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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第34話『豪華すぎる朝食と奥様気取りの令嬢』【カイとルーティアの夏休み編③】

 夕食を終えたあと、エレオノーラ夫人が静かに告げた。


 「カイ先生。今夜からはルーティアと同じ部屋でお過ごしになっても構いませんよ」


 「なっ……!?」

 カイは椅子から転げ落ちそうになった。


 「ちょ、ちょっと待ってください夫人! それだけは……!」


 ルーティアは当然といった顔で頷く。

 「そうですわね。夫婦ですもの、同じ部屋で――」

 「まだ夫婦ちゃうから! そこは一線引かせてもらいます!」


 カイは必死に手を振り、声を張った。


 「これは教師としても、男としても守らなあかんラインや! ワイは絶対にゲストルームで寝る!」


 使用人たちは目を丸くし、夫人も思わず笑みをこぼす。

 「真面目なのね……でも、そういうところが信頼できるわ」


 結局、公爵邸の一角にある豪華なゲストルームがカイの部屋となった。


 ただし――


 「……でも毎朝のお迎えは、私がしますからね?」

 そうルーティアが言ったときだけは、カイも押し黙った。


 「……それぐらいやったら、しゃあないか」

 「はい、決まりですわ」


 その瞬間、ルーティアは勝ち誇ったように笑った。


◆◇◆


 翌朝。


 豪華なベッドの上で、カイはぼんやりと目を開けた。

 窓から差し込む朝日が白いカーテンを透かしている。

 「……夢やないんやなぁ。ホンマに公爵邸におるんか」


 と、次の瞬間。


 ガチャッ、とドアが開いた。

 「旦那様ぁ、朝ですよぉ」


 ルーティアがにこにこと入ってきた。

 白のネグリジェ姿に薄手のガウン。長い髪は寝癖ひとつなく整っていて、まるで舞踏会の姫のよう。


 「な、なんでそんな格好で来るねん!?」

 「だってあなたをお越しに来たんですもの。奥様の務めですわ」

 「奥様ちゃうて言うてるやろ!」


 ルーティアは遠慮なくベッドに腰掛け、毛布を引っ張る。

 「ほら、早く起きてくださいまし。朝食が冷めますわ」

 「うわ、ちょ、乱暴やな! ワイ、寝起き弱いんや!」


 そのまま無理やり引き起こされ、髪を撫でられる。

 「ふふっ、寝癖がかわいい」

 「かわいい言うな! ワイは男や!」

 「はい、かわいい旦那様ですわ」

 「話聞けーー!」


◆◇◆


 身支度を整え、二人は食堂へ向かう。

 そこには長いテーブルいっぱいに並べられた豪華な朝食が待っていた。

 香ばしいパン、黄金色のオムレツ、香草をまぶしたソーセージ、新鮮なフルーツ。

 「うわぁ……ビュッフェやん」

 「びゅっふぇ?」

 「ええわ、朝から食い過ぎ注意やな」


 席につくと、ルーティアが当然のように隣に座る。

 そしてナイフとフォークを手に取り、パンをちぎってカイの皿に置き、ソーセージを切り分けて差し出した。


 「はい、あーん」

 「誰があーんするか!」

 「奥様の務めですから」

 「その言葉、何回使うんや!」


 観ていた執事やメイドたちが、くすくすと笑っている。

 「まぁ、仲睦まじいご夫婦ですね」

 「まるで新婚の朝ですわ」


 「新婚ちゃう! ワイはただの臨時教師や!」

 必死で否定するカイだが、口に押し込まれたソーセージの味は絶品だった。


 ルーティアはさらに張り切る。

 「旦那様、牛乳も飲んでください。骨が丈夫になりますわ」

 「ワイは子供ちゃうで!」

 「いいえ、大きな子供です」

 「いや、身長180超えとるおっさんに言う言葉ちゃう!」


 それでも、差し出されたグラスを渋々飲み干すと、周りからはまたも「まぁ素敵……」と感嘆の声。


 食事が終わるころ、兄ヴィルヘルムとユリウスが入ってきた。

 「……朝から随分と仲が良いな」

 「昨日は頑なに同室を拒んでいたのに、もう夫婦のようではないか」


 「ちゃう! これは強制や! ルーティアの暴走や!」

 「ふふん、暴走ではなく“愛”ですわ」

 「愛とか言い切るなーー!」


 最後にエレオノーラ夫人が姿を現し、にこやかに告げた。

 「カイ先生。こうして見ていると、やはりあなたは家族同然ですね」


 カイは頭を抱え、深くため息をついた。

 (あかん……この家、全員がワイを婿に仕立てあげる気や……!)


 こうして、カイの“公爵家夏休み生活”は朝から奥様気取りの令嬢に翻弄されながら幕を開けた。

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