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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第89話『影の要塞へ』【陰謀と真実の序曲編⑨】

 翌朝。

 学園の門を抜けると同時に、クロス組と護衛団は一糸乱れぬ隊列で街外れへと歩み出した。

 リリシアを囚った敵の拠点――廃墟の砦は、薄曇りの空の下に沈んでいる。

 石壁は崩れ、塔は半ば倒れかけ、しかしその奥には黒い気配が渦を巻いていた。


「ここやな。」

 カイは立ち止まり、腰のチョークをくるりと回した。

「数字で割り出した座標とぴったり一致や。ほな、授業開始や。」


「授業って……。」

 ルーティアは呆れたようにため息をつきつつも、紅剣を抜いた。

「ええ、旦那様と共に突破いたしますわ!」

「なんかしばらくほっといてたけど…旦那様ちゃうって!」


 そんなカイにみんなの目が刺さる。

「今さら……」

「えっ、悪いのはワイ?」


◆◇◆


 砦の外壁に沿って、護衛団が散開する。

 先陣を切ったのはツェイルだ。

「俺が行く!」

 影のように駆け、外壁を音もなく駆け上がる。

 頂上にいた見張りの仮面兵を一瞬で切り倒し、旗のように合図を送った。


「見張り、一掃。」


 その合図を見て、カサが眼鏡を押し上げる。

「幻膜展開――二重。」

 薄い透明の幕が空気に重なり、砦の入口周辺を覆った。

 これで、外からは彼らの姿が見えない。


 双子は左右に分かれて駆け出す。

「兄者!」「弟よ!」

「せやな!」

 同じタイミングで敵の斥候を斬り払い、背中合わせで回転。

 二人の動きは鏡のように完璧に揃っていた。


 その背後で、メリルが腰の瓶を掲げる。

「補給物資投下!」

 瓶が砦の窓から中に転がり込み、ぱんと破裂。

 中から白い煙が噴き出し、咳き込む仮面兵の声が響いた。


「っくしょん! ごほっ、ごほっ!」

「何だこれは……!」


「“眠り煙”よ。十五分はぐっすり眠れるはず。」

 メリルが胸を張る。


 正面からは、ゴルムが大盾のように進み出た。

 両腕を広げ、砦の大扉に肩をぶつける。

「……通行止めや!」

 ごうん、と重い音を立てて扉がひしゃげ、その隙間からクロス組がなだれ込んだ。


 ルーティアが紅剣を振り抜き、火花を散らして敵兵を弾き飛ばす。

「旦那様、道は切り開きましたわ!」


「おおきにな。」

 カイは軽口を叩きながら、敵の魔法陣にチョークで“0”を書き加える。

 術式が一瞬で崩壊し、敵の火球がただの火花になって消えた。

「雑な式はアカン。減点や。」


◆◇◆


 砦の中は迷路のようだった。

 崩れた石壁、折れた梁、暗い通路。

 しかし護衛団は迷わない。


 ツェイルが影で先導し、カサが幻膜で罠を見破る。

 双子が左右を守り、メリルが煙で敵を足止めし、ゴルムが大盾で突き進む。


 その中心で、カイとルーティアが並んでいた。

 紅剣の閃きと、チョークの数式が、次々と敵の攻撃を無効化していく。


「旦那様、今の息、ぴったりでしたわね!」

「おう。夫婦漫才の練習にもなったやろ。」

「なっ……! ふ、夫婦漫才!? 私たちは……!」

「まぁ、夫婦漫才やんか。」

「~~っ!」

 ルーティアは顔を真っ赤にしながら敵を斬り倒した。


◆◇◆


 やがて、砦の最奥に辿り着く。

 そこには黒い魔法陣が床一面に広がり、リリシアがその中央に縛られていた。

 四肢を絡める糸は光を吸い込み、彼女の力を封じ込めている。


「リリシア!」

 ルーティアが叫ぶ。


 その前に、幹部格の仮面の男が立ちはだかった。

「来たか、教師。姫はここにいる。」

 赤く光る瞳が、不気味に輝く。


「リリシアを解放せよ!」

 ルーティアが剣を構える。


 カイは一歩前へ出て、静かにチョークを握り締めた。

「ほな、最終課題やな。――仮面、相手したるで。」

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