第354話「出口で待つ襲撃者」
#第354話「出口で待つ襲撃者」
六階層の討伐を終え、レンたちはダンジョン外へ向かうことになった。その途中では高泉首相と大泉防衛大臣がレンに何度も礼を言っていた。
やはり二人にとっては六階層の攻略ができたことが嬉しかったのだ。
特に高泉首相は上機嫌。
「ありがとう、できればまた一緒に来たいわね」
「まあ、それほど頻繁でなければ……」
レンとしては、嫌とは言えず困っていた。半年に一回ぐらいならばいいかとは考えていたが、軽はずみなことも言えない。朝倉に相談しようと考えていた。
その後、ダンジョンの出口へ。
ただし今回はダンジョンの外にも問題がある。あの怪しい7人の視線には注意する必要があるのだ。
そのため、高泉首相、大泉防衛大臣、黒澤、そしてレンたちは出口手前で簡単な打ち合わせを行った。
基本的な布陣を決めた。
まず、レンは高泉首相の護衛に付いて離れない。
ルナもまた大泉防衛大臣の護衛に付いてやはり離れない。
ひよりと使役モンスターのラム、リン、ロア、ルフ、クーは周囲警戒。近付く者がいれば制圧という形だ。
黒澤は全体のバックアップ。そうして役割分担が決まったことで慎重に外へ出た。
外に出てすぐに、レンたちは視線を感じていた。
ダンジョンに入る前よりも、明らかに殺気が強い。空気が張り詰めている。
そうして周囲を警戒しつつ歩みを進めた、その時。
兵士風の外国人男性が5人、軽いステップを踏みながら無言で近付いてきた。それぞれ武器を持っている。
間違いなく襲撃だった。しかしレンたちは慌てなかった。完全に想定済み。
そして、高泉首相と大泉防衛大臣の護衛についているレンとルナ以外はそれぞれの敵に慎重に間合いを詰めた。慌てる必要はない。二人を守ることが最優先だ。
と、その瞬間。
とんでもない速度でクアンが一直線に突っ込んでいった。狙いは当然、高泉首相だ。
しかしそこにはレンがいる。彼は一歩前に出た。常人から見ればとんでもないスピードではあるが、レンにとってはたいしたことはない。
高泉首相に伸びた手首を余裕を持って軽く掴み、そのままクアンを地面へ押さえつけた。
ドスッ!
クアンは何が起きたのか分からなかった。もう少しで手が届くと思った次の瞬間に見えたのが地面。
そして状況を把握した。自分は知らないうちに地面に抑えつけられたのだと。
これはまずいと、自由になっている足で蹴りを繰り出したが全く問題なく軽く弾かれた。そして再び抑えつけられた。拘束が強くなった。
「(やはり、とてつもなく強い…)」
レンとしてはあまり手荒なことをしたくはなかったが暴れるから仕方がない。今度は動けないように抑えつけた形だ。
クアンが軽く抑えつけられるのを見てテロ組織のメンバーは驚愕した。いつもならばすでに誘拐が完了している。クアンならば大丈夫だと確信していた。
しかし、見えている光景は全く逆だ。
そして、一人を除いて撤退を選んだ。
逆にクアンを助けようと動いたのはレイラのみ。彼女の声が響いた。
「(クアン!)」
クアンの元に駆け込もうとしたレイラを、ひよりが一瞬で抑え込んだ。
レイラはテロ組織に鍛えられているとは言っても、遥か高みにいるひよりから見れば一般人と変わらないレベルだ。何の脅威でもない。
その後は逃げようとした兵士たちをラム、リン、ロア、ルフが次々と軽く制圧していった。
――そして、その時。
遠方から銃声。乾いた音が空気を裂いた。狙撃犯がクアンとレイラを狙ったのだ。
「(レイラさん、危ない!)」
クアンは焦った。このままではレイラが撃たれてしまう。自分のことは考えずにレイラを助けようとした。しかしレンに抑えつけられて全く動けない。
クアンの顔色が絶望に染まった。このままではレイラが危ない……。
しかし銃弾はレイラに届くことはなかった。ひよりが空中でその銃弾を掴み取ったのだ。一方でクアンに向かった銃弾もレンが軽く掴んでいた。
クアンにも銃弾は見えた。しかし、さすがに掴むという発想は全く無かった。レベルが全く違うと認識した。
「(嘘……、あり得ない、やはり勝てるはずがない相手だった……)」
その数秒後、狙撃手もクーに取り押さえられ全ての戦闘は終わった。
完全なる全員制圧。
レンは念のために、軽く首筋に手刀をおろしクアンを気絶させた。他のメンバーもレンを見て同様に処理完了。
七人全員を地面に転がした状態で、レンは振り返った。
「高泉首相、これ、どうします?」
「すでに大泉が連絡を入れたわ。すぐに来るはずよ」
さすが高泉首相も大泉防衛大臣も落ち着いていた。
しかし今回は特別な問題があった。レンが押さえている女性を見下ろしながら語った。
「この女性はダンジョン内の力を外でも使えるようです。体感でレベル4相当かと。通常の拘束ではまずいでしょう」
そのレンの言葉にはさすがに高泉首相の表情が変わった。新たな秘密の戦力だ。
高泉首相が知っている秘密の戦力はレンたちとI国の2人のみ。更にそこに1人が追加された形になる。
「そうですか……」
そこで大泉防衛大臣が追加で他の部門に連絡を入れた。厳重な拘束をするための部隊に依頼したのだ。
ほどなくしてSP部隊が到着。襲撃してきた兵士たちは次々と運ばれていった。
ただし、レンが押さえていた女性だけは特別扱い。別の部隊に渡すことになるのでその場に残った。
しばらくして運ばれてきたのは猛獣用の拘束具。さらにベルトで何重にも固定された。
レンたちも軽くチェック。これならばさすがに動けないだろうと判断、そのまま運ばれることになった。
しかし、そこでクアンが目を覚ました。クアンは拘束を理解し動けないと悟り、叫びだした。
「(レイラさんは!?)」
レイラという人物は、この女性を助けようとした人のことだろうとレンは考えた。そして自動翻訳アプリを使って説明した。
「(君が暴れなければ彼女には何もしない。しかし暴れれば危険だ。おとなしくしていて欲しい)」
そう告げると、クアンは睨みながらも沈黙した。
そうして襲撃の後始末も完全に終わった。
レンたちはエリナさん、樹、葵が待つホテルへ戻ることにした。
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