裏町 酒場にて
裏町の酒場。
そこは薄暗い室内で大抵いるのは失業者か犯罪者ぐらいだ。
そんな中、カウンターでガヤガヤと若者達が数人集まっていた。
「だからよ〜、もう一度あの腕輪を探しに行くべきなんだって。あれはきっと超一級品だぜ」
「馬鹿野郎!そう言って皆で一日中探したけど何も無かったじゃねぇか!」
「マスター、お代わり」
「はいはい、ほら」
「サンキュー、・・・うわっ、何だこりゃお茶じゃねぇか!」
「当たりめぇだガキ共、そもそもてめぇら金が無いだろ。タダ酒は一杯までだ」
「この野郎、何で 俺たちが無一文だってわかるんだ!?」
「はっ、こんな朝っぱらから酒を飲みに来た連中はまともに働いてるやつらじゃねぇよ」
「何だと〜、俺たちが無職の出来損ないって言いてぇのか!」
「違うのか?」
「違わねぇよ!」
「で、そんなてめぇらは何の話で盛り上がってるんだ?」
裏町の不良達は酒場のマスターも取り込んで話始めた。
「なるほどな、つまりその謎の女が落とした黄金の腕輪を探すために夜も寝ないで探してたってか。・・・乞食かお前ら?」
黒髪の短髪でサングラス、かなり鍛えたであろう屈強な体をもったマスターはため息をついた。
「うるせぇ!貰ったもんなんだから受け取って当たり前だろ!」
自分達がやられた瞬間も懇切丁寧に伝えた不良達はマスターに反論した。
「お前らホントにそう思ってるのか?」
タバコを吸っていたマスターは苛立たしげに吸い殻にタバコを押し当てた。
「いいか、お前ら?何でその女がお前らにわざわざ高価な腕輪なんてやったと思う?」
その言葉に不良達は一斉に考えだした。
「えっと・・・、俺たちが怖かったから?」
「いやいや、俺たちに惚れたから?」
「馬鹿野郎!達じゃねぇよ!お前に惚れたんだよ!」
「マジか・・・ってんなわけあるかぁ!?」
「ねぇよ、当たり前じゃねぇか」
「てめぇ、表に出ろ!」
「うるせぇよ!!」
マスターは勢いよくカウンターを叩きつけて不良達を黙らせた。
「なんだガキ共、てめぇらはまともに考える事もできねぇ程おつむが悪いのか?」
不良達は自分らより遥かに巨大な男に怒鳴られて一気に蒼ざめた。
「いいかてめぇら。これから俺が話すから黙って聞いてろ。文句があるなら話が終わってから言え。わかったか?」
不良達は何度もうなづいた。
「よし、まずはお前ら目を覚ませ。お前らに怖くて渡しただぁ?笑わせんなよ。こんなオヤジにもビビってるガキに誰が怖がるかよ。後は惚れただぁ?ふん、そんな妄想が叶う程世の中甘くねぇよ。お前らはな、その女に見下されてんだよ」
シーンとした酒場でマスターの声だけが響いた。
他のテーブル席にも客は彼らは黙って酒を飲んでいた。
「そうだ、見下されたんだ。お前らの余りの低脳さに呆れてぶっ叩くより黙ってもらう方を選んだんだ。その女にとっては金を求めるてめぇらなんざ最初から眼中ねぇんだ。ようはお前らはガキなんだよ。女にまともに相手にされないで見下されたんだよ」
愕然とした不良達にマスターは黙ってうなづいた。
「いいか、今俺の話を聞いてこのままじゃダメだと思った奴は外に出ろ」
不良達は一斉に立ち上がって外に出た。
酒場の入口に群がった不良達。
マスターは最後に出て、酒場のドアを閉めた。
そして彼らに大声で言った。
「よく聞け!異国には一日一善という言葉がある!一日に一回は人に善い事をして積み重ねろって事だ!しかしお前らはそれじゃ足りん!一日五十善だ!お節介でもいいから50回は善い事をして来い!終わった奴から俺の所に来い、飯と酒をやる!以上だ、行ってこい!」
「わかりました!」
不良達は勢いよく返事をして走り去って行った。
「さすが、若い奴らだ。とにかく元気があっていいな」
マスターは一人でほくそ笑んで酒場に戻った。




