第41話
「盾の双璧、王者の証明」
東京競馬場、電光掲示板の最上段に「1」が灯った瞬間、府中のスタンドを震わせるような地鳴りが起きた。
1着レイスター、2着ノーブル・レジーナ、3着ダークランサー。
「……やった。やったわよ、レイスター……!」
漆黒のコックピット内で、麗は激しく上下する肩を落ち着かせ、泥とオイルが混じった涙をグローブで拭った。
春の淀、三二〇〇メートルの泥濘。秋の府中、二千メートルの極限スピード。その両方を、一年のうちに制した。
検量室へと続く地下馬道。
隣を歩む真珠色のノーブル・レジーナが、力なく首を振った。
「……負けました。完璧に、ねじ伏せられた。……姉さん、あなたの力は、気流や演算でどうにかなるレベルじゃない」
義清はハッチを開け、悔しさを滲ませながらも、どこか晴れやかな顔で麗を見つめた。
麗は何も言わなかった。ただ、弟の顔をしばらく見ていた。
その後方、三着の海老原が静かにダークランサーの電源を落とした。
「……村上麗。君のレイスターには、影が追いつく隙すらなかったよ」
それだけ言って、踵を返した。
麗は、重厚な秋の盾を胸に抱いた。
検量室のモニターには、ジャパンカップに向けて牙を研ぐ亜紀子の姿が映っていた。
「……待ってなさい、亜紀子。この盾の重さ、あんたにも教えてあげるわ」
レイスターが、低く電子音を鳴らした。




