第一章 記憶を失くした少女 五
「・・・でね・・・瑚珀は・・・。」
現在、私はこの少年、瑠衣と一緒に、長すぎる一本道を歩いている。
女の子みたいな名前って、笑ったら、
「瑚珀も初めてのとき、そういった♪」
だってさ。
瑠衣が泣き止んだ後、あの町を出て、隣の町まで歩いている。
な、長い・・・。
でも、何だか、全然疲れないんだよね。
・・・何故だ・・・?
それで、この道はとにかく真っ直ぐ。
木がちょこちょことあるだけで、岩の「い」の字も無い。
土を掃っただけの簡単な道を囲むように、短い草が揺れるだけ。
なんか、こうゆうのを野原っていうのか・・・?
て、いうのが感想。
暖かい陽だまりは、朝って言うことをはっきりと示し、
太陽の光を浴びて、小さな花たちも嬉しそうに香りを飛ばす。
その香りは、少し冷たい風に運ばれて、
遠くの山まで、まるでタンポポの綿毛のように私の隣を通り過ぎていった。
陽が、首もとの指輪を目立たせる。
「・・・瑠衣。」
「何?」
ある重要なことに気が付いて、足を止める。
待っていたかのように、お腹が グルル〜・・・と、鳴った。
「お腹空いた。」
「・・・もうちょっとだから・・・多分。」
おいおい・・・。
多分ってなんだよ。多分って。
・・・なんか、嫌な気がした・・・様な。
「まったく町なんて、見えないんだけど・・・。」
「山をも一つ越したとこだから・・・。ねっ?」
ねっ? ジャねーよ。
山を一つ越すって・・・。
指輪が、これまた重く感じるんですよ。
本当に手放したくなる・・・。
不幸は人生の付物なのか・・・?
バイクの音がした。
一台だけじゃない。
何十もの音が重なって聞こえた。
「オラオラオラオラッ!!!!!!
生意気な糞餓鬼共!!見つけたぞォ!?
もう逃げ場はねェぞ!?」
・・・嫌な予感的中。
バイクの音が大きくなったのに気が付いて、振り向いた時には、
周りは、バイクの群れと化していた。
そしてその先頭には、あの不良。
てゆうか、偉いって本当だったんだ。
正直、信じてなかった。
「あれ?ボス。またヤラれに来たんですか?
こんなに大勢の、先輩方と一緒に。」
瑠衣が挑発をした。
ホントに好きだな。コイツ・・・。
「あぁ゛?コイツ、新入りっすか?ボス。」
モヒカン頭が言った。
「僕?僕は新入りですよ?ついさっき、ボス直々に挨拶しに言ったんだから。」
「おい。餓鬼。
新入りのくせに、ボスの名前を呼ぶとは、失礼だぞ・・・!」
と、瑠衣の後ろにいた、長髪が拳を振り上げた。
「・・・!あぶな・・・」
バキィッ。
・・・・・・。
私の心配は、まず意味が無かった。
瑠衣の後ろに、さっきの長髪男が伸びていた。
「・・・いやさ、殺られる前にやったんだけど・・・。
蹴りだけで倒れるなんて・・・。弱いね。この人。」
ニッと笑った顔は、殺意に満ち溢れていた。
・・・怖っ。
「掛かってきなよ?全員遊んであげるから。
・・・ただし。瑚珀に手ェ出したら、
・・・・・・殺すから。先に言っとくよ。」
「〜〜〜〜〜〜っ!!殺っちまえ!!
餓鬼だろうが、手加減は無用だ!!!!」
真っ赤になった不良がいった。
とたんに、バイクごと圧し掛かって来る。
まず、瑠衣に襲い掛かってきた。
て。え?
死んじゃうじゃん!!
バカ瑠衣!!
パンッ!
破裂音がした。
瞑っていた目を開けると、さっきと同じ、オレンジ色の結界が
瑠衣を囲んでいた。
瑠衣は、手を突き出して、真剣な顔つきだった。
てことは・・・。
瑠衣の結界?
「ちィ。魔術師かよ・・・。
厄介だな・・・。」
不良の言葉に、瑠衣は笑った。
勝ち誇った笑みだ。
「おい、ヤロー共、
魔術師は後回しだ。女のほうを殺れ!」
その一言で、瑠衣の結界は解けた。
瑠衣の周りにいた、バカそうな人たちは、私の周りへと移動を開始した。
私と瑠衣の幅は、だいたい数メートル。
逃げられる訳が無い。
でも、結界はどう出すのか知らないし・・・。
バイクに乗った一人が、短剣を取り出し、私に投げつける。
座り込んでしまった私の前に、紅いローブが舞った。
「・・・なぁ。
瑚珀には、手を出すな・・・って、言ったよな。俺。
手ェ出したら・・・・・・」
瑠衣は、空を切ってきた剣を、素手でつかむと、
不良たちを睨んだ。
「殺すってことも、言ったはずだよな・・・?」
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次回。瑠衣がキレます。注意してください。




