2年生 春②
帰宅を促すチャイムが鳴る
少しだけ、オレンジに染められた靴箱達
授業を終えて、帰路に、寄り道に。
靴の数だけ、進む道が用意されてる時間。
私の大好きな時間。
でも今日は、いつもと違う大好きな時間
日野「新井さん!お待たせ!」
靴を履き終えた私が振り返ると、
宮本くんと並んで歩いてくる日野くんが見えた
「ううん、待ってないから大丈夫…」
日野「そっか…」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて…」
宮本「…なんか俺、邪魔な感じだよね?」
日野「悪いミノル、今日はちょっと邪魔な感じだ」
宮本「はいはい…」
会話を始めて5秒も経たない内に、宮本くんは状況を察してくれた。
いそいそと靴を履き替え、一人、帰路に向かう宮本くんへ一言。
「宮本くん、ごめんね」
宮本「大丈夫大丈夫、後は若いお二人さんで楽しんできてよ」
オレンジに照らされた温かい微笑みが、私たちに差し込んだ。
日野「いっつも一緒に居るんだし、たまには別々の道を往こう、我が友よ」
照れ隠しと本心と、いくつかの感情が混ざった声
宮本「オッケー、じゃあまた明日な!」
日野「また明日!」
「また、明日」
日野「じゃあ、あそこのファミレスでいい?」
「あ、うん」
日野「うん、じゃあ行こっか」
「うん」
~ファミレス内~
日野
「とりあえずドリンクバーと、ポテトでいい?」
「今日さ、いきなり誘っちゃったのに、まさか承諾してくれるなんて思ってなくてさ」
「また今度~とかって言って、断られると思って」
「だから、なんつーか、すっごい嬉しい」
「新井さんって、学校に貼りだされる順位表みたいなのあるじゃん?いつも上の方にいるよね?」
「俺なんて中の中が良い所でさ、お恥ずかしい…」
「って、ごめん。俺ばっか喋ってる」
「あ、ううん、大丈夫だよ」
日野くんは、喜怒哀楽を真っすぐに伝えられる人なんだと思う。
私は人の顔色を気にして、その場を空気を読もうとして、
思考がぐるぐるしてる間に話題が変わってる気がする。
言いたい事が言えない事も少なくないと思う。
「飲み物取ってくるけど、何飲む?」
「あ、えっと…」
「じゃあ、一緒に行こ」
だけど、あなたは気にしないでいてくれるみたい。
「あいつがさ、飲み物を混ぜるとウマいって言うから試したんだけどさ~」
「コーラが入るともう色がヤバくなるし、味も意味わかんなくなるんだよね」
「ぶっちゃけそのまま飲んだ方が一番ウマいと思う。新井さんやった事ある?」
「ううん、やった事ない」
「だよね、そんなアホっぽい事、やらなさそうだもんね」
「うん…」
他愛もない会話、上手な返事も出来てない気がする。
日野「そういえばさ、どうして今日、来てくれたの?」
「え?」
日野「なんか、失礼かもだけど、断られちゃうかな~って、ちょっと思っててさ」
「あー、うん」
日野「だから、なんか、意外だったっていうか」
「うん…」
日野「う、うん」
「私の事、誘ってくれた時は驚いたけど…」
「普段から、断るのがちょっと苦手で、なんか、なんとなく流れで行く事が多くて。」
日野「そっか」
日野「今日も、流れで来てくれた感じ?」
「う、うーん、どうだろ?」
日野「じゃあ今日はさ、お互いについての勉強会にしない?」
「お互いについての?」
日野
「うん、俺さ、新井さんの事知りたいし」
「あ、でも新井さんは俺の事、別に興味ないか」
「じゃあ新井さん勉強会って事で」
トントン拍子に記者会見がセッティングされてしまった。
日野
「新井さんはさ、好きな食べ物何?」
「1年生の時、何してた?」
「学校でさ~……」
日野「~~とかあって、それでミノルと相撲する事になって、仲良くなったんだよね」
「す、相撲?」
日野
「そう!なんか女子に囲まれそうだったから、とりあえず相撲するフリしてそのまま教室から逃げた」
「それ以来、なんかあればすぐ相撲して逃げる事にしてんだよね」
「モテる人って大変なんだね…」
日野
「ミノルと一緒にいると、なおさらなんだよね」
「俺を介してミノルに近づきたい人だったり、その逆だったりで…」
日野「って結局、自分の話、しちゃってる」
「ぜ、全然気にしないでいいよ、楽しいよ」
日野「うん…ならよかった」
私は、私に興味を持つ男性が目の前にいる事実に戸惑っていたと思う。
少しだけ目が合いそうな瞬間が有った。
けど、私じゃなくて、日野くんが目を逸らした。
夕日のせいだったのか、分からないけど、
顔が、
少しだけ熱くなっていた




