街外れの遺跡にて
CERNの研究者グロリアはまたもや爪を噛みながらブツブツつぶやいていた。
「港の方に行ったはずなのになんで海も見えない場所に来てしまったのかしら」
グロリアの目の前には、ラヴェンナの住人が遺跡として重宝している場所だ。
正確に言うと、ラヴェンナに来た頃のファウストがこの場所は神聖な場所だと皆に説明したから便宜上この場所は遺
跡とされている。
この遺跡に名前はない。
街の人々の中にも何人か興味を持った人間はいたが、彼らが調べたところで知り得たことは少なかった。
最初にこの場所を神聖視したファウストなら何か知っているかもしれないが、もはや彼と人はごくわずかな人間にな
ってしまったので遺跡の正体は皆無だ。
「一体なんなのよここは、ただ石柱を無造作に並べただけでもないようだし、かといって規則性なんてへも感じられないわ」
グロリアは爪を噛むのをやめて遺跡を一通り見回した。
高さ3メートル弱の荒削りな石柱が十~十五くらい無造作に並べられていた。
そして遺跡の中央らしき場所には、巨大な瓶のような形の石が横たわっていた。
グロリアはその瓶の形の石の傍にしゃがんでその石を見ていた。
「あなただってここに置かれた時には多くの人に崇められたり、綺麗に掃除されていたりしたんでしょうね。それが今やこんなに汚れて人々から忘れ去られるなんて。忘れられたら死ぬのは人間だけでなくすべてのものなのね」
グロリアは感慨深く石を見てため息をついた。
「私たち人間というのは進化しているのではなく退化しているのかもしれないわね」
グロリアが回り込んで瓶の底の裏を見ると何かが書いてあった。
「何か書いてあるわね、・・・って何語よこれ? 読めるわけないじゃない」
グロリアは再びため息をつき、
「明日図書館にいる老いぼれに聞いてみるとするかしらね」
そう言うと背後から猫の声が聞こえた。
不思議に思って振り向いたグロリアの背後には猫が十匹ほどうろついていた。
「ニャー」
先頭の猫がそう言うと後ろを向いて歩いて行った。
グロリアは立ち上がると
「兄さんね、また動物ばかり友達にして。だから研究室も動物の匂いしかしないのよ」
そう言ってグロリアは猫に囲まれながら、街へ戻って行った。




