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21.ジョン・エチルエーテル

体調不良のため、今回は少し短めの更新となります。

日曜日には通常通り更新できると思いますので、何卒よろしくお願いいたします!


 ――騎士団本部、上層部。


 昼下がりの淡い光が、窓越しに執務室へ差し込んでいた。

 机に向かった銀髪の男が、黙々とペンを走らせている。

 静まり返った室内に、やがて控えめなノック音が響いた。

 

「失礼します。

 第十九師団、アーノルド・ハイドレンジア。

 報告書の提出に参りました。」


 ふと、顔をあげる。

 聞き慣れた声に、短く返す。


「ハイドレンジアか。

 入れ。」


 一呼吸置き、ゆっくりと扉が開かれた。


「ジョン総団長、お疲れ様です。

 たった今、第二十師団との報告会が終わりました。」


「……そうか。」


「……ベルンハルトが、既にランク7の任務をこなしたということをご存知でしょうか。」


 ジョンが、顔を上げた。

 表情ひとつ変えず、ため息をつく。


「知らないな。

 ……落ちこぼれに割く時間などない。」


「今回の報告会で、彼は立派に隊長を務めていると私は思いましたけどね。

 ……いえ、出過ぎたことを言ってしまいましたね。

 お忙しいと思いますが、目を通して頂けると。」


「ああ、ありがとう。」


 ジョンが、アーノルドから書類の束を受け取った。


「第十九師団は、昨日帰還したと聞いたが。

 リーヴァロット市への派遣だったのか?」


 アーノルドの脳裏に、ミザンの顔が過ぎる。

 そういえば任務の入れ違いについて、まだ正式には報告していなかった。

 

「あ、あぁ、はい。

 実は、リーヴァロット市の依頼はかなり複雑だと聞いておりまして。

 そのような任務に第二十師団を向かわせるのは危険だと判断し、こちらで引き受けました。」

 

 アーノルドは、悟られまいと早口で捲し立てる。


「そうか、長期間の任務、ご苦労だった。

 下がっていい。」


「ありがとうございます。

 失礼致します。」

 

 アーノルドが、踵を返す。

 ギィ、と重厚な扉が軋む音を立てた。

 ジョンがペンを置き、渡された報告書に目を通す。

 読み進めるごとに、表情が少しずつ険しくなる。


「……エーテルの遅延、霧。」


 低く呟いた声は、誰の声に向けたものでもなかった。

 ジョンは報告書に目を落としたまま、しばらく黙っていた。

 最後のページを読み進める。

 

 ――第二十師団隊長、ベルンハルト・エチルエーテル。

 

 その文字列を見つめる指先が、わずかに止まる。

 その直後、感情を押し殺すように、淡々とチェック欄に自分の署名を書き記した。


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