第337話「使役モンスター同士の打ち合わせ」
#第337話「使役モンスター同士の打ち合わせ」
六階層の初挑戦を終えた後、レンたちはミーティングを行った。
当面は焦らず、まずは慣れることを優先する――それが全員一致で決まった方針だった。
ミノタウロスは強敵であり、六階層の攻略難易度はこれまでとは明らかに異なっている。急ぐよりも、確実に歩みを進めることが重要だろうという判断だ。
使役モンスターの中では、ロアがやや弱音を漏らしていたが、レンはそれを否定せず、それどころかフォローをした。
そして使役モンスター全員にもその考えで問題ないと伝えた。
「怖さを感じるのは武器であり大切な感覚だと思って、このまま続けてくれればいい。その慎重さは何よりも大切だからな」
「みんなも咆哮で混乱するのは仕方がないと思ったらいいよ。だからこそ、お互いに助け合えばいい。俺だって、いつか混乱するかもしれない。その時は助けてくれ」
ロアや同じように思っていた仲間たちは少し安心したように頷いた。
しかし、使役モンスターとしては納得しきれない思いもある。レンを助けたいのに、現状では助けられているだけだ。その歯がゆさがそれぞれの胸に残っていた。
そこでラムが音頭を取り、今後の方針について改めて話し合うことになった。
「私たちで何かできることはないでしょうか?」
他の使役モンスター達もその提案に賛同した。だが、すぐに有効な案が浮かぶわけではない。考え付くことはすでにレン、ルナ、ひよりと一緒に話し合っているからだ。
ルナの指導を受けることはすでに決まっている。まずはそれを懸命にこなすこと。そして、その成果を六階層の攻略に活かすこと――これが最低限の行動だ。
そして、その上で何かできることはないかと考えたのだが、そんなに簡単には思いつかない。
一応、みんなで六階層の攻略についてネットなどで調べてみた。だが、有益な情報はほとんど見つからなかった。
そもそも六階層の攻略動画自体が少ないのだ。まずは六階層に到達できるものが圧倒的に少ない。最低でも必要とされるレベル6の人間でさえ国内には300人程度しかいない。世界的に見てもそれほど多いわけでもない。多く見積もっても1万人もいないだろう。
しかも、このレベルになると情報を公開したがらない者がほとんどだ。それぞれが独自のノウハウを持ち、それを武器として攻略しているのだ。
トッププロが競う競争社会において、その情報の価値は計り知れない。ネットに軽々しく上げるような情報ではないのだ。
そこでリンが提案した。
「エリナさんや黒澤さんにアドバイスを求めてはどうですか?」
その提案は理に適っている。しかし、そこでクーが首を振った。
「それはレンさんやルナさんが既にやっているだろう。私たちが独自に動く必要はないし意味もないと思う」
確かに、その程度のことはレンたちがすでにやっていることだ。更に言えばレンたちを差し置いて、使役モンスターの自分たちが直接エリナや黒澤に動くことも良いこととは思いづらかった。そういった行動を起こすならば、やはり特別な理由が必要だろう。
その後は自然と、レンたちにはできない、使役モンスターの自分たちにしかできないことがないのか?そういった話になり模索した。
しばらく沈黙が続いた後、ロアが恐る恐る口を開いた。
「自分たちで、怖さへの対策をすることはできないかな?」
「それができればいいのだけど、具体的にどうするかが問題なのですよね」とラム。
自分たちで怖さ対策ができれば素晴らしい。だが、その具体的な案は浮かばない。ミノタウロスは強大で、明らかにレベル6の自分達から見ても格上の存在だ。気持ちの上ですでに負けていたのかもしれない。
それでも、怖さは武器になる――レンの言葉が胸に残っている。
過度に恐れる必要はない。だが、危険性を正しく認識することは必要だ。
その上で何か自分たちにできることはないのか。それについて、様々な意見が交わされた。
そこでルフが言った。
「とりあえず、私たちはレンさんとは念話ができますよね」
「ならば、咆哮で混乱した時に念話で呼びかけ、元の状態に戻せないでしょうか? 何らかの形で試してみてはどうでしょう。言葉に発するよりも早く、そして効果的に回復できるかもしれません。もちろん逆の可能性もありますが」
その案に、皆が顔を上げた。
すぐに効果が出るかは分からない。だが、試す価値はあるだろう。自分たちができる案の一つだと感じた。レンに相談するのもいいだろう。
その後も、いくつかの意見が交わされた。どれも決定打とは言えないものばかりだったが、意見を出し合うことは無意味ではない。何がヒントになるかも分からない。言葉に発することで意味が付くこともある。
すぐに使える案はほとんどなかった。
それでも――少しでも前に進むために。レンやルナ、ひよりだけでなく使役モンスターたちも、それぞれにもがき、考え、答えを探していた。
「レンのために」その合言葉を胸に、それぞれが考え努力を続けていた。
そういった積み重ねが将来的に大きく花開くこともある。しかしその一見無意味で、あがくような努力が報われるかどうかは現時点ではまだ誰にも分からない。
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