雨の来訪者と、消えないランプ
「……うそでしょう」
玄関のドアを開けた瞬間、私はその場にへたり込みそうになった。
夕方、仕事から帰ってきた私の目に飛び込んできたのは、変わり果てたリビングの姿だった。
朝、急いで家を出る時に、窓を閉め忘れてしまったのだ。今日にかぎって、午後から激しいゲリラ豪雨。
開いたままの窓から、容赦なく雨が入り込んでいた。お気に入りのカーテンはぐっしょりと濡れ、フローリングの上には、小さな水たまりができている。
それだけではない。どんよりとした部屋の中で、一つの冷たい光が不自然に輝いていた。
エアコンの、運転ランプだ。
「エアコンも、つけっ放し……」
誰もいない無人の部屋を、丸一日、キンキンに冷やし続けていたのだ。冷気と湿気が混ざり合った奇妙な空気の中で、私は今月の電気代を計算し、頭を抱えた。
こういうの、本当によくやる。
電気をつけっ放しで朝を迎えるなんて、日常茶飯事だ。
ひどい時には、自動お湯張りでお風呂にお湯を入れっ放しのまま、リビングのソファで朝まで爆睡していたことだって、何度かある。
朝起きて、湯気で満ちた浴室と、冷え切った自分の体を見たときのあの絶望感。
「はぁ……、反省」
私は、じっとりと濡れた雑巾を床に押し当てながら、心から深くため息をついた。
どうして私は、こんなに基本的なことができないのだろう。毎回「次は気をつけよう」と思うのに、数日経つとまた同じやらかしを繰り返してしまう。
自分の計画性のなさに、私のライフは綺麗にゼロになった。
床をすべて拭き終えたあと、私はエアコンを消し、今度はしっかりと窓の鍵を閉めた。
お詫びのしるしとして、冷蔵庫に隠しておいた高級なプリンを食べることにする。
スプーンですくって口に入れると、濃厚な卵の甘みと、ほろ苦いカラメルが口いっぱいに広がった。
「明日からは、玄関を出る前に指差し確認しよう」
美味しいプリンのおかげで、どん底だった気分がほんの少しだけ上を向く。
反省はするけれど、落ち込みすぎない。
それが、ライフをゼロにしながらも生き抜く、私の流儀なのだ。




