第21話:12歳の覇王、中学校の門を叩く
第2章 【胎動編】軍資金の獲得と秘密基地の構築
第21話 12歳の覇王、中学校の門を叩く(一九九五年、春、十二歳、中一)
一九九五年の四月、校庭の桜の木々が暖かな風に揺れていた。
校門の前には、真新しい詰襟の制服に身を包んだ新入生と保護者の人だかりができている。
「雄大、制服がよう似合っちょるよ。斜めにならんごと、名札をちゃんと真っ直ぐにしちょきなさいね」
隣を歩く母親の恵子が、俺の襟元に手を伸ばしながら嬉しそうに目を細めた。
「大丈夫だよ、母さん。掲示板でクラスを見てくるから、母さんは体育館の保護者席に行っていて」
俺は平坦に応じた。
「そうね、迷子にならんごとね」
恵子は何度も振り返りながら、他の母親たちの波に混ざって体育館へと向かっていった。
周囲の生徒たちは、小学校時代の友人を見つけては、クラス分けの掲示板の前で騒がしい声を上げている。
俺は人混みを静かにすり抜け、校舎の入り口へと向かった。
衣服の下に隠された俺の肉体は毎朝の筋トレによって、すでに同級生とは異なる筋密度を秘めていた。
脳内は、ただ冷徹に次なる計画の構築だけに集中している。
東京の出版社へと発送した『輸送船の艦長』の原稿は、すでに先方のデスクへと届いているはずだ。
仕掛けた弾丸が爆発するまでの間、俺はただの優等生というアリバイを維持しながら、現世の推移を見守るだけでいい。
木造の古い床板を踏み締め、指定された一年三組の教室へと入った。
教室内には黒板のチョークの臭いと、新品の教科書のインクの香りが満ちている。
俺は名簿順に並んだ指定の席、窓際の最後列へと腰を下ろした。
使い古された木製机の冷たい感触が、手のひらを通して伝わってくる。
「おい、お前が小学校の時にテストでずっと一番だった鈴木か」
後ろの席の少し大柄な男子生徒が、椅子の背もたれを小突くようにして声をかけてきた。
「ああ、そうだけど」
俺は振り返り、視線をその少年の目元へと固定した。
「中学じゃ、そう簡単に一番は取らせんからな。俺の小学校の塾でも、お前の噂は聞いちょったわ」
少年は腕を組み、挑発するような視線を返してきた。
「期待しているよ」
俺はそれだけを言い残し、視線を窓の外へと戻した。
遠くの街道を走る車の屋根が、春の陽光を反射して小さく光っている。
「はじめまして、鈴木くんだよね。これからよろしく」
今度は隣の席の男子生徒が、ノートを開きながら緊張した面持ちで声をかけてきた。
「ああ、よろしく」
俺は応じた。
教師が教壇に立ち、出席簿で教卓を叩いて退屈な始業の挨拶を始める。
俺は内ポケットに収めた「神のスマホ」の輪郭に、そっと指先で触れた。
中学校という義務教育の枠組みすら、俺にとってはただの潜伏期間に過ぎない。
すべては一ミリの狂いもなく、計算通りの軌道を描いて駆動していた。




