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過労死店長の異世界DIY〜女神の顔面キックで赤ちゃん転生!チートなホームセンターと土方親方で目指せ究極のホワイトライフ〜  作者: 月神世一


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10/17

EP 10

 泥棒襲来!ホームセンタートラップ発動〜定時後の安眠を奪う者には、割増の絶望(クレーム対応)を〜

深夜零時。

俺(リアス・バレンタイン、三歳)は、ふかふかのベッドの中で極上の安眠を貪っていた。

定時退社、入浴、そして十分な睡眠。前世のホームセンター店長時代、日付が変わるまで店舗のバックヤードでシフト調整に追われていた俺にとって、この規則正しい生活リズムこそが至高の贅沢である。

だが、そんな俺の平和なオフタイムは、かすかな「異音」によって破られた。

(……ん? 窓ガラスが割れる音……いや、ガラス切りで丸くくり抜かれたような、プロの犯行の音だ)

前世、深夜の店舗に空き巣が入った時と全く同じ手口の音だった。

俺は跳ね起き、部屋のドアを少しだけ開けて廊下の様子を窺う。

微弱な魔力感知を広げると、屋敷の一階から数人の男たちの気配が近づいてくるのが分かった。さらに、屋敷全体に薄っすらと『睡眠魔法』の煙が充満している。

俺の部屋の隣、母・マリアの寝室からは、すぅすぅという安らかな寝息が聞こえていた。

元A級冒険者の賢者である母が起きないのはおかしいが、おそらく盗賊団が持ち込んだ高価な魔導具マジックアイテムの睡眠香か何かだろう。あるいは、昼間、俺と親方のDIYの様子をハラハラしながら見守りすぎて、精神的に疲労困憊していたのかもしれない。父・ゴルディは王都へ出張中で不在だ。

つまり、現在この屋敷で動けるのは、ドラゴンの肉と極大回復魔法によるバグレベルの耐性を持ち、睡眠魔法を完全にレジストしている俺(三歳児)だけである。

(……ふざけるな)

俺の脳内に、真っ黒な怒りがフツフツと湧き上がってきた。

労働基準法すら存在しないこの異世界で、俺がどれほどこの『睡眠時間』を大切にしているか。それを不法侵入という最悪の手段で妨害するなど、ブラック企業の深夜呼び出し(トラブル対応)に等しい大罪である。

「俺のオフを邪魔する奴は……全員、労災認定(物理)してやる」

俺は『孫子』の一節を脳内で暗唱した。

『兵は詭道なり』――すなわち、戦いとは騙し合いである。正面から正々堂々と戦う必要はない。地の利を生かし、敵の予測を裏切り、徹底的に環境を支配した者が勝つ。

俺は真っ暗な廊下に素早く飛び出し、脳内の【ホームセンター】から次々と『迎撃用資材』を召喚し始めた。

「しーっ、静かにしろ。ガキの部屋はこの先だ。金庫の鍵の隠し場所、吐かせてやる」

「へへっ、元A級冒険者も、高級な『昏睡の魔香』の前じゃただの眠り姫だな」

階段を上がりきった盗賊団の四人が、ニヤニヤと笑いながら二階の廊下へと足を踏み入れた。

彼らは足音を殺すために、靴底の柔らかい革靴を履いている。盗賊としての基本だ。

だが、その先頭を歩いていた男が、廊下の中間地点に差し掛かった瞬間。

「……ん? なんだ、床が異常にツルツル……うおわぁぁっ!?」

男の足が、摩擦係数ゼロの世界へと放り出されたように激しく滑り、宙を舞った。

俺が直前に撒き散らしておいた、業務用『シリコンスプレー(潤滑剤)』の罠である。ホームセンターの資材館で売られているこれは、本来は建具の滑りを良くするためのものだが、ワックスがけされた木張りの廊下に大量散布すれば、スケートリンク以上の凶悪なトラップと化す。

「ど、どうした!? ぐわっ、俺も滑っ……!?」

後続の男たちも次々とシリコンの海に足を取られ、ドミノ倒しのように転倒していく。

だが、地獄はここからだ。

シリコンゾーンのすぐ先に、俺は『カーペット用強力両面テープ』を隙間なく貼り詰め、その上に『ステンレス製画鋲(サビに強いロングタイプ)』を一万個、上向きに敷き詰めていたのである。

「いっ、ぎゃあああああああっ!?」

暗闇の廊下に、野太い絶叫が木霊した。

勢いよく転倒した盗賊たちは、顔面、手のひら、そして腹部から、無数のステンレス画鋲の海(剣山)へとダイブしたのだ。

ただの画鋲と侮るなかれ。日本のホームセンターで売られている業務用のロング画鋲は、下手な異世界の粗悪な短剣よりも鋭利で頑丈である。

「い、痛ぇ! なんだこれ、針!? 身体中が……っ!」

「起き上がれ! ……って、床に手が張り付いて、と、取れねええっ!?」

パニックに陥った盗賊たちが起き上がろうとするが、強力両面テープが彼らの服や皮膚をガッチリとホールドし、もがけばもがくほど画鋲が深く突き刺さるという最悪の無限ループに陥っていた。

(よし。クレーム対応の基本その一。相手の勢いを完全に削ぎ、こちらの土俵に引きずり込む)

暗闇の奥、廊下の突き当たりに立つ俺は、冷徹な目で蠢く盗賊たちを見下ろしていた。

次の一手だ。

俺の足元には、先ほど召喚した『魔力駆動式・高圧洗浄機(プロ仕様)』が鎮座している。

ホースの先端ガンノズルをしっかりと両手で構え、俺は冷酷に魔力を流し込んだ。

「清掃の時間だ。ゴミは綺麗に洗い流さないとな」

ズドドドドドドォォォォッ!!!

静寂を切り裂き、高圧洗浄機が凶悪な駆動音を上げた。

銃口……いや、ノズルから発射されたのは、らせん状に回転しながら噴射される『ターボ水流』。

外壁にこびりついた長年の苔や、コンクリートの汚れすらも削り落とす圧倒的な水圧が、廊下で身動きが取れなくなっている盗賊たちを容赦なく襲った。

「ぶべらっ!?」

「な、なんだこの水は!? ぐあああっ、皮膚が、皮膚が削れるぅぅっ!」

時速数百キロにも達する高圧水流の直撃を受け、盗賊たちは画鋲の刺さった身体のまま、廊下の端までボウリングのピンのように吹き飛ばされていく。

水圧の痛みと、冷水による体温の低下。さらに両面テープで服を剥ぎ取られるという複合的なダメージに、四人中三人の盗賊が完全に白目を剥いて気絶した。

(完璧なオペレーションだ。これで残業(迎撃)は終わり……ん?)

俺が高圧洗浄機のスイッチを切ろうとした、その時だった。

吹き飛ばされた盗賊たちの中で、ただ一人、リーダー格の男だけが、壁に激突する寸前で態勢を立て直していた。

「……ふざけ、やがって……!」

リーダーの男が、ギリリと歯を食いしばりながら立ち上がる。

その身体から、ドス黒いオーラ――『闘気』が爆発的に噴き出した。

「たかがガキの魔法罠か何か知らねぇが……コケにしくさって……!」

闘気を纏った男の筋肉が膨張し、皮膚が硬質化していく。画鋲の刺し傷など、闘気の力で一瞬にして塞がってしまった。

この世界における『闘気』とは、生命力を爆発的な身体能力に変換するチート技術だ。一流の盗賊であれば、闘気を纏って石壁を粉砕することすら可能である。

「俺はレオンハート獣人王国の国境を越えてきた、賞金首の『牙のザッカル』だぞ……! ええい、小細工はここまでだ! ぶっ殺してやる!」

ザッカルと名乗った男が、狂気に満ちた目で俺を睨みつける。

その闘気の圧力は、さっきまでのコソ泥とは次元が違った。高圧洗浄機の水流程度では、今の強固な闘気シールドを突破することはできないだろう。

(……チッ。やはり異世界の武力フィジカルは理不尽だな。マニュアル通りにいかない厄介なクレーマーだ)

だが、俺の顔に焦りはない。

俺は小さくため息をつき、手元の高圧洗浄機をスキルのインベントリへと収納した。

そして、前世のマネジメント哲学を思い出す。

『手に負えない悪質なトラブルは、迷わず専門業者プロにアウトソーシングせよ』。

俺は廊下の奥に立ち塞がるザッカルを見据え、指先をパチンと鳴らした。

「……おい親方。深夜の割増料金(残業代)だ。仕事の時間だぞ」

その瞬間。

俺の背後の空間が歪み、屋敷の天井を焼き尽くさんばかりの、圧倒的な『紅蓮の炎』が吹き上がったのである。

読んでいただきありがとうございます。

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