表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2.

「忘れることはなにも悪いこととは限らない。日常も不安も。いつだってしていることよ。でも……あなたがさっきのものをそう捉えるとは」

残念そうな声がした。優しくてつけ入る隙がない、つけよる隙のない、優しくない大人のような人がいた。ぼんやりしたような姿だが、よく知っているような、生温かさがあった。

 少女はぼんやりとした顔で見る。なにも分かっていないようで、分かっているから目を留めているのか。どうにも見当はつけたくない、醜さ、歪さ。

「なにを……いうの?」

「都合のいい頭をしているわね」

どういう意味なのか、私には掴めない。どんどん悪が染み出るように、滲み出るように。

「しらないはずなどないわ。貴方は知っている」

なにを。どんどん近づいてくる。私の足が動かないことに私は気づかなかった。ついに目の前で、それは私の胸に手を触れそうな近さだ。拒めない、そんな思考も回らないまま、

「気づいてしまえばいい」

新月から朝日が昇り次に見ゆる月のような顔。それがどこかで見たようで、不思議にそれ以上のことは感じなかった。


 男の人の声に振り向く。

「お前のことが好きなんだ!」

力強くて、心を映すかのように目が瑞々しい。

 違う。

 また別の方へと身体を捻り、向く。

「君のことが……」

顔を赤らめる、恥ずかしそうで頼りなさが心をくすぐってゆく。

 違う。

「えっとー、どっちがいいかなぁ」

その顔を人差し指が搔いている。なにか女性物を選んでいるような……窺う顔。

 違う、こんなこと。

「ごめんね」

申し訳なさそうで、こんなことしか言えないというようなあなた、あなたに……あなたに!!

 自分の感情を再び認知する。

 でも、こんな顔見たことなどない。これも私の想像、本当はなにもしらないの。聞いてばかりで、見てばかり。相談の勇気も、変える勇気も変わる勇気も、責任だって取りたくない。このままではいたくないのに、このままなにもないまま進んで、進んで、進んで…………どうにかなってくれ、それが消せもせず、ただ見つめていることしかできない。いっそ、誕生日ケーキの蝋燭のように消せれば、いいのに。願って消したら、叶うのかなぁ。私の願いは叶ったのだろうか。いつもなにを願っていただろう。そんなことわからない!

 しりたくない、知りたくなんてない。いつも願うのに、本当は知りたくないのかもしれない。どんな彼もしらないのに、知りたくないのかも。…………ああ、彼は、彼は私を追ってなど来ない。でも、そんな酷い人でもない。しらないの、知りたい。知りたい。あなたのことが。

 ……変わるのには、私だ。優柔不断で甘えていた。なにも変わらなければ、ケーキのシフォンのように柔らかくて、ほんのり甘いまま、優しくいられるのかもなんて。嘘。シフォンケーキとして売る気が、食べる気がないままなんて、おかしい、冒涜だ。……誰かを変えるなら、私から。私はそんなに弱くも、意気地なしでも、かっこよくなんてもない。格好悪いままでなんて、すごく格好悪い。

「だいきらいなのはあなた」

変わってみせる。

 誰かが笑ったような気がした。

 気づけば私はベッドの上で。珍しく夢を見ていたようで、少しづづ頭が冴えていく。覚めてゆく。整理がつくと、私は寝起きの情けない声を上げながら、視界と記憶が告げた、あぁ夢だ__と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ