第53話
「最期の胎動、全力の疾走」
メイダンの黄金色に照らされた最終直線。残り四百メートル。
レイスターのコックピット内に、無慈悲な警告音が鳴り響いた。
コンソールに赤く点滅する文字。ひび割れたコアから絞り出されていたエネルギーが、底を突こうとしている。出力低下を示すゲージが急激に下降し、機体全体に凄まじい振動が走った。
(……まだ、まだ止まらないで、レイスター!)
操縦桿を強く握り締め、限界を越えた機体からの悲鳴を全身で受け止める。前方では、オレンジの炎を纏ったジャック・オ・ランタンと世界の強豪たちが、砂塵を巻き上げていた。冷却系の死んだレイスターに、周囲の熱波が容赦なく襲いかかる。
その時。
心中プラグを通じて、レイスターの深淵から、かつてないほどの熱い胎動が伝わってきた。バッテリー残量はゼロに近い。それでも、ひび割れたコアが自らを砕きながら、最後のエネルギーを押し出そうとしている。
「——全部、持っていきなさい!!」
ガクンと落ちかけた出力が、次の瞬間、垂直に跳ね上がった。
漆黒の装甲が青白い放電に包まれ、機体は残された全ての寿命を推進力へと叩きつける。
砂塵を切り裂き、前方の群れを一気に飲み込む。宿敵の背中が、視界の中央に捉えられた。
その瞬間。
ミシ、と音がした。
コアのひびが、また一筋、深まった音だ。
麗はそれを聞いた。
引かなかった。




