第345話「秘密の戦力に」
#第345話「秘密の戦力に」
クアンはレイラに助けられたことで恩義を感じると共に、自分を連れて行って欲しいと懇願。レイラはクアンの特殊性を知ったこともあり連れて帰ることにした。放置しておくのはあまりにも危なっかしい。
その後、クアンはレイラと行動を共にすることで、驚くべき速度で実力を伸ばしていった。
クアンはもともと戦闘能力が高かったわけではない。普通以下とも言えるだろう。前にいたクランでもお荷物になっていたぐらいだ。
しかしながらテロ組織の実力者であるレイラの徹底した指導、そしてレイラに見捨てられたくないという一心での努力が、彼女の成長を加速させた。
レイラにとって、ハンター初心者で素質があるとも思えないクアンを育てることは正直なところ手間のかかる仕事だった。
しかし、そのダンジョンの外でも力を発揮できるという潜在能力を知っていたこともあって粘り強く対応した。
自らの鍛錬やレベルアップを後回しにしてでも、クアンの育成に全力を注いだのである。クアンもレイラに認めてもらいたいという気持ちで必死に食らいついた。
その努力は実を結んだ。クアンは比較的、短期間でレベル4へと到達したのだ。レベル4はプロのハンターとして独り立ちできる実力を意味する。
レイラは素直にクアンを褒めた。
「クアン、とうとうレベル4に到達したな。よく頑張ったな。大したものだ。最初はどうあがいても使い物にならないと思っていたんだがな」
「レイラさん……ありがとうございます! 褒められているのか、けなされているのか分かりませんね」と笑う。
「もうお前は一人でやっていける。いつ私のもとを離れてもいいんだぞ」
レイラの言葉に、クアンは首を横に振った。
「嫌です! 私はずっとレイラさんと一緒にいます!」
その真っ直ぐな想いに、レイラは小さく笑みを浮かべた。長い時間を共にすることによって、レイラにとってもクアンは妹のような存在になった。本当は別れたくなどない。
しかし自分はテロ組織に縛られている身。クアンには自由になってもらいたかった。
こうして二人は、師弟であり、仲の良い家族のような絆で結ばれていった。
しかし――その平穏は長くは続かなかった。
ある任務の最中、レイラが敵の奇襲を受け、孤立する事態が発生したのだ。レイラが戻らないことをおかしいと思いクアンはテロ組織に直談判。
「レイラさんはどこにいるのですか? 何故、戻らないのですか?」
「ああ、レイラのことか。彼女たちはC地区で襲撃を受けた。もう生きていないかもしれない」
そこでクアンは急ぎ、救出に向かった。
絶体絶命の状況の中、クアンは迷うことなく戦場へ飛び込み、その圧倒的な力で敵を排除し、レイラたちの救出に成功したのだ。
だが、その一件が転機となった。
クアンの規格外の力が、ついにテロ組織の上層部に知られてしまったのだ。
数日後、クアンは幹部に呼び出された。
「お前の力は組織のために使ってもらう。断るという選択肢はない」
「……どういう意味ですか?」
「お前が言うことを聞かなければ、レイラの居場所はなくなる。命の保証もない。もちろん、この話はレイラには伝えるな。その時点で全てが終わることになる」
冷酷な脅迫だった。
クアンはすぐにレイラへ相談し、共に逃げることを提案した。しかし、レイラは静かに首を振る。
「この組織から逃げるのは簡単なことじゃない。中途半端に動けば、私たちだけじゃ済まない。関係のない人間まで巻き込まれる」
その言葉に、クアンは何も言えなくなった。
こうして彼女は愛する人を守るため、テロ組織の言うことを聞くことを決断。自ら進んでテロ組織の戦力となる道を選んだ。
最初に与えられた任務は、富裕層の誘拐と身代金の回収だった。常人の数千倍とも言える腕力、異常な動体視力、そして圧倒的なスピードを持つクアンにとって、それらはあまりにも容易い任務だった。
あまりにもあっさりと成功させたことでテロ組織の任務は次第にエスカレートしていった。
そして、より警備の厳しい標的の誘拐をクアンは次々に成功させていった。
その結果、テロ組織の誘拐成功率は飛躍的に向上し、ついには政府要人の誘拐にまで到達した。組織の名声は裏社会で一気に高まり、勢力は拡大していった。
やがて、テロ組織はQ国と密接な関係を築くようになる。Q国に拠点を置く組織にとって、国家の庇護を受けられることは大きな利点だった。
互いの利害が一致し、強固な協力体制が確立された。
そしてある日――C国の軍部高官からQ国へ、極秘の依頼が舞い込んだ。
その内容は、日本の高泉首相の誘拐だ。
テロ組織としても、日本という遠隔地での大規模作戦には難色を示した。しかし、国家からの依頼を断ることは現実的ではない。最終的に、高額な対価を条件に依頼は受諾された。
こうして、クアンの力を中核とした――
高泉首相誘拐計画が、静かに動き出すこととなったのだった。
当然のことながら日本でこの情報を知っているものはいない。特別な警護も特別に敷かれていなかった。
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