第342話「成功率の裏側」
#第342話「成功率の裏側」
(すいません。昨日は予約投稿をわすれてました。今日だけ12時と20時の2話投稿にし、明日から12時頃投稿に戻ります)
Q国大統領の支持を受け、参謀はすぐに動いた。
連絡を取ったのは、大統領との話でも出ていた最近やたらと誘拐を成功させているテロ組織だ。
とはいえ、これまでの標的は一国の首相のような超大物ではない。主に地方の有力者や、その親族といったところだ。
だが近頃は少しずつ事情が変わっていた。
政府要人クラスの誘拐にまで成功するようになっている。それもかなりの大国の要人でも成功したのだ。その国がかなり警戒していたにも関わらず。
その成功率の高さが評判を呼び、依頼は増加傾向にあった。
参謀としても、彼らが調子に乗り始めていることは気がかりだった。しかし成功させる可能性があるなら、頼るしかない。
もちろん、大統領が言う通り、成功しても失敗しても切り捨てる準備は進める。裏の資金ルート、連絡経路、証拠の消去方法、そして最終的には軍事的に潰す――様々な可能性を想定しながら、参謀は慎重に話を進めた。
やがて、テロ組織の幹部に極秘の提案が伝えられた。
「君たちの腕を見込んで依頼がある。日本の首相の誘拐を頼みたい」
「日本の首相の誘拐だと?」
日本の首相の誘拐……その言葉を聞いた瞬間、テロ組織の幹部たちは一様に目を見開いた。だが驚きはその一瞬だけだった。
一国の首相を誘拐するなど、常識では考えられない。だが、それほどまでにQ国が追い詰められているということでもある。
幹部は内心でほくそ笑んだ。これは高くふっかけることができる案件だ。
成功しても失敗しても、莫大な金が動く。成功報酬は当然桁違いになるだろう。依頼料だけでも相当額を引き出せる。
そうしてQ国と裏組織との交渉はすぐに始まった。Q国から提示された報酬の主軸は、武器の融通だった。
「もちろん依頼だけでも相当な報酬を出そう。それは今の君たちにとって必要な武器。我が国が秘密裏で用意してきた武器の一部を融通しよう」
「それはありがたいな。でも本当に大丈夫なのか? 知らないうちに戦争が起きて、Q国が無くなっても責任は取れないぞ」
「ああ、もちろん心配には及ばない。うちは国としての規模小さいが、軍事力だけはひけを取らないのは知っているだろう」
「ああ、確かに。それもそうだな」
武器の融通……それはテロ組織にとって、願ってもない条件だった。
武器は金よりも重要な場合がある。戦闘が始まれば、どれほど武器があっても瞬く間に消耗するからだ。
そして金があっても武器が買えるとは限らない。国際的な監視や妨害が常につきまとう。様々なルートで入手しようとしても、どこかで邪魔が入るのだ。
だが、国家から直接流れる武器となれば話が別だ。特に問題もなく入手できるだろう。
世界各地において紛争があり、多数の難民がいることもあって人員は定期的にある程度は補充できる。だがそこに武器がなければさほど意味がない。食料を食いつぶすだけだ。
だからこそ、Q国からの武器融通の話は素直に魅力的だった。こうして、Q国とテロ組織は互いの利益のために手を組んだ。
テロ組織はまずは資料を見せて必要な武器を要求した。
「まずは、これだけの武器を用意してもらいたい。そして成功した時は追加でその3倍。その条件ならば受けよう」
「分かった。その条件でやってくれ。逃亡用の船や飛行機の手配などが必要ならば連絡してくれ。可能な範囲で融通する」
「ああ、分かった。だが、基本的には全てうちで何とかする。必要があれば連絡させてもらう」
交渉は比較的簡単にまとまった。Q国の大統領が言うようにテロ組織は武器を欲していたからだ。
しかし参謀は一つ、腑に落ちない点があった。
日本の首相の誘拐など、どう考えても難易度は極めて高い。いくらテロ組織が慣れており、近隣諸国の要人の誘拐に成功してきたとはいえ成功率はかなり低いだろう。
それなのに、彼らにはそこまで困難だと考えている様子がない。その表情には余裕すらもある。
まるで、勝算があるかのようだった。
何か、秘密の方法でもあるのか。興味がある。だが、深く探るのは危険だ。余計な詮索は警戒を招くだけである。下手に動けば、交渉が決裂する可能性もある。
現実問題としてQ国としては結果さえ出ればいいのだ。その仮定はどうでもいい。
そのため、参謀は誘拐の方法などについては無関心を装うことに決めた。
こうして日本の首相の動向などの詳細情報はC国からQ国経由でテロ組織に渡り、日本国首相誘拐計画は具体的に動き始めた。
しかし首相の誘拐など、どうやってやるというのか?
実は、彼らの誘拐成功率が近年飛躍的に上昇していた背景には、ある“秘密”があった。
だからこそ彼らは、日本の首相であっても誘拐が成功する可能性はあると踏んでいる。そして仮に失敗したとしても、逃げ切れると。
そうして、テロ組織の秘密の戦力が表社会に出ようとしていた。
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