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38話 結果報告(結城視点)

 唯夏ちゃんが華を尾行した次の日。

 なぜ華が別れを切り出したかわかったとメッセージが届き、その報告に唯夏ちゃんが家にやってきた。


 学校が終わった直後で制服姿の唯夏ちゃんは、神妙な面持ちでローテーブルの向かいに座っている。


 なんだろう、なぜ黙っているんだ。

 早く結果を知りたいのに、唯夏ちゃんはずっと俯いているだけで中々話を切り出そうとしない。


 用意したアイスカフェオレに手をつけることもなく、ただじっとテーブルを凝視している。


 沈黙が続き、グラスに入った氷がどんどん溶けていく。


 カラン、と溶けた氷が音を立てて鳴ったのを合図かのように、唯夏ちゃんはゆっくりと顔を上げた。


「先輩、よく聞いてください……」


 唯夏ちゃんの表情は真剣そのもので、これから語るであろう話が重大であることを察する。


「結論から言います」


 口を開いては閉じてを繰り返し、意を決してその重い口を開いた。


「華ちゃんは……――妊娠しているかもしれません」


「……え?」


 予期せぬ言葉に、俺の理解が追いつかない。


「えっと……、もう一回言ってもらっていい?」


「なんかい聞き返しても変わりませんよ。華ちゃんは、妊娠しているかもしれません」


「え、は? に、妊娠……?」


 唯夏ちゃんは今、妊娠って言った……?


 困惑する俺に、唯夏ちゃんはゆっくりと首を振った。


「戸惑うのもわかりますけど、現実は変わりませんよ」


「いやだって、妊娠って……なんでわかるの?」


「華ちゃんが産婦人科に入ったのを見たんです」


「それだけなら他の理由もあるんじゃない?」


「近くにあるのに、一時間もかけて産婦人科に行きますか? 意味もなく人目を忍んで遠くの病院に行くとは思えません」


 華はそんな遠い場所にまで……。

 確かに、それなら妊娠の可能性が高くなる。


 理解が追いつかない俺に、唯夏ちゃんが追及するように口を開いた。


「先輩、心当たりはありますか?」


 心当たりって言ったって……。


「たとえば、華ちゃんと生でエッチした、とか」


「してないしてない! ちゃんと毎回ゴムは着けてたって!」


 華と兄妹と発覚するまでは、恋人のように過ごしていた。


 そのときはエッチだってしていたが、もちろんゴムは着けていた。


 ん、でも待てよ。

 そういえば最後に華とエッチしたとき……。


 口に手を当てて最後にしたときのことを思い返すと、一つだけ心当たりがあった。


 俺のようすを見て、唯夏ちゃんが剣呑な表情で問いかけてくる。


「なにか思い当たるふしがあったんですね?」


「いや、うん……ひとつだけ」


「なにをしたんですか?」


「その、最後に華とエッチしたとき、ご、ゴムが破れてたんだ……」


「……そ、それで中に出しちゃったんですか!?」


「出してない出してない! ゴムを着けてても毎回外で出してたから!」


「でも、結果的に生でやっちゃったんですよね?」


「そうだね……。一応外で出したから大丈夫だと思っちゃって……」


 そんな弱々しく答える俺に、唯夏ちゃんが呆れたように嘆息する。


 俺たちの間に重苦しい沈黙が訪れた。


 聞こえてくるのは時計の秒を刻む音と、お互いからこぼれる溜息のみ。


 予想外な状況に、頭を抱えてしまう。


 華が、妊娠しているかもしれない……。

 そうなると、道は二つしかない。


 産むか、堕ろすか……。


 どちらの選択肢を選んでも、辛い選択肢になるだろう。


 もう何度目かわからない思い溜息がこぼれる。


「唯夏ちゃん、どうしたらいいかな……?」


 どうしたらいいかわからず、救いの手を求めて唯夏ちゃんに助言を仰ぐ。


「先輩、あたしは今めちゃくちゃ怒ってます」


 しかし、唯夏ちゃんは俺の救いの手を拒んだ。


「先輩がどっちの選択肢を選んでも、辛いのは華ちゃんです」


 鋭い視線で俺を射貫き、糾弾するように厳しく責め立てる。


「ここであたしが助言して、少しでも自分の罪を和らげられるのも許せません。先輩は、苦しんで悩んで自分で答えを出してください」


 唯夏ちゃんはそう言って俺を突き放した。


 たしかに、その通りだ……。

 自分でちゃんと考えて、答えを出さないといけない。


「どうして華は、俺に相談してくれないんだ……」


「華ちゃんは、先輩に迷惑をかけたくなかったんだと思います。だから別れるって選択をしたんだと思います」


「迷惑って……」


 これは二人の責任だろう。


 それを秘密にして別れる選択をして、一人で悩みを抱えるなんて。


「華ちゃんのためにも、ちゃんと二人で話し合いましょう」


「うん、わかってる……」


 唯夏ちゃんがくれた唯一のアドバイスに、頭を抱えながら深く頷いた。

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