300年前 地下室にて
遂にこの時が来た。
ここまで来るのには長かっただろう。
私は奴から受け取った書物の内容をいち早く理解して作業に取り組んだ。
まずは雨水を12のフラスコに分けて蒸留し、そこから四本ずつに水銀、硫黄、塩を注ぎさらに混ぜ合わせて「水のアルカエウス」という霊薬の元を作り出した。
発揮性の液体を蒸留したのでこれを作るだけで実験室が三つも灰になってしまった。
それから「サーキュラタム・マイナス」という賢者の石に近い存在を作り出した。
そこに特殊な作業を施してとうとう錬金術師の夢である「賢者の石」を作り出した。
石といってもそれは完成した直後に光り輝いた。
私は思わず目を塞いでしまった。
すると私の頭の中にある声が響いた。
「万物のため、我は輝くのみ」
私はその声を聞くと目を開けた。
そこにはただ光のみが存在していた。
再び声が響いた。
「我は創造神アトゥム、汝は何故我を呼んだ」
私は目の前の出来事が信じられなかった。
神が私に語りかけている。
「繰り返す、汝は何故我を呼んだ」
私は言葉を詰まらせながら答えた。
「わ、私は再び恋人のセレナに、セレナに会いたいんだ」
「死者を蘇らせろというのか。よかろう、死後の世界から汝の望むべきモノを・・・」
私はその言葉に慌てて
「ま、待ってくれ、セレナは死後の世界にはいないんだ」
「どういう意味だ」
私は未だに目の前の出来事が信じられなかったが、その光に全てを話した。
「・・・そうか、かの者は狭間にいるのか」
「そ、そうだ。頼むセレナをどうか」
「待て、我は今、魂だけの存在である。肉体のない今ではいくらか行動が制限されてしまう。今の私では其のものを
呼び出せぬ」
「そ、そんな・・・。」
私は愕然とした。
神ならなんとかしてくれると信じていたのに。
「待て、そう急くな。今は不可能だが時間をかければ其のものを呼び寄せることができる」
「ど、どういう意味だ」
私に再び希望の光が降りた。
「我の子供たち、九柱の神々の魂の欠片を其方に託そう」
「?」
「清潔な器を用意せよ」
「わ、わかった」
私はアトゥムを召喚した時と同じフラスコをいくつも用意した。
「よかろう、我が息子、娘を汝に」
すると、どこからかフラスコの中に水が注がれた。
ピチピチと音がするが中にはなにもいない、本当に水だけだ。
「これは、我が子供たちの魂の欠片だ。このフラスコの中でしか生きられぬ」
「神の魂を其方に預ける。代償もあるので心して聞くが良い」
「だ、代償?」
何を取られるのだ?
私に残されたものなどもはや何もない。
「この魂が生き続ける方法は其方の魂を喰らうことだ。」
私は驚いて目を瞬いた。
「な、なんだと!」
それではセレナに会う前に死ねというのか。
「落ち着け、其方の魂を一気に喰らうわけではない。ごく少量ずつ子供たちは其方の魂を喰らう。いつまで生きられ
るかは其方次第だ」
「それと、其方の魂を喰らうため、肉体が先に朽ちてしまうのは困るので其方を不老不死にする。良いな。」
「わ、わかった」
急に現れた神に不老不死にしてもらうなど、自分の頭は混乱しているのかと思い始めた。
「動くでない」
そう言うと私の体も輝いてすぐに元に戻った。
「これで其方は不老不死だ。最後に其方の名を聞こう」
「わ、私はファウスト、コルベット・ファウストだ」
「ファウストか、これからの長い人生噛み締めて生きるが良い」
光が段々薄れ始めた。
私はまだ詳しい話を聞いていない。
ただ不老不死にしてもらっただけではないか。
「ま、待ってくれ。私はこれからどうすれば? 」
「汝はこれを割ることなく神聖に扱うが良い」
「残りの方法は、追々子供たちが伝えるだろう」
そう言い残して光は消えた。




