図書館 正面玄関にて
「さぁ、ベルリネッタさん。ここがこの街で唯一の図書館だよ」
「フン、何を自分の図書館のような口で自慢してるんだ。あと敬語だ!」
「相変わらず手厳しいな~。アン先生みたいに小じわが増えちゃうよ」
「やかましい!」
フーシェとベルリネッタは図書館の正面入口の門まで来ていた。
「それより、弟は探さなくていいのか?」
「フーシェなら大丈夫だよ。明日になったらひょっこり帰ってくると思うし」
「そうか」
(ちょっとちょっと、ホントに来ちゃったじゃない。極悪人も泊めるようなとこならベッドがあるかすら怪しいわよ。
うるさいな、しょうがないじゃんか、来るまでになんかいい案が思いつくかと思ったけどお互いなんにも思いつかなかったじゃんか。それにお前だって決心ついたんじゃなかったのかよ。
それはそうだけど・・・。
なんだ?あの娘がいないから怖気づいたか?うるさいっ!もうさっさと行きなさいよ!)
またもベルリネッタが頭の中で会話しているとフーシェがベルリネッタを覗き込んだ。
「ん?どうした?」
「ベルリネッタさんてルーアンがいなくなったらボーっとしてること多くない?なんか唇もブツブツ言ってるみたいに動いてたし」
「う、うるさい!大人になれば色々あるんだよ」
「いつもボーっとするようになるの?」
「やかましいっ」
そうして二人共図書館の入口で言い合っていると、急に扉が内側から開いた。
ベルリネッタは扉が音をたてて開いた音に凍りついた。
中からはランプと初老の男の姿が見えた。
「あ、ファウスト先生。ただいま!」
フーシェは笑顔で挨拶した。
ファウストは顔をしかめて
「何がただいまだ。こんな時間まで寄り道しおって、ワシをいったい何時まで起こさせているつもりだ」
「ごめんなさい。あ、シラーが来るかもしれないから鍵は締めないでね」
「わかってる。そっちは噂の密航者だな、さっさと入りたまえ。こんな場所でも一応客人の寝る部屋くらいはある」
ファウストはそう言って図書館の中へと戻っていった。
「え、あの先生はなんで俺が密航者だって知ってるんだ?それにお前の弟のことも!」
ベルリネッタは驚いてフーシェに訪ねた。
「う~ん、なんでだろうね~。先生はなんでも知ってるから隠し事ができないんだよね~。僕的には街中のカラスが先生の伝令役になってるんじゃないかなって睨んでるんだけどね」
「え、あの人は鳥と話せるのか?」
「さぁ?」
「さぁって・・・」
「とりあえず大丈夫だよ。僕が知る限りこの図書館で人が死んじゃった事件はなかったから。大怪我になった事件しかないよ」
フーシェはベルリネッタを励ますつもりで笑顔で言った。
「いやいやいや、図書館で大怪我っておかしくないか?普通の図書館で大怪我ってないだろ」
「大丈夫だよ、さぁ早く中に入ろうよ」
そう言ってフーシェはベルリネッタの服を引っ張って中に入った。
図書館の扉も閉まり、この港街ラヴェンナでの一日は終わった。




