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からくり競馬2〜『変異する血統(ブラッド・リンク)』〜  作者: 水前寺鯉太郎


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34/55

第34話

第34話「仁川の激突、血脈の三重奏」


 阪神競馬場、芝二千二百メートル。宝塚記念。

 ファンの投票によって選ばれたスターホースたちがゲートに集う中、観客の視線は一つのガレージから送り出された三頭に釘付けになっていた。

「……暑苦しいわね。あんたたちの熱気だけで、路面が溶けそうよ」

 麗はレイスターのコックピットで、不敵な笑みを浮かべた。ジャパンカップと天皇賞を制した漆黒の王者が、連戦の傷を勲章のように纏い、静かに闘志を燃やしている。

「あはは! 最高だよ! 姉弟喧嘩にアタシを混ぜてくれるなんて、粋な計らいじゃない!」

 亜紀子のゴールデンルナティックが、隣の枠で黄金の火花を爆発させる。

「……姉さん、池谷さん。無駄な熱は、機体の寿命を縮めるだけです」

 最外枠。真珠色のノーブル・レジーナが、貴婦人のような静寂を保っていた。義清の瞳には、感情の揺らぎがない。

 ゲートオープン。

 ハナを叩いたのは、亜紀子だった。

「道を開けな! アタシがこのレースの主役だよッ!!」

 狂気の逃げ。その後ろに、レイスターがぴったりとマークする。さらにその外、レジーナが空気抵抗を無視したように悠々と先行集団へ加わった。

 第三コーナー。

 麗が内側からじわじわと亜紀子を追い詰める。

「……そこまでよ、亜紀子! 遊びは終わり!」

「いいや、これからが本番だよ、麗ッ!!」

 二頭が火花を散らしながら第四コーナーを回る。

 その時、さらに外側から、音もなく接近する影があった。

「——失礼。そこは僕の席です」

 義清のレジーナ。麗と亜紀子が作り出した乱気流の真ん中へ、ためらいなく飛び込んでくる。揺さぶられながら、その振動を推進力に変えていた。

 直線。

 ルナティックが粘り、レイスターが食らいつき、レジーナが飲み込もうとする。

「が、ああああああッ!!」

「壊れろ! もっと壊れろぉぉッ!!」

「……跪きなさい。皆、まとめて」

 残り百メートル。

 三頭の排熱で、ゴール付近の陽炎が歪んでいた。

 誰の鼻先が先に届くのか、それだけが問題だった。

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