第355話「守れた理由」
#第355話「守れた理由」
(レン視点に戻ります)
襲撃事件の翌日、俺たちは二泊したホテルを出て自宅に帰った。そして、いつも通りに恩方ダンジョンに潜った。
ここ数日のことが嘘のように、今日はいつもの通りの活動だ。まあダンジョン活動は日課のようなものだからね。当然といえば当然なんだが。
でも、後から考えると昨日は本当に大変な状況だったと思う。まさか自分が護衛となって高泉首相と大泉防衛大臣を守ることになるとは。
日本のトップを担う二人だ。今でも会話をするだけでもドキドキなのだ。それがなんと一緒にダンジョンに潜って、さらには護衛までするとは。思いもよらないことが次々と起こっている。
思えば数年前まではダンジョンでは全く稼げず、一人でコツコツと時給数十円レベルで頑張っていたのだ。本当に大きく変ったものだと実感する。
そして今回は余裕があったとはいえ、無事に高泉首相と大泉防衛大臣を守れたのは良かった。何かあったら日本の危機だ。
そう思って、念のため昨日の出来事を伝えようと朝倉さんにも連絡を入れた。
だが、すでに話は耳に入っていたらしい。まあそれは当然か。朝倉さんからは何度も礼を受けた。
「本当に助かった」
「いえ、無事に守れて良かったです」
そして、襲撃についての概要説明も受けた。
その目的はまだ不明だけど、襲撃者はQ国にから来たプロのテロ組織だったらしい。そのためSPが何人いても突破される可能性はあったという。
特に“秘密の戦力”がいた以上、通常の護衛体制では厳しかっただろうとのことだった。
「現実としてはかなりの危機だった。君たちが一緒にいるタイミングで本当に良かった。ありがとう。いくら感謝しても仕切れないよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
俺としては朝倉さんからそう言ってもらえて誇らしい。確かに、今の俺たちならたいていの敵は何とかなる。今回も相手がプロだったらしいが対応にはかなりの余裕があった。
俺にも凄い実力が付いたものだ……いや違うな。今回、問題なく対応できたのは、あくまで使役モンスターたちのお陰だ。
ラム、リン、ロア、ルフ、クーが<FS7>へ遷移してくれたからだ。
彼女たちが強くなって<FS7>へ遷移してくれたからこそ、俺はダンジョン外でもダンジョン内での力を保持できる。
つまり――守れたのは、ほとんど俺の力ではない。
そう思って俺は恩方ダンジョン六階層での休憩中、俺はみんなに向き直った。
「ラム、リン、ロア、ルフ、クー。ありがとう。みんなが<FS7>になってくれたおかげで、首相と防衛大臣を守れた。本当に感謝しかない。みんなのおかげだよ。」
一瞬、全員がきょとんとした。
……何を驚いているんだ?
ラムが呆れたように微笑む。
「何を言っているのですか? 感謝するのは私たちの方です」
リンも続く。
「そうです。レンさんがいなければ、私たちはここにいませんです」
ロアが笑う。
「レンさんが道を作ってくれたから、私たちは強くなれたんだよ」
ルフがくすくす笑う。
「レンさんは時々変なことを言うから面白いですね。私たちはレンさん、ひよりさん、ルナさんがいてこそですよ。三人のために頑張るのは当然です」
クーは真っ直ぐに言った。
「俺は毎日が楽しい。それはレンさんのおかげだよ。だから、いくらでも頼って欲しい」
……なんだよ、それ。
ちょっと胸が熱くなるじゃないか。
「分かった。みんな、これからも助けてくれ。よろしく頼む」
「「「「「もちろんです!」」」」」
即答だった。本当にありがたい仲間たちだ。俺は本当に恵まれていると思う。
その後は軽い反省会を行った。ルナが真剣な顔で言う。
「要人警護について、もう少し体系的に考えた方がいいかもしれないな。今回、高泉首相と大泉防衛大臣を守ったことで、今後も依頼が入る可能性がある」
「そうだな。考えておく必要がありそうだ」
確かに、今後は要人警護の依頼が来ないとは限らない。
もちろん日本にはそれ専門の組織もあるだろう。だから、基本的には俺たちに頼ることはそう多くないと思う。だけど、今回のようなことがあったからには依頼を受ける可能性は十分にある。
例えば、ダンジョンから産まれた秘密の戦力。これで俺たちを含めて三例目だけど、まだ他の国にある可能性がある。
そういった情報が入れば、俺たちの力が必要になるだろう。
また、今回のように急に要人を守る必要性に迫られる時があるかもしれない。その時に慌てても遅い。
昨日は実力差が圧倒的だった。だから余裕もあった。
だけど、これだけ世界各地で秘密の戦力が出てきたならば、更に強い秘密の戦力が出てくる可能性もある。
となれば、次も同じように勝てるとは限らない。いつ何が起きても、しっかりと対応できるように備える必要があるだろう。
俺たちはダンジョン攻略を最優先にする。
それは変わらない。
だけど、守るべきものは多い。そのための準備も必要だろう。新たな課題が一つ、増えた。要人警護についても考えていこう。
それでも、まずは今は目の前のダンジョンだな。レベルアップを続けることが一番の近道だ。守るにしても力がないと不可能だ。今は着実に力を付けるのが先決。
俺たちは休憩を終え、いつものように前へ進んだ。
まだまだ遠く先にあってその輪郭さえも見えないけど、この先にレベル7があるのは間違いない。その歩みを止めるわけにはいかない。
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