第40話:親への「1億円」手渡しと、関連書籍利権の永久譲渡の合意
第4章:戦後50年のミリオンセラーと合法的税流最適化
第40話:親への「1億円」手渡しと、関連書籍利権の永久譲渡の合意(1996年春・12歳・新中2)
リビングのテーブル中央に、雄大は一冊の新しい通帳をそっと置いた
健一と恵子は、不思議そうな顔をしてその通帳を見つめている
「お父さん、お母さん。これが約束していた一億円だよ。二人に受け取ってほしいんだ」
雄大は食卓の上のブラックコーヒーに口をつけ、静かに言葉を続けた
健一が恐る恐る通帳を手に取り、中を開く
そこに印字された「100,000,000」という桁外れの数字を目にした瞬間、健一の息が止まり、隣の恵子は小さく声を上げて通帳を取り落としそうになった
「一、一億……。雄大、本当にこれだけのお金が、私たちのものになったというのか。夢でも見ているんじゃないか」
健一が何度も眼鏡を外しては拭き、自身の目を疑うように声を震わせる
「夢じゃないよ。これはこれまでの二人の苦労に対する、僕からのプレゼントだから。でもね、お父さん。このお金を受け取ってもらう代わりに、一つだけ約束してほしいことがあるんだ」
「約束、かね。これだけのお金を貰っておいて、断る理由なんてないが……一体何なんだ」
健一が居住まいを正し、真っ直ぐに雄大を見た
「これから出る本の関連書籍や、新しく発生する利権の窓口を、すべて僕の会社『高天原企画』に任せてほしいんだ。おじいちゃんが遺してくれたあの輸送船の話の利権を、会社で一括して守りたい。その代わり、そこから生まれる利益は、これからも役員報酬としてお父さんたちにずっと支払い続けるよ」
「関連書籍の利権、おじいちゃんの話を、お前が会社で守っていくということか」
健一はしばらくの間、静かに目を閉じて考え込んでいたが、やがて小さく息を吐いて隣の恵子の顔を見た
恵子もまた、息子の持つあまりにも明確な意志に圧倒されながらも、静かに健一の手の上に自身の手を重ねて頷いた
「雄大、もともとお前にあの戦場の話を語ったのはおじいちゃんだ。私たちがその物語を大切に預かっていただけで、それを日本中へ広げたのはお前の力だよ。利権のすべてを会社へ委ねることに、何の異論もない。お前の好きにしなさい」
「ありがとう、お父さん。これで家族のお金と、会社の資金をきれいに分けることができた。僕の手元には、これから次の仕事で使う軍資金として二億一千万円を残させてもらうね」
健一はテーブルの上の合意書へ、静かに自らの署名を刻んだ
インクが紙に染み込んでいく様子を、雄大はフラットな視線で見届ける
前世の孤独と困窮を完全に過去のものへと変え、大切な家族を守り抜くための最初の壁が、このリビングで完全に形となった
窓の外の宮崎の夜空には、静かに春の星が瞬いている
コーヒーの深い香りが漂う室内で、高天原企画の歯車は、より大きな展開に向けて音もなく回転速度を上げ始めていた
(鈴木雄大の個人資産:2億1,000万円)




