表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくり競馬2〜『変異する血統(ブラッド・リンク)』〜  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/55

第44話

「東洋の真珠、泥の女王の越境」


 十二月、香港・沙田競馬場。

 湿気を帯びた熱風と、街の喧騒。国内の有馬記念がお祭り騒ぎに沸く中、村上麗は一人、異国の硬い芝の上にいた。

「……有馬を捨ててまで来たんだ。手ぶらで帰るわけにはいかないわよ」

 麗はレイスターのコックピットで、不気味なほど安定したバイタルデータを睨んでいた。

 香港ヴァース、芝二千四百メートル。

 シャティンの芝は、日本のそれより遥かに硬く、粘りがない。高出力のアクチュエーターが自らの重みでフレームを壊しかねない馬場だ。

「麗。磁気流体を高密度硬化モードに切り替えろ。……泥を掴むんじゃない。硬い岩を砕いて進むんだ」

 日本からのリモート通信で、健造のダミ声が響く。ピットには、義清と亜紀子も顔を揃えていた。

「姉さん、マシンの寿命を削る設定です。……でも、今のあなたなら、その限界の上で踊れるはずだ」

 ゲート前。

 英国の重厚なステイヤーや、香港が誇る地元の強豪たち。中でも麗が目を留めたのは、地元香港の雄、オリエンタル・ドラゴン。ネオンサインのような極彩色の装甲が、硬い芝の光を弾き返していた。

「……泥臭い日本馬に、この高速馬場が務まるかな?」

 ドラゴンのジョッキーが広東語混じりの英語で挑発する。

 ゲートオープン。

 超高速のラップが刻まれる。シャティンの硬い芝が、レイスターのフレームを容赦なく打ち付ける。振動が麗の脳を揺さぶり、視界が二重にブレた。

(……痛い? 壊れる? ……府中の炎に比べれば、ただの愛撫よッ!!)

 麗は最も硬いインコースへレイスターを突っ込ませた。

 磁気流体が瞬間的に硬化し、脚部が香港の地を穿つ。跳ね上がる芝の欠片が、後続の機体を銃弾のように襲う。

 第四コーナー。地元の大歓声の中、オリエンタル・ドラゴンが滑るような加速で先頭に躍り出た。

 その背後。漆黒の機体が、火花を散らしながら並びかけてくる。

「——砕きなさい、レイスター!! 世界の壁も、この硬い大地も!!」

 沙田の直線。二頭が、肩を並べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ