第46話
「凍てつく中山、咆哮の凱歌」
十二月末、中山競馬場、芝二千五百メートル。有馬記念。
粉雪が舞い散る極寒のターフに、一年を締め括る怪物たちが集結した。
「……姉さんはいない。でも、村上の名は僕が守る。……それだけです」
村上義清は、冷気を切り裂くノーブル・レジーナの駆動音を聴いていた。函館で得た不規則な振動は今、中山のタイトなコーナーを支配するための武器へと研ぎ澄まされている。
「あはは! 湿っぽいのはナシだよ、義清! 去年の覇者が誰か、その身に刻んであげるよッ!!」
隣で黄金の火花を散らす亜紀子のゴールデンルナティック。ジャパンカップ以来、彼女は一切の迷いを捨てていた。
「村上家の内輪揉めはもう飽きた。……王道は、我らを平伏させるためにある」
財前巌の冷徹な宣言と共に、ゲートが弾けた。
一周目の正面スタンド前。先頭は意外にも財前のバハムート。ジャミルとの連携を捨て、自ら全馬を牽引する。その背後、海老原が影のように張り付き、村上勢の進路をミリ単位で潰していく。
中団で耐える義清と亜紀子。
だが二周目の大欅を過ぎた瞬間、亜紀子が吠えた。
「——全部燃えろぉッ!! 過給圧、限界突破!!」
黄金の影が、無理筋な大外捲りを開始する。遠心力でフレームが軋み、火花が雪を溶かしていく。
「……愚かですね。……ですが、その熱が使えます」
義清は、亜紀子が作り出した猛烈な気流の乱れに、あえてレジーナを突っ込ませた。
第四コーナー。財前の壁と亜紀子の加速が激突し、混沌が生じた隙間で、義清はレジーナの不規則な振動を最大出力で解放した。周囲のセンサーが狂い、海老原の影が乱れる。
直線、中山の急坂。
財前を、亜紀子を、海老原を。真珠色の機体が、冷徹な一歩で踏み越えていく。
「——跪きなさい。……この国に、二人の王はいらない」
ゴール板。
1着ノーブル・レジーナ、2着ゴールデンルナティック(クビ差)、3着バハムート(一馬身)、4着ダークランサー(ハナ差)。
義清はゴール後も表情を崩さなかった。ただ、レジーナの操縦桿を握り締めた指先が、震えていた。
「……姉さん。聞こえますか。……僕が、この国の頂点です」
レジーナが、低く電子音を鳴らした




