32話 誕生日
あれから二日が経った。
今日は、俺の誕生日だ。
華が俺のために誕生日を祝おうと言ってくれ、学校が終わったあとに駅前で落ち合い、一緒にケーキを買い家で過ごす予定になっている。
俺は昨日内海さんから届いたメッセージを見返していた。
『先輩、明日は誕生日ですよね。あたし、誕生日プレゼント買いました。なので、一緒に過ごしたいです。先輩が来てくれるまでずっと待ってますから。ずっとずっと、待ってますから』
俺はそれに対して予定があると断ったが、それでも内海さんは待ってますと返してきた。
身体を使ってまで俺を止めようとしてくれたのに、俺はあんな酷いことをした。それでも内海さんは俺に好意を持ってくれている。
ここで内海さんのほうに行ってしまうと、華は悲しむだろう。
かといって華と一緒に過ごせば、内海さんは本当にずっと待ってるかもしれない。
どうしたらいいんだ……。
スマホが震え確認すると、華からメッセージが来た。
学校が終わったらしい。ということは、内海さんもそろそろ学校から帰宅するはず。
俺が選んだのは……。
「お兄ちゃん、誕生日おめでとうー!」
家で、ローテーブルの上に置かれたホールケーキを囲み、華が俺の誕生日を祝ってくれる。
華は楽しそうにハッピーバースデーソングを歌ってくれ、俺がろうそくを吹き消したあと拍手を送ってくれた。
やっぱり少しむずがゆいな。
毎年祝ってくれてるけど、馴染みのないイベントにソワソワしてしまう。
「はい、誕生日プレゼント!」
華から手渡されたプレゼント。
包装された箱を受け取ると、ずっしりとした重みが手に伝わる。
「ありがとう。開けていいかな?」
「もちろん!」
包みを開けると、中には高級そうな財布が入っていた。
オシャレに疎い俺は、華によくコーディネートしてもらっている。
この財布も、俺にはよくわからないがとてもオシャレなんだろう。
「こんな高そうなもの貰って大丈夫?」
「誕生日プレゼントなんだし、受け取ってもらわないと困るよ」
「本当に嬉しいよ。ありがとう」
俺がお礼の言葉を告げると、照れくさそうに華が笑った。
「ケーキ食べよ、お皿取って来るね!」
華がパタパタとキッチンに向かった。
その後姿を眺めながら、俺の心はざわざわと落ち着かない。
内海さんは、いまだに待っているのだろうか。
あれから二時間も経っている。
内海さんが待っている場所は駅の近くにある公園。
四月といっても、夜はまだまだ寒い季節だ。今日なんか特に肌寒く、夜はさらに冷え込むだろう。
そんな中で待ち続けていたら、体調を崩してしまう。
いや、俺は行けないって告げたんだ。内海さんもきっと帰ってくれてるはず。
「お兄ちゃん、はいこれ」
悩みに耽っているところを、華の言葉で引き戻された。
いつのまにかケーキが切り分けられ、俺の手元にはプレートが乗ったケーキが置かれている。
「うーん、ケーキ美味しいね」
フォークを咥えながら、華がケーキに舌鼓を打っている。
その笑顔を見ていると、俺の選択は間違っていないと再確認できた。
うん、これでよかったんだ。
俺は、華をもう泣かせないって決めたんだから。




