第338話「刺激を受けるトップ層」
# 第338話「刺激を受けるトップ層」
レンたちの六階層初挑戦の動画を、エリナ、黒澤、そして田嶋の三人が並んで確認していた。
彼らはまだ初挑戦だ。厳しい場面も多いだろう。それを見て何か助言できる点があるかもしれない……その思いからの検証である。しかし、再生が進むにつれ、三人の表情は次第に驚愕へと変わっていった。
思わず田嶋の声が漏れた。
「……やばいっすね。これ、本当に六階層の初挑戦すか?」
「そうだ。間違いない」
黒澤は静かに頷いた。
映像には、レンたちのクラン8人とミノタウロスとの戦闘が映し出されていた。ミノタウロスの突進、咆哮、そして驚異的な耐久力――六階層を象徴する三つの特徴・脅威に対し、レンたちはほぼ完璧に対応していた。
何よりも凄いのは、その対応にほぼリスクがないということだ。安全第一で討伐を進めているように見える。
安全第一……それは理想ではあるが六階層ともなれば簡単ではない。どうしてもリスクが伴うものだ。しかしレンたちは初挑戦にも関わらず危険な場面はなかった。
もちろん改善の余地が皆無というわけではない。まだまだ討伐スピードは遅いし未熟な点はある。
だが、それは助言を要するほどのものではないと思えた。むしろ、彼らならば自ら修正し、さらなる高みへと到達するだろうと感じさせる内容だった。
「いやでも、俺たちみたいにレベル7がいるクランでも六階層は10人以上でやりますよ。人数が足りなければ他クランと合同で挑むくらいなのに……」
田嶋は映像から目を離さぬまま続けた。
「なんで最初から、たった8人で、しかも単一クランでやれるんすか」
「……レンたちだからな、としか言えんな」
黒澤の言葉に、エリナも苦笑を浮かべた。今の状況には呆れるしかない。
「ええ。呆れるほどに強いわね」
エリナ自身も田嶋と同じことを考えていた。自分たちだけで六階層を攻略するのは正直厳しい。
レベル6の人材が不足しているためだ。他クランと連携して最低でも十人体制を整え、挑むのがこれまでの常識だった。
だがレンたちは、単一クランで八人のみ。しかも自分達と違ってレベル7がいない状況だ。
敵が最小の十五体規模でしか戦わないという条件でやっているとはいえ、六階層初挑戦とは思えない安定した討伐を続けている。
途切れない集中力。咆哮による混乱にも動じない結束力。時には攻撃を控えて耐える忍耐力。
特に敵を攻略するための意思の統率と連携の完成度は素晴らしい。それについてはすでに自分たちを上回っていると感じざるを得なかった。
「これはハンターの先輩としてはまずいわね。私たちも頑張らないと、すぐに抜かれるわよ」
エリナの言葉に、黒澤と田嶋は頷いた。
この先にどうなるのか、もちろんその結果は全く分からない。だが、彼らならば全員がレベル7へ到達する未来も十分にあり得る。六階層初挑戦の討伐映像からはそう読み取れた。
レンたちは現在でもレベル6がすでに8人――国内屈指の実力を誇るクランだ。それが全員レベル7となれば、名実ともに国内最強となるだろう。
そうなれば個人としてはともかくクランとしての実力は完全に抜かれる形になる。もちろんクラン全体の人数では負けていない。しかしクランの実力は全体の人数で考えるものではない。
実力は上のレベルの人数で考えるのだ。黒澤のクランにはレベル7以上が2人、エリナのクランは1人しかいない。仮に8人のレベル7が揃うクランが誕生すれば完全に抜かれる形になる。
「俺たちも負けてられんな。これまで以上に頑張らないと。自分たちの実力アップはもちろんのこと、下の引き上げも必要だ」
「ええ、そうね」
「同感っす」
三人の視線は再び映像へと戻った。
つい先日まで一階層、レベル1でゴミさらいをしていたうだつの上がらない新人――そのはずだった存在に、今や追い上げられ、その差がほとんどなくなってきている。その信じられない状況に頼もしさと同時に、悔しさも胸を刺した。
このままでは後輩に抜かれる可能性が高いのだ。
だが、その悔しさこそが原動力にもなっている。
「私たちは協力でも何でもして、さらに上を目指しましょう」
エリナの提案に、黒澤と田嶋は力強く頷いた。
こうして、国内最強を競う二つの草クランは、互いを高め合う存在として結束を確認した。できることは何でもやらないとすぐに抜かれてしまう。
プライドなどはかなぐり捨てて、とにかく上を目指す、そういった思考になっていった。
こうしてレンたちの奮闘は、他のクランにも火を灯していた。彼らの歩みは、自分たちだけでなく、日本全体の実力の底上げへと繋がり始めている。
それは、新たな時代の幕開けを告げる瞬間でもあった。
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