↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/49

第14話:ナンバーズ4開始(一九九四年秋)

第2章 【胎動編】軍資金の獲得と秘密基地の構築


第14話 最初の元手、ナンバーズ4を狙い撃て(一九九四年、秋、十歳、小六)


一九九四年の秋、宮崎の風は冷たさを帯び始めていた。

小学六年生になった俺の身体は、計画通りの筋トレによって、衣服の上からでも分かるほどに引き締まっていた。

手元にある「神のスマホ」の画面が、薄暗い自室の中で静かに光を放っている。

ここまでは一切の無駄なくタイムラインをなぞってきた。

だが、これ以上の計画を駆動させるには、どうしても実弾――まとまったキャッシュが必要になる。

俺の視線は、画面に表示された四桁の数字に固定されていた。

ナンバーズ4。

前世のデータベースから逆引きした、ある特定の抽選日の当選番号。

一分の狂いもなく、現世の確率論を凌駕する絶対のデータがそこにあった。

夕食後、リビングで新聞を広げていた父親の健一の前に、俺は一枚のマークシートと、自分の小遣いを貯めた千円札を置いた。

健一は無口な男だ。

実家で彼が嗜んでいたブラックコーヒーの苦い香りが、静かな空間に漂っている。

「父さん、明日、仕事帰りにこれをお店の窓口で買ってきてほしいんだ」

俺は十歳の子供の声を意識しながらも、感情の起伏を排したフラットな標準語で切り出した。

健一は新聞から目を離し、マークシートに並んだストレートの数字と、俺の顔を交互に見つめた。

普通の親であれば、子供の突拍子もない頼み事を一笑に付すか、説教を始めるところだろう。

だが、俺の視線には一切の揺らぎがなかった。

「……何故これだ」

健一が低く、無骨な声で問いかけてくる。

「ただの勘じゃないよ。数字の流れを全部計算したんだ。絶対に当たるから、父さんの名義で買ってほしい。当選金は、僕がこれから始めることの準備資金にする」

俺はそれ以上の言い訳をせず、健一の目を真っ直ぐに見据え続けた。

沈黙がリビングを支配した。

健一はしばらく俺の瞳の奥を探るように沈黙していたが、やがて何も言わずに大きな手で千円札とマークシートを包み込み、ツナギのポケットへと仕舞い込んだ。

余計な口出しをせず、息子の覚悟をその佇まいだけで受け止める。

それがこの男の流儀だった。

翌日の夜、帰宅した健一は、玄関先で俺に一枚の紙切れを黙って手渡した。

指定された四桁の数字が印字された、ナンバーズ4の投票券。

俺はそれを指先で受け取り、素早くポケットの奥へと滑り込ませた。

現世のシステムが、俺の持つ未来のデータ通りに駆動するかどうか。

確信は一〇〇パーセントだった。

自室に戻り、俺は冷え切った窓の外を見つめながら、次なるステップへの確実な手応えを噛み締めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。