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白い泡の戦場と、敗北の湯上がり

生まれ変わる。

そう決意した私が、最初に選んだ戦場は、お風呂場だった。

「今日こそ、すべてを白く塗り替えてみせる」

扉を開けると、そこには数ヶ月分のサボりの結晶が、黒々と広がっていた。

壁の隙間、タイルの目地、シャンプーボトルの底。お風呂場のカビが、とにかく凄かったのだ。

私はマスクとゴム手袋を装着し、強力なカビ取りスプレーを武器に、果敢に突撃した。

シュッシュ、と勢いよく泡を吹き付け、ブラシでゴシゴシと擦る。

最初は楽しかった。黒い汚れが泡と一緒に流れていくのを見て、「私は変われる!」と確信していた。

けれど、お風呂場のカビというやつは、想像以上にしぶとかった。

擦っても、擦っても、奥に入り込んだ黒ずみが消えない。

だんだんと腕の筋肉が悲鳴を上げ始め、ツンとした塩素の匂いに頭がクラクラしてくる。

ふと見上げると、天井近くのパッキンにも、まだ無数の黒い点が待ち構えていた。

「……もう、無理」

開始からわずか二十分。私は、カビ取りブラシを床にぽとりと落とした。

私の高い決意は、お風呂場の頑固な汚れの前に、あっさりとくじけたのだ。

生まれ変わるなんて、そう簡単にできるわけがない。目の前のカビすら全滅させられないのに、人生を変えるなんて大言壮語もいいところだ。

結局、中途半端に泡を洗い流し、私はトボトボとお風呂場を後にした。

やり残した汚れに見下ろされながら、私のライフは綺麗にゼロになった。

私はリビングのソファに倒れ込み、冷たい麦茶を喉に流し込んだ。

「まぁ、半分は綺麗になったし、今日はこれで合格だよね」

エアコンの風を浴びながら、私は自分に言い訳をした。

一歩ずつ、少しずつ。カビも人生も、一気に変えようと焦らなくていい。

そんな都合のいい結論を出して、私はそっと目を閉じた。

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