第167話「ラムと弟・妹との出会い」
#第167話「ラムと弟・妹との出会い」
協会での確認を終えたあと、俺とラム、そしてひよりは俺の住んでいるアパートへ戻ることにした。当面はラムも一緒に住んでもらう予定にした。
しかしながらラムが外で暮らすためには、まず“力の加減”を覚えてもらう必要がある。これは必須だ。ちょっとしたことであのコインのようにものを壊されたら大変だからね。
ということで少し考えて、駅前の100円ショップに寄っていくことにした。
5kg~20kgで調整できるハンドグリップ、プラスチック容器、はさみ、ぷにぷにボール、そして簡単なプラモデルなどを購入。
ラムは「いろいろなものがあります!」とおおはしゃぎだ。何に使うものなのかといろいろと聞いてきた。確かに100円ショップっていろいろあるのだよね。ゆっくり見ているといくら時間があっても足りない。
ダンジョンの外ではいろいろな仕事があることを伝えた。そしてその稼いだお金でお店でものが買える。俺はダンジョンでモンスター討伐の仕事をしていてそれでお金をもらっている。ラムにも手伝ってもらっているから好きなものを購入していいよと伝えた。
ラムは「今回は見るだけにします。欲しいものを考えておきます」とのこと。まあ今すぐに欲しいものは見つからないかもしれない。まずは俺が購入したものを適当に使ってみて欲しい。
さらに書店で「現地の人が紹介するカリフォルニア生活」という本も購入した。
――ラムのカバーストーリーを“アメリカ出身の日本人”という設定にしたからだ。
俺の弟、妹にはそう説明する。知らない人をアパートに連れてくるのだ。さすがに適当な設定くらいは必要だ。
そして、まだラムはこの世界の常識を知らない。だから海外暮らしということでそれをごまかす意味合いもある。
「移動のあいだ、時間をみつけて読んでみて」と本を渡すと、ラムは無言でページをめくりはじめ、気づけば十分ぐらいで読み終えていた。
「もう読み終わったのか」
「はい、簡単な内容だったので、すぐですね」
「俺には弟と妹がいて一緒に住んでいるけど、使役モンスターということは2人には内緒になる。ラムはそのアメリカのカリフォルニアで生まれ育った人の設定になるからそのつもりで考えて話して欲しい」
「分かりました。なり切りますね」とラムが笑顔で答える。
それにしても……記憶力も理解力も異常に高い。なんでこんな分厚い本を十分ぐらいで読み終えるのさ。
そもそも何で文字を読めるのか?でもよく考えたら知能テストも普通にやっていたしそれは既に当たり前なのか?
どうにも不思議なことばかりだ。
そして、今後はダンジョン外では“ご主人様”ではなく“レンさん”と呼んでもらうよう頼んだ。さすがに弟と妹の前で女性にご主人様呼びさせたらかなりまずい。弟と妹に真面目に嫌われそうだ。
「分かりました、レンさん」――嬉しそうに俺の名を呼ぶその笑顔に、少しドキッとした。破壊力高いかもしれない。
隣でひよりがジト目で見ているような気がする。その辺りも注意しないとな。男なんだから綺麗な女の子に笑顔で名前呼びされたらドキッとするのは仕方がないとは思うが見惚れている場合ではない。
アパートに着くと、弟と妹が駆け寄ってくる。
「おかえりレン兄!」「あれ、ひよりさんの他にもう一人いる?」
俺は軽く笑って、「この人はラム。アメリカのカリフォルニア生まれだ。だから日本のことはまだよく知らない。いろいろ教えてやってくれ。しばらくうちに泊まることになる」と説明した。不自然ではないよな?
「ラム、こっちが弟の樹、そしてこっちが妹の葵だ」
「宜しくお願いします。ラムといいます」
弟と妹は目を輝かせ「ラムさん、よろしく!」と元気に挨拶。
――うん、うまくいった。これで問題はないはずだよね?
その後、ラムを部屋に呼び100円ショップで買った品々で力の調整訓練をしてもらった。
最初はおそるおそるハンドグリップを握っていたが、あっという間に最小限の力を覚え、プラスチック容器も壊さず持てるようになった。
はさみを使って紙を切るのも問題ない。その後は簡単なプラモデルも器用に組み上げた。早くも完璧だ。凄すぎる。
「力の加減は覚えました。急な動作でもない限りはもう壊すことはないと思います」
「急な動作とは?」
「例えば、レンさんが誰かに襲われでもしたら何があっても助けます。その時にはどうしても力の加減が難しくなるでしょう」
「なるほど。そういう仕方がないケースもあり得るか。それでもまあなるべく手加減するように善処してくれ。そうしないと相手の方が悲惨なことになる」
「分かりました。なるべくですね」
とにかく、すぐに簡単なプラモデルまで器用に組み上げるとは思わなかった。これはハンドグリップなどに慣れた後の最終段階だと思っていたのだけど、もう力加減の調整はほぼ完璧だろう。
ラムの言う急なことでもない限りは問題ないだろう。ラムの順応力には驚かされる。
その後も俺は思いつくことをラムと話し合った。設定に抜けがあるといけないからね。
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