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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第40話『川を動かす方程式』【カイとルーティアの夏休み編⑨】

 翌朝。

 村人たちは鍬やつるはしを手に、川沿いに集まっていた。

 カイは大きな板を地面に立てかけ、白いチョークで数式を走らせていく。


 「まずは川から村までの距離。ここから直線距離で二百メートルちょっとやな。

 次に必要な傾斜角度は……tanθ=高さ÷距離。計算すると、およそ三度の勾配で水は自然に流れるはずや」


 農民たちは口をぽかんと開けていたが、やがて一人が呟いた。

 「……三度って、つまり……」

 「村の広場と川の水面との差が、この高さにあればいいんだ!」


 カイはにっこり笑う。

 「せや。あとは角度を崩さんように溝を掘るだけや」


 ヴィルヘルムが鍬を担ぎ、腕を回す。

 「なるほど。ならば我らが先陣を切ろう」

 「兄様方まで!?」ルーティアが驚く。


 ユリウスは軽く笑った。

 「妹よ、これは領民を救う戦いだ。剣を振るう代わりに鍬を振るうだけのこと」


 その言葉に、村人たちの士気が一気に高まる。

 「領主様のご子息まで……!」

 「我らも負けてはいられん!」


 カイは監督のように指示を飛ばした。

 「そっちの班は直線で掘って! 三度以上掘りすぎたら水が一気に流れて崩れるから注意や!

 そっちは大石を取り除いて! F=ma、力は質量×加速度や! 二人で一緒に押したら軽なるで!」


 村人たちは笑いながらも必死に動き、汗を流した。


 ルーティアは傍で日傘をさしながら、誇らしげに見守る。

 「カイ……いいえ、旦那様。あなた、本当に領地を導いていますわ」

 「導いてるんやなくて、ただの算数の応用や!」

 「その算数で村を救えるんですもの。やっぱり旦那様です!」

 「奥様発動禁止!」


◆◇◆


 数日間の作業の末、土の水路が村まで繋がった。

 最後の仕上げとして、川の一部を切り崩して水を流し込む。

 ごうごうと音を立てて水が走り、村の広場に新しい小川が生まれた。


 「おぉぉぉ!」

 「水が……水が来たぞーー!!」

 村人たちは歓声を上げ、子どもたちは靴を脱いで水に飛び込んだ。


 老いた村長が震える声で言った。

 「婿殿先生……あなたはこの村を救ってくださった。我らの命の恩人じゃ」


 「……いや、ワイはただ数式で手伝っただけや。掘ったんはみんなやで」

 そう言うカイに、村人たちは頭を振る。


 「いいえ。導いてくださったのは先生です」

 「婿殿先生! ありがとう!」


 「婿殿先生言うなぁぁぁぁ!!!」


 ルーティアはそんなカイの肩に腕を回し、満面の笑みを浮かべた。

 「聞きました? 旦那様。もう領民にとっても、あなたは奥様の旦那様なのですわ」

 「奥様言うなーー!!!」


 笑いと歓声が、夏の空に響き渡った。

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