第333話「咆哮への対策」
#第333話「咆哮への対策」
ミノタウロスには三つの特徴があるということで、俺たちは動画を見ながら対策を検討している。
最初の一つである突進については、ある程度の対策を考えることができた。基本は正面に立たないこと。常に斜め、横、あるいは背後から攻撃を行う。
しかし、それも単純ではない。突進は少し距離があっても届く。そのため、自分が対峙しているミノタウロスだけでなく、他のミノタウロスとの位置関係も常に把握する必要がある。かなりの慣れが必要だろう。
そして話は二つ目の特徴である咆哮へと移った。
まともに咆哮を受けると急に敵が怖くなりネガティブ思考、恐慌状態になるという。
敵が怖くなり、絶対に勝てないという気持ちになってしまったらまともに戦えない。すなわち、ゲームで言うところのデバフのようなものだ。
この咆哮については良い対策がなく、歴戦の強者であってもここでソロで戦うのは厳しいという結論になったそうだ。
それはそうだろう。デバフを受けた状態で敵の攻撃を受けたらどのような強者でも厳しい。これはゲームでも同じ話だ。
フォローする人員が必ず必要だろう。その点俺たちは最初から八人体制。人数的には全く問題はないと思う。
そして、ミノタウロスの三つ目の特徴、咆哮ついても動画をチェックした。そしてすぐに分かった。これはかなり強烈でやっかいだ。
ミノタウロスの咆哮を受けた人は急に動きがおかしくなるのが見て取れた。確かにこれはやばい。すぐのダメージはないけど、このような状況で攻撃を受けたらあっと言う間にやられてしまいそうだ。
その後、何度か対策が取れないかチェックしたのだがミノタウロスは一瞬動きを止め、呼吸を整えるような間を置いてから叫んでいるように見える。完全な予備動作とは言えないが、注意すれば察知できるかもしれない。
突進の時には予備動作はほとんど感じなかったけど咆哮についてはある程度の察知はできそうだ。
また、咆哮をまともに受けた人は明らかに動きがおかしくなるけど、声をかけられたり、肩を叩かれたりしてしばらくすると元に戻る様子だ。
俺たちも助け合えば何とかなるだろう。とりあえずは咆哮を受けた直後が最も危険な感じかな。
「咆哮対策として耳栓とかしたらどうなのかな?」とひより。
「それについては議論や実践がなされているのだけど、ほとんど意味はないみたいだよ」と透子さんが答えた。
なるほど。咆哮の問題は声の大きさだけでなく、音圧のようなものがあるのだろうか。単純に耳栓をするだけでは防げないらしい。
思った以上にやっかいかもしれないな。
ただし、この咆哮も傾向はあるとのこと。真正面が最も危険でその影響を受けやすいとのことだ。
角度が付けば恐慌状態になる確率はやや下がり、距離が離れれば更に恐慌状態になる確率は下がるらしい。
とはいえ、それも絶対ではないとのことだ。すなわちミノタウロスがいる場合はどこにいても注意は必要らしい。
また、これは少し面白いことだけど、何度か咆哮による恐慌状態を経験すると、少しずつ耐性が付くとのことだった。
恐慌状態になりにくくなり、仮に恐慌状態になっても自力ですぐに戻れる。すなわち徐々に慣れていくらしい。
「となると、余裕がある時にわざと咆哮を受けるのは一つの手かもしれないな」
俺がそう言うと、ルナが頷いた。
「確かに。それは一理あるな」
耳栓も駄目、距離を取っても確率は下がるものの万全ではない。ということで完全な対策がない以上、慣れるしかないと思う。
もちろん安全マージンは必要だ。少なくとも敵の数が多い状況で試す余裕はないだろう。数が少ない時を狙うしかない。
可能であればミノタウロスを最後の一匹として残しておくような状況を作って試す感じだ。
「ならば最初のうちしばらく、敵のモンスターが多いときはスルーした方がいいですかね」とラム。
「それはいいかもです。少ないモンスター相手で安全マージンを取りながら咆哮に慣れるのがいいかもです」とリン。
「そして、慣れたら徐々に数が多い相手にも対応していくといいかもね」とロア。
「確かに時間はかかるかもしれないけど、それがいいかもしれないな」と俺は答えた。
多少時間はかかるかもしれないけど、最初は敵モンスターが少ない時だけ対応する。そして咆哮の耐性がある程度付いたら敵モンスターが多い時でも戦うという形がベストかもしれない。
「それにしても六階層は五階層とは難易度が全然違いますね。下準備がかなり必要です」とルフ。
「簡単ではないからこそ価値があるだろう。やりがいがある」とクー。
そうだよな。確かにかなり大変そうだ。そして、難しいからこそ達成した時の喜びは大きくなるだろう。これまで見る限りは六階層は大変だろうけど、絶対に無理というわけでもない。
じっくり準備して挑もう。
……おっと、待てよ。
ミノタウロスの特徴は、まだもう一つあった。それは――耐久力だ。それについても考える必要がある。
「咆哮はこの辺りでいいかな? 次は耐久力の対策を検討しよう」
俺はそう言うとみんなが頷いた。そこで映像を切り替えた。
今度はミノタウロスの三つ目の特徴、耐久力についての研究になる。部屋の空気が再び引き締まった。
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