第343話「秘密の戦力の誕生」
#第343話「秘密の戦力の誕生」
テロ組織が誇る“秘密兵器”――その正体は、クアンという名の一人の女性だ。性格はややおとなしい。年齢は21歳、健康的な褐色の肌が特徴的だ。
今は秘密の戦力と呼ばれるまでになっているが、彼女はもともと、Q国に存在する弱小クランの一員に過ぎなかった。孤児で貧乏だったのでその日暮らし。何とか稼ごうと頑張っていた。
しかし現実にはその頑張りは報われていなかった。クランの拠点では、クアンに対して、いつものような罵声が響く。
「おい、クアン、今日も疲れたから早く飯作ってくれ、あと洗濯も忘れるなよ。装備の点検も宜しくな」
「はい。分かりました」
(はあ、今日も雑用ばかり。でも私は弱いから仕方ないよね)
その弱小クランの中でもクアンは特に弱く、戦力としてはほとんど期待されていない存在だった。
弱いには理由がある。そもそもレベルが低いので当然なのだ。本来であればクランメンバー全員をバランスよくレベルアップさせるのが理想だが、現実は非情。クアンは事実上放置され、他のメンバーの育成が優先されていた。
そしてクアンはクラン内部では便利な存在、雑用としてこき使われていた。
それでもクアンは何とかしようと必死に頑張った。
しかし、レベルが低いままで彼女が下層へ潜るのは極めて危険なことだ。クランメンバーはそれでも彼女を討伐に同行させた。本来ならばあり得ない運用が続く。
クアンはそんな状況で、仲間の補助や荷物運び、周囲の警戒など、自分にできる役割を懸命に果たしていた。どれほど軽んじられても、クランの一員として役に立ちたい、少しでも稼ぎたい――その一心で頑張っていたのだ。
しかし、ある日、悲劇が起きた。
ダンジョン内で突如として多数のモンスターが出現したのだ。
本来ならば、クラン全員で連携すれば切り抜けられるだろう。だが、リーダーの下した判断は冷酷だった。より助かる可能性が高いとして囮作戦を考えた。
―そう、クアンを囮にしたのだ。
「クアン、お前は盾になって時間を稼げ! みんな、なんとか逃げ切るぞ!」
「そんな……無理です。私には囮になる力などありません」
そんなクアンの反論は当然のようにリーダーからは無視された。混乱の中、クアンは仲間たちに盾として利用され、その場に置き去りにされたのだ。
メンバーの中にはさすがにひどすぎる、助けるべきだという声もあった。しかし現実的にリーダーの命令を覆すことは困難。現実に危険が迫っており仕方なしに全員が逃げた。
クアンの胸には絶望が襲った。もう駄目だ、ここで全てが終わる――そう思った。
それでもクアンは諦めなかった。彼女は必死に、逃げていったクランとは反対方向へ走り、囮として敵を引きつけながら、偶然見つけた横道へと転がり込んだ。裏切ったクランにも関わらず、彼女はその役割を全うしたのだ。
敵モンスターたちはクアンを見失い、彼女から離れていく。
「良かった。何とかみんな助かった。私も何とか逃げよう……」
そうしてクアンの犠牲的な行動がクランの逃走を助けた。全員が助かったかに見えた。
しかし、彼女の危機だけは終わらなかった。レベルが低い彼女一人ではダンジョンからの脱出が困難なのだ。
周囲には依然として敵モンスターの気配が残っていた。息を潜め、震えながら時間が過ぎるのを待つ。やがて気配が遠のき、静寂が戻ったかに見えた。
今なら脱出できる――そう思い、クアンが動き出した瞬間。
背後から敵モンスターが襲いかかってきた。残存していた敵なのか新たに表れた敵なのかははっきりはしない。
でも、そんなことはどうでもいい話だ。なんとかしなければいけない。
さすがにここまでの近距離ではもう逃げることも隠れることも不可能だ。絶望と恐怖に震えながらも、彼女は必死に応戦した。何度も転び、傷つきながらも、ぎりぎり、そして奇跡的にその敵モンスターを倒すことに成功したのだ。
すると、倒れた敵モンスターの近くに……宝箱が出現した。
しかも、それはレア宝箱だった。
「これは宝箱と呼ばれるもの?」
クアンは宝箱についての知識はほとんどない。たまに出現するかもしれないと教えられたぐらいだ。
そうして、特に何も考えずにクアンが震える手で箱を開けた。すると中から現れたのは武具の三点セット。武器、防具、ブーツが一式揃っていた。通常であればどれか一つしか手に入らない貴重な装備だ。
しかもそれだけではない。
その装備は、ダンジョンの外でもダンジョン内と同等の力を発揮できるという、極めて希少かつ強力な性能を持っていた。
そうレア宝箱の武具バージョンと言える代物だ。おそらくは、およそ一億個に一個の希少な武具なのだろう。
だが、いくらレアな装備を手に入れても、当時のクアン自身の戦闘能力は高くない。レベルが低く宝の持ち腐れとも言える状況だった。
その後は再び魔物の群れに追い詰められ、ついに命運尽きたかと思われたその時に救世主が現れたのだった。
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