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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第41話『領民たちの人気者』【カイとルーティアの夏休み編⑩】

 水路に水が流れ込んだあの日から、公爵領の空気はがらりと変わった。

 干ばつに苦しんでいた村は潤いを取り戻し、農園は青々とした作物を実らせ始めた。

 その中心にいたのは――カイ・クロス。


 領民たちは口々にこう呼ぶようになった。


 「クロス先生!」

 「婿殿先生!」

 「領地の救世主!」


 ある日、公爵邸から市場へ出かけたときのこと。

 通りを歩けば、あちこちから声が飛んでくる。


 「婿殿先生! この前の肥料の比率、もう一度教えてください!」

 「婿殿! 嫁入りの日取りはいつですか!?」

 「いや日取り決まってへんし! てか婿殿ちゃうし!」


 慌てるカイに、子どもたちがわらわらと集まってきた。

 「せんせー、あめちゃん!」

 「はいはい、しゃあないな。ほれ、ひとり一個やで」


 ポケットから取り出した小さな包みを配ると、子どもたちが「わぁ!」と笑顔を弾けさせた。


 「……カイって、ほんとに教師っぽいですよね」

 ルーティアが横で腕を組み、得意げに頷く。


 「そうか?」

 「ええ。子どもから大人まで慕われて、しかも領地を救って……。もう先生以上に旦那様ですわ」

 「奥様発動すな!」


 市場の人々はそのやり取りを見て笑い、さらに口々に叫んだ。

 「婿殿先生とルーティア様はお似合いだ!」

 「領地の未来は安泰だ!」

 「祝言はいつだ!?」


 「祝言ちゃう! ワイはまだ結婚する気なんて――」

 「する気なんて……?」

 ルーティアがにやりと笑い、じっと見つめてくる。

 「……あるんでしょう?」

 「ない! 今はない!」


 それでも市場を歩く間中、どこに行っても同じ声が飛んできた。

 「婿殿!」「婿殿先生!」「旦那様!」


 そのたびにカイは顔を真っ赤にし、ツッコミを飛ばす羽目になる。

 だが、ふと気づけば――心のどこかで悪くない、とも思っていた。


 (ワイが……“居場所”持ってええんか? みんなが笑顔で呼んでくれるんやったら……)


 隣ではルーティアがうっとりと笑みを浮かべ、堂々と腕を絡めて歩いている。


 「ね? もう誰も否定しませんわ。あなたはこの領地の旦那様なんですの」

 「誰も否定せんのが逆に怖いわ!」


 市場中に笑い声が響き渡り、カイはすっかり領民の人気者となってしまったのだった。

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