第352話「葉山ダンジョンでの挑戦」
#第352話「葉山ダンジョンでの挑戦」
(レン視点です)
よからぬ視線を感じてはいた。その数はおそらくは七人であろう。そのうちの一人は遠方。七人ともにそれなりに強者だと思えた。
そのため、俺たちは警戒を緩めることなく葉山ダンジョンへと入った。中に入ったのは、高泉首相、大泉防衛大臣、黒澤さんの3人に加えて俺たち8人(俺、ひより、ルナの3人に加え、ラム、リン、ロア、ルフ、クーの5体)、すなわち総勢11名になる。
これだけの大人数でダンジョンに入るのは俺としては初めてかもしれない。そのため、いろいろなことができるのではないかとちょっとワクワクもした。
高泉首相、大泉防衛大臣が入るということでダンジョンン内はすでに進入禁止となっており他の人間の気配は見られない。
しかし外ではおかしな視線があったのだ。ダンジョン内でも用心するに越したことはないだろう。警戒しながら歩みを進めた。
まあレベル8で段違いに強い黒澤さんもいるので、ダンジョン内ではよほどのことが無い限りは大丈夫だろうけどね。
そうして、まずは四階層で軽く討伐を行うことになった。
四階層はウルフ系モンスターが中心。俺たちが普段潜っている六階層と比べれば二ランクほど下だ。数も少ないし全く問題ない。
正直、ウォーミングアップにもならない感じだ。適当に倒していった。
しかし驚くこともあった。俺は思わずうなった。
「おお、なるほど……」
「これはたいしたものだ」とルナ。
「凄いわね」とひより。
高泉首相の剣筋は思った以上にしっかりしていた。
大泉防衛大臣も同様だ。無駄が少なく、足運びも安定している。おそらく何らかの剣術を長くやってきているのだろう。基本はしっかりしていると思えた。
そして黒澤さんがとにかく強い。この人はやはり桁違いだ。
二人を自然にフォローしながら、周囲のウルフなどを軽く薙ぎ払っていく。あまりにも強すぎて、周りにいるモンスターの方が気の毒になる。
黒澤さんも剣術を何かやっているのかもしれないが……それよりも野獣という方がぴったりくる。正直、ダンジョン内ではモンスターよりも怖い存在に見える。あまり近寄らない方が良さそうだ。
俺たちも、首相たちの様子を横目に見ながらほどほどに討伐を行った。どこまでやっていいのかは分からないが、自然と役割分担ができており、気付けば一帯は一掃されていった。
そうして、しばらくはその四階層で討伐。それがウオーミングアップのような形になりそのまま五階層へ。
「この階層では左の三分の二くらいをレンたちがやってくれ!」
黒澤さんがそう言うので、俺たちは左前方に出た。八人いるこちらは余裕があるが、向こうは三人。さすがに少し大変そうだ。
そこで俺、ひより、ルナのいずれかが適宜フォローに入る形にした。
横からオークを軽く攻撃することで動きを制限し、隙を作る。そこで高泉首相と大泉防衛大臣に討伐してもらう。
いわば、お膳立てだ。高泉首相も大泉防衛大臣もオークを何体か討伐し、しばらくして軽く休憩。
そこで高泉首相が苦笑した。
「レンたちはやはり強いわね。同じレベル6とは思えないわね」
「ああ、少し前までは自分たちが上だったはずが完全に抜かれている。ちょっと悔しいな」
大泉防衛大臣も悔しそうに続いた。でも、そりゃそうだよね。俺たちはほぼ毎日潜っている。そして同じレベル6にもなった。
政治家として多忙な二人よりも強くなっているのは当然だと思う。
「仕方ないですよ。私たちは毎日ダンジョンに潜っています。しかもいつも私たちがやっているのはここよりも難しいスピード系の恩方ダンジョンですからね。お忙しい首相と防衛大臣に後れを取るようであれば逆に怒られます」とルナ。
「天下のルナ君にそう言われたら仕方がないな」と大泉防衛大臣とやや照れている。
ははーん。どうやら大泉防衛大臣はルナのファンと見た。ルナは動画配信で人気だから大泉防衛大臣も見たのかもしれない。
しかし高泉首相は首を振った。
「いや、違うわね。普通のレベル6よりも、レンたちは明らかに強い。フォローしてもらった時のやりやすさが全然違うもの」
「確かにそうだな。それは同意する。本当に強いし心強い」と大泉防衛大臣も続いた。
そう言われると嬉しい。
でもそこで、黒澤さんがすぐに口を挟んだ。
「こいつらをあまり持ち上げない方がいいですよ。慢心は命取りなんで、特にレンは調子に乗りやすいので、あまり褒めないでやってください」
……つれないな。
まあ、俺が調子にのりやすいのは認めよう。そして自信過剰になるのも良くないのは事実だ。だから黒澤さんの言うことも、もっともではある。なので文句も言いたいところではあるがぐっと我慢した。
その後、しばらく休憩して再び五階層を回ろうとする気配があったので、俺は聞いた。
「六階層には行かないのですか?」
三人が同時にこちらを見た。そして高泉首相と大泉防衛大臣は俺の言葉にびっくりしているようだ。
もしかして俺はまずいことを言ってしまったのだろうか?とりあえず続く言葉を待つことにした。
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