港のそばにある家にて
私は今、高揚した気分だ。
ついに自分の夢が叶う。
多くの子供が笑い、楽しんでいる姿が目に見えるようだ。
この研究はもはや成功したも同然だ。
さぁ、最後の仕上げだ。
え?どういうこと?
こんなことにはならないはずよ。
遠くから声が聞こえる。
「先生、緊急事態です。離れてください!」
そんなはずはない、私の理論は完璧だった。
一体どこを間違えたというの?
目の前の事態に体がついていけない。
一体どうすればいいの?
だんだん、恐怖が訪れてきた。
なぜ、なぜ間違ったの?
私の夢があと少しで、あと少しだったのに。
だれか、だれか・・・。
・・・!
あぁ、夢だったのね・・・。
・・・いえ、夢じゃないわ。
私が過去に犯した償いきれない罪だわ。
あの研究のせいで多くの人を失ってしまった。
今の私に残っているのは・・・ルーアンだけね。
五年前、この土地に来たのは本当に偶然だった。
ボートを奪って海にで他はいいものの、まったく未経験の事態に頭は混乱していてひたすら何かから逃げていた。
結局海の真ん中で漂流者となってしまい、瀕死のところを一隻の商船に拾われてこの地へ来た。
港に降りて、これからどうすればいいかまったくわからなかった私が見たのは、ぼろ布にくるまった一人の少女だっ
た。
私はそんな少女を見捨てることができず、商船から恵んでもらったパンを持って彼女のところへ向かった。
彼女の名前はルーアン。
私の来る一年前に親が二人共失踪して孤児になったようだ。
この街にも孤児院はあるようだが、彼女は両親が帰ってくると信じて港から離れなかったようだ。
さすがに彼女も最初は私を疑っていたが、その頃の私のみすぼらしさもあったのかすぐに心を開いてくれた。
最終的に彼女は私の妹として育てることにした。
最初はよそ者と孤児が一緒になったことで周りからも冷たい視線を受けたが今ではルーアンにも友達ができてこの生
活も楽しくなっていた。
そんな幸せもいよいよ終わってしまうのね。
彼女と一緒に暮らすと決まってから、いずれはこうなるだろうと覚悟はしてきたが、やはりこの幸せがなくなるのは
辛い。
この五年間の生活は楽しかった。
ルーアンと一緒に笑ったり泣いたり研究していた頃より生き生きした生活を送っていた。
それを取られるのは辛い、何よりルーアンをまた一人にしてしまうことが一番辛い。
彼女が何より恐れているのは孤独だ。
ルーアンは一人だととてつもなく怯える。
最初の頃にまだ寝ていたルーアンを一人にして外に出て行ったら、起きた彼女は街中を走って私を探した。
私を見つけたときの彼女は走り回ったせいで足はボロボロで今にも倒れそうだった。
それから私たちはいつも一緒に行動していたが、ルーアンに友達ができたので最近は彼女の方が遅く帰ってくること
が多かった。
(友達ができたことはいいけど、ちょっと寂しいわね。
アンはそう思いながら夕飯の支度を始めた。




