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過労死店長の異世界DIY〜女神の顔面キックで赤ちゃん転生!チートなホームセンターと土方親方で目指せ究極のホワイトライフ〜  作者: 月神世一


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EP 2

 牛車に揺られてポポロ村へ。怪しい村長と芋畑〜害獣駆除の対象は機械の虫!?〜

「……おいフェイト、お前がさっき売店で買った『ルナミス・スポーツ新聞(競馬欄)』と『ポポロ・シガレット』は、クランの経費では落ちないからな」

「チッ。ケチくせぇこと言うなよ、社長。俺のモチベーション管理も立派な先行投資インセンティブだろ?」

「労働をしない奴に払うインセンティブはない。自腹を切りたくなければ、今日の依頼でしっかり働けよ」

ルナミス帝国から辺境の地へと向かう、定期路線バスの車内。

バスと言ってもエンジン駆動ではなく、岩でできた角を持つ牛型魔獣『ロックバイソン』が牽引する、大型の幌付き馬車(牛車)である。

俺たち『ホープ・クローバー』の面々は、ガタガタと揺れる木製の座席に揺られながら、目的地であるポポロ村を目指していた。

「リアス君、肩揉もうか? それとも、膝枕のほうがいい? いつでも言ってね。君のためなら、私の太ももなんていくらでも貸してあげるから♡」

俺の隣に座るキャルルが、ウサギの耳をぴこぴこと揺らしながら、上目遣いですり寄ってくる。

「あ、ああ……気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう、キャルル」

(相変わらず距離感がバグってるな……)

彼女の愛情表現は非常に真っ直ぐだが、時折見せるその瞳の奥の「執着」に、俺はエリアマネージャー特有のリスクセンサーを反応させずにはいられない。不用意に甘えれば、抜け出せない沼に引きずり込まれる気がするのだ。

「あぅぅ……リアス様ぁ……太陽芋、まだですかぁ……?」

向かいの席では、リーザがピンク色の芋ジャージの腹をさすりながら、今にも餓死しそうな声で呻いていた。

「あと少しで着く。着いたら腹いっぱい太陽芋を食わせてやるから、もう少しの辛抱だ」

「カツ丼……太陽芋の、カツ丼……」

「芋を揚げて卵でとじるのか? それはもうカツ丼じゃない気もするが……まあいい」

ルナミス帝国、レオンハート獣人王国、アバロン魔皇国。

三大国家の国境が交わる緩衝地帯に位置する『ポポロ村』は、政治的にはどこの国にも属さない、いや、属せない特異な土地だ。

車窓を流れる風景は徐々に荒野から豊かな緑へと変わり、やがて、なだらかな丘陵地帯に広がるのどかな集落が見えてきた。

「おっ、見えてきたな。あそこがポポロ村だ」

ロックバイソンが大きな鼻息を鳴らして停車し、俺たちはバスから降り立った。

見渡す限り広がる畑。青々とした風に揺れる作物の葉。そして、どこからか漂ってくる、極上の珈琲の香り。

ポポロ村は『ポポロ・タバコ(ポポロシガー)』や『ポポロ・コーヒー』といった、大陸中の貴族から庶民までが愛好する嗜好品の一大産地でもあるのだ。

「おお! ようこそ、ようこそおいでなすった!」

村の入り口で俺たちを出迎えたのは、麦わら帽子を被り、日に焼けた笑顔を浮かべる恰幅の良い老人だった。

「ワシがこの村の村長、ロップじゃ。冒険者ギルドからの派遣、感謝しますぞ」

「初めまして。クラン『ホープ・クローバー』のリーダー、リアスです。早速ですが、今回の依頼内容について詳細なヒアリング(確認)をよろしいですか?」

俺はビジネススマイルを浮かべながら、ロップ村長と握手を交わした。

見たところ、ただの気のいい田舎の爺さんだ。だが、こんな三大国家のパワーバランスの狭間で、高級嗜好品の利権を守りながら村を維持しているのだから、並の図太さではないはずだ。油断はできない。

「はいはい、もちろんじゃ。皆さんも遠路はるばるご苦労じゃったな。さあ、こちらへ」

村長に案内され、俺たちは広大な畑のあぜ道へとやってきた。

ふかふかの土の中には、今まさに収穫の時を待つ丸々とした『太陽芋』が眠っている。太陽芋は庶民の穀物源であり、ポテトウォッカのような大衆酒『イモッカ』の原料にもなる万能作物だ。

「村は今、見ての通り太陽芋の収穫期でしてな。だが、近頃あの山から、厄介な『害獣』が下りてくるようになってのぅ」

村長が、村の背後にそびえる鬱蒼とした山を指差した。

「害獣駆除ですね。事前に資料には目を通していますが、対象の個体数や生態については?」

俺が尋ねると、ロップ村長の顔が少し曇った。

「それが……ただの獣や魔物じゃないんじゃ。ワシらも最近になって初めて見たんじゃが……あれは、機械と虫がくっついたような、気味の悪いバケモノでな」

「機械と虫……?」

俺の頭の中で、前世で読んだこの世界の歴史書の知識がフラッシュバックした。

神蟲魔大戦の折に敗れ、ダンジョンに封印されたという『死蟲王サルバロス』。その眷属である『死蟲機ネクロバグ』たちの特徴と一致する。

「なるほど、死蟲機ですか。確かに普通の農民の手には負えませんね。100万円の報酬にも納得です」

俺が納得して頷いていると、後ろでタバコを吹かしていたフェイトが鼻で笑った。

「フッ。なんだ、機械の虫けら相手かよ。ハハハ、そんな雑魚相手は俺の専門じゃねぇが……まぁ、田舎の暇潰しにはなるか。俺の剣の錆にしてやるよ」

いかにも強者のようなセリフを吐いているが、こいつはコイントスで裏を引けば即座に仮病で寝込むクズである。絶対にアテにしてはいけない。

「フェイト、お前は絶対に手を抜くなよ。今回は広範囲の防衛任務だ。一匹でも畑を荒らされたら、報酬(俺の利益)が減額されるんだからな」

「わーかってるって。……まぁ、いざとなったらお前の『炎のオッサン』を喚べば一発だろ?」

「アホか! 親方イフリートのギャラは金貨10枚(時価)からだ! 100万円の報酬のために親方を呼んだら、赤字になるリスクがあるだろうが! 今回は徹底的に俺たちの『内製化(自力)』で処理するぞ!」

俺が利益率について説教している横で、リーザが限界を迎えていた。

「リアス様ぁ……もう、お話は終わりですの……? 目の前に美味しそうなお芋の葉っぱがあるのに……お預けは酷ですぅ……」

リーザが、畑に生えている太陽芋の葉っぱをむしって食べようとしている。

「おいストップ! それは商品だ、勝手に食うな! わかった、今からすぐに収穫作業に入る!」

俺は【ホームセンター】のインベントリに意識を向け、作業用の『軍手』と『スコップ』、そして収穫物を入れる『コンテナ(プラスチック製)』を取り出した。

「さあ、お前ら。労働の時間だ。芋を掘りながら、敵の襲撃に備えろ」

「はーい、リアス君♡ 私、君のためなら千個でも万個でも掘ってあげる!」

「食料……お芋……私の、カツ丼……!」

「俺は腰が痛ぇから、見張り(サボり)に専念させてもらうぜ」

それぞれのモチベーション(フェイトを除く)を胸に、ホープ・クローバーの農作業が開始された。

太陽の光をたっぷり浴びた畑の土は柔らかく、スコップを入れるとゴロゴロと立派な太陽芋が顔を出す。

のどかな秋の風景。時折吹き抜ける風が、ポポロコーヒーの甘い香りを運んでくる。

(ふむ。やはり良い村だ。この広大な土地と豊かな資源……ここに俺の防衛陣地ホームセンターを築ければ、各国の干渉を受けない完璧なホワイト・コロニーが完成するぞ)

俺がそんな野望(事業計画)を脳内で思い描いていた、その時だった。

――ドドドドドドッ……!!

突如として、足元の地面がかすかに、だが確実に振動を始めた。

地震ではない。何か巨大なものが、土の中、あるいは山の斜面を削りながら急速にこちらへ向かってくる規則的な振動だ。

「……リアス君」

キャルルがピタリと芋を掘る手を止め、ウサギの耳をピンと立てた。

彼女の異常に発達した聴覚が、いち早くその『音』を捉えていた。

「来るよ。山の方から……複数。しかも、普通の魔獣の足音じゃない。金属が擦れ合うような、嫌な音だわ」

「……お出ましってわけか。全員、作業中止! 武器を構えろ!」

俺の指示と同時に、畑の奥、森との境界線の木々がバキバキとなぎ倒された。

そして、土煙を上げて姿を現したのは――。

「ギギギギ……ガシャァァァッ!!」

全長三メートルを超える巨大な鋼鉄のカマキリ。

両腕の鎌は鋭利なチェーンソーのように回転し、複眼は不気味な赤い光を放っている。機械と昆虫の悪魔的な融合体、『死蟷螂機ネクロマンティス』である。

「ひゃあああっ! 出ただあ! バケモノだあぁっ!」

近くで作業をしていた農民たちが、一斉に農具を放り出して悲鳴を上げた。

「チッ、予想以上にデカいな。しかも刃が動力駆動か……厄介なクレーマーだ」

俺は腰のショートボウを引き抜きながら、冷静に敵の戦力を分析した。

のどかな村の収穫祭は一転、機械仕掛けのバケモノたちとの総力戦の舞台へと早変わりしたのである。

読んでいただきありがとうございます。

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