第170話「お泊り会」
#第170話「お泊り会」
その日、ダンジョンでの討伐を終えて帰ろうとしていたところ、透子さんから連絡が入った。
「レン君、この後少し同行してもいいかな?」
どうやらラムの様子を直接観察したいらしい。
まあ、透子さんなら問題ないだろう。ラムのように使役モンスターではないのでアメリカ帰りとかの設定を考える必要もない。
弟の樹や妹の葵にもハンター協会の「研究者」と紹介すれば普通に納得してもらえるはず。
そう思って了承したのだが――
「今日はレンのところに泊めてほしい」
合流した後の第一声からまさかの爆弾発言。
「えっ、泊まるって……!?」
思わず変な声が出た。
「何か問題でもあるのか?ラムのことをいろいろと聞きたいのだけど、君たちは昼間はダンジョンで忙しいだろう。私には夜しかないんだ。だからレンのところに泊めてくれ」
それに追い打ちをかけるように、ひよりが眉をひそめて言う。
「だったら私も泊まります。私だってお泊りしたことないのに透子さんだけずるい!」
……いや、ひより、張り合わなくていいから。いや、まあその方が都合がいいのか。透子さんだけうちに泊まるのはさすがに気まずい。
結局、そのまま透子さんとひよりがうちに来ることになった。
アパートに到着すると、弟の樹と妹の葵は目を丸くする。
「レン兄、また新しい女の人連れてきたの?」と、どこかジトっとした視線を感じた。
俺は慌てて説明する。
「この人は透子さん、ハンター協会の研究者だ。変なことは考えないようにな」
「け、研究者!?」
樹と葵は同時に声を上げた。研究者という響きが、どうやら響いたらしい。よし、何かあったら使おう。いや、もうそういう説明が必要な状況がないと願いたい。
その後、夕飯をひよりが作る間、俺の部屋でラム、透子さんの三人で簡単な打ち合わせをした。
ラムが「アメリカのカリフォルニア出身で日本に来たばかり」という設定を説明。当然、弟や妹には使役モンスターであることは伏せているからね。
「なるほどね。その設定なら自然だね。アメリカ帰りの設定ならば多少、常識知らずでも通じるからな」
透子さんは納得したように頷いた。
「でも、これから追加で4人となるよな。それも全部、同じ説明で通すのか?さすがに不自然だろう」
そうなんだよな。今後は1か月置きぐらいに使役モンスターがダンジョンの外に出れるようになる。その度に違う外国生まれを設定するのはさすがに無理があるような気がする。
「新しくマンションでも借りたらどうだ。君たちはすでにクランのようなものだろう。3DKを2つぐらい借りて1つは君たちの住居、そして片方は使役モンスター用にするといいんじゃないか」
「なるほど。それは考えておきます。ルナとも相談します。さすが透子さんですね」
その後はラムがすでに力の加減を完全に覚えていること、インターネットの使い方まで理解していることを話すと、透子さんは目を輝かせた。
「素晴らしい! 本当に知能が高い……プラモデルまで作れるのか。更にはネットまで操れるのか」と目を丸くしていた。
透子さんからは力の加減に慣れるのならばジグゾーパズルとかもいいのではないかと提案を受けた。なるほど、それもありだな。細かい作業は力の加減が必要だ。
あとは俺がラムから聞いた「モンスターはダンジョン内のエネルギーを取り入れている」という件も話した。
透子さんは「なるほど。やはりそうか。昔から仮説はあったけど、使役モンスター本人が言うならば間違いないだろうな」と興奮している。
その後は透子さんからラムにもいくつか質問をしていたが、ラムは落ち着いて丁寧に答えていた。ラムはすでに一般人と変わらない。透子さんの質問の意味もしっかり分かって回答しているように見える。
やがて夕食の時間。
透子さんはラムが普通に食事をとる姿に感動しているようだった。
「日本の食事は口に合うようだね」透子さんはラムがアメリカのカリフォルニア生まれの設定であることに合わせてラムを眺めている。本当はここでもいろいろ聞きたいところだろう。ぐっと我慢していると思われる。
一方で樹と葵はハンター協会の研究者に会えて興奮気味だ。特に葵は「私も研究者になりたい!」と目を輝かせていた。
「ならば、葵はしっかりと勉強しないといけないな。樹も葵の勉強を見てやってくれ」
「分かったよ。でも俺はそんなに頭良くないからな。期待しないでくれよ」と樹が嫌そうに答える。
葵がこれで勉強を頑張ってくれるといいな。こういう影響なら大歓迎だ。
食後、それぞれの部屋に分かれて就寝。さすがに俺は自分の部屋を譲り、樹と葵の部屋で寝ることにした。
ひよりと透子さんと同じ部屋で寝るなんて無理だ。命がいくつあっても足りない。
翌朝、三人は爽やかな顔でリビングにいた。
「よく眠れた?」と聞くと、三人とも頷いた。
ただ、ラムからは「レンさんの小さい頃のお話を、ひよりさんからたくさん聞きました」と言われ思わず頭を抱えた。
しまった、完全に油断していた……。
俺の子どもの頃の黒歴史を透子さんとラムに知られるなんて。まさかの事態だ。ひよりは「それぐらいいいでしょ」と澄ましている。くそっ。
そんな俺を見ながら、透子さんが真顔で言った。
「昨日も言ったけど、レンもそろそろマンションを借りた方がいいね。2つ借りたら外国人の人にも貸せるならな」
確かに――このアパートではもう手狭だ。
「朝倉さんに言えば、いい物件を紹介してくれると思うよ」と透子さん。
うーん、確かに朝倉さんが紹介してくれたら助かるが、あまり朝倉さんに頼りすぎるのも気がかりだ。ルナやエリナさんにも相談してみよう。
今後は俺たちの次のステージに向けて環境も整えていこう。面倒なことは早めに潰しておかないとね。
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