第一章 記憶を失くした少女 六
「殺すってことも、言ったはずだよな?」
瑠衣の一言に、不良たちの勢いが、一気にしぼむ。
・・・これ、本当に瑠衣?
さっきまでの、あの軽そうな瑠衣は何処へ?
なーんか、別人・・・みたいな・・・。
まず、威圧感がハンパじゃない。
殺気が、あたり一面に広がってるような・・・。
正直、私も怖いくらいだし・・・。
・・・て、魔術師?魔法使いなもの?
あ、それならさっきの結界も、なんとなく判る・・・気がする。
「・・・っ魔術師ってだけで、調子に乗るんじゃねェよっ!」
短剣を投げてきた、先頭の不良が、バイクごと突っ込んできた。
続いて、後ろのも雪崩れ込んでくる。
瑠衣、結界でも張るかな・・・?
「あ〜〜ったくも。めんどっちーな。
でも、ま。全員相手してあげるって、最初に言っちゃったからな。」
瑠衣。
それ、笑いながら言う台詞じゃ、無いでしょ。
「う〜〜ん。せっかくだから、捕まえて、国にだそっかなぁ・・・。」
え・・と。
なにそれ、この人達に与える刑を、考え中・・・?
の、のんきすぎ・・・。
「なにぶつぶついってんだよ!!」
向こうの一言で、瑠衣がばっと顔を上げた。
「うん。じゃあ閉じ込めの刑に処す!」
嫌嫌嫌。
笑顔でその言葉は、怖いよ。
そんなに明るい顔で言われても、怖いもんは怖いよ。
「はぁ?なに言ってんだ?こいつ。」
バイクの群れが、一瞬だけ止まった。
瑠衣は、それを見て、ニッと笑った。
そして、さっきと同じように手を突き出す。
手から、オレンジを帯びた、白い光が飛び出す。
呪文とかは、無いみたい。。
その光は、あっという間に皆をひっくるめると、
丸い、泡のような形に姿を変え、透明な(オレンジ色)しゃぼん玉になった。
バイクも、人も、皆。
その泡の中で、キョトンとしていた。
何が起きたのか、うまく飲み込めないようだった。
そして、殺されてしまうのかと、怯えていた。
・・・私だって、わからないさ。
とにかく。
瑠衣が、強そうなのは確かだ。
・・て、あれ?中の人達、倒れてく・・・。
「・・・ん。大丈夫。殺したりはしないよ。さっきのは冗談。
こんなに沢山の人、殺しちゃったら、
俺、殺人犯になっちゃうもん。」
ニコリと笑う瑠衣。
・・・怖。
気絶させたってか。
その様子を見ていたリーダーの方の不良は、
あいた口を、閉じることが出来ずに、突っ立ってた。
「・・・で、
次はボスですか?」
返事を聞かずに、瑠衣は不良の後ろに回りこむ。
で、さっきと同じように、泡を出すかと思いきや。
・・・瑠衣は、不良の髪の毛をつかんだ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
・・・髪の毛=カツラ。
どーりで、いい年して髪がしっかりしてると思った。
カツラを取られた、不良の頭には何も無し。
「ぅギャぁぁぁああぁぁぁァあぁぁぁぁあァあっっ!!」
「・・・。」
イヤー。速い速い。逃げ足だけは。
というか、なんか可哀想になってきたよ。不良が。
「うーん。あいつがカツラだってのは、ホントだったんだ。」
おい。
そんなに普通の顔をしなさんな。
「んじゃ、行きますか。
もうすぐだし。」
瑠衣が、歩き始めたので、
私も、それについていくしかなかった。
・・・あ。
あの不良の皆。
どうなったんだろう・・・。
あ、あの人達は寝てますよ。
泡が割れたら、落ちた勢いで起きると思いますけど。




