四桁の数字を硬質な筆致で書き写した。
まだお小遣い数百円の小学一年生。
しかし、その胸には、愛する家族を絶対に裏切らないという強烈な甘さと、家族からすべてを毟り取ろうとする現世の不況という敵を徹底的に叩き潰すための、苛烈な闘志が静かに、だが確実に宿っていた。
1〜4話を書き直してます!よかったら読んでみてください!




