31 『応急処置と抜本的治療』
第2部 第4章 第31話 『応急処置と抜本的治療』
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年を跨いで2026年。
政治動画のおかげで何とか食いつないでいる。
自分の過去を曝け出した自伝を公開したことで、思想の透明性や核心部分が認知され、支持者も少しずつ増えてきた。
またある程度詳細に書いた自伝のおかげで、大雑把な主張をしやすくなった。
――私は何も「資本主義の全てが間違っている。社会主義/共産主義万能!万歳!」等とは言っていない。
もちろんファシストでもない。
恐らく資本主義の良い部分と社会主義の良い部分は『それぞれ旬が違う』。今の日本の大部分は民族性も考慮して、野心的で爆発的な資本主義よりも、安定重視の混合経済にするべきだと言っているに過ぎない。
民主主義を壊して権威主義にするのではない。現在実質機能しきれていない民主主義の拘束力と、権威主義の即効性というそれぞれの良い部分を合わせようと言っているのだ。
そしてその二つに関わる決定的な部分は『監察』である。
それは飼い主がペットを見張るためのものではない。
全てを見張る必要がある。
しかし組織が偶数であれば分かりやすい対立を呼び、5以上では複雑になり破断する。
だから三竦みなのだ。
今の精神性の低い野生に近い人類には、その程度の管理能力しかない。――
『とにかく私は理不尽や不条理や陰湿な事が許せない。』
『虚飾を排した、公平なる国家のために。』
そのメッセージと共に、支持者を増やす。
どれだけ語ったところで、小難しい上に案も大胆で、賛同を得られる時は来ないだろう。と思って始めたことだったが、私の意図をより分かりやすく噛み砕いてくれる者も現れ、意外にも私の案は着実に支持を得始めていた。
しかし、私の最終目標は日本の全体的な制度改革で終わりではない。
政治的なものは精々直近数十年から数百年程度で終わってしまうものだ。
都合の良い穴のあるシステムが悪いのは勿論だが、そもそもその様に人が育つ教育にも大いに原因がある。
今までの教育では、『戦争のための技術競争のための経済最優先』と、『国家団結のための国家思想』、この二つに絞られて教育が成り立っている。
今まで『社会に出て何の役に立つのかわからない』ものを勉強していたのはそういうものだったのだ。
つまり、最初から個々の人間を尊重する教育ではないのだ。
言い換えると、個々の人間の能力を向上させるための最も効率的な教育ではないということだ。
精神性である秩序は国家思想に含まれるであろうが、その前提となる個々の道徳観や倫理観などの特に人間性の方の発展や教育は大幅に遅れてきた。
更に言えば、社会や物事の構造が複雑化しているのに対して表層的な思考に留まっていたり、思慮深い人間へ教育することをしていない。
その教育を見直し、人類全体の一人一人の道徳や倫理観を高めていかなければ、結局『正直者が馬鹿を見る』この世界は終わることがないのだ。
私は人間性に関しては、その土台ですらまだ人類は満足に作り切れていないと考えている。
――科学は既に人の手を離れようとしている。
80年前に核兵器が登場し、今やそれは人間の五感では感知できない速度で文字通り地平線の彼方から飛んできて、見渡す限りの土地を焼き払う。
そしてAIという新たな生物といっても過言ではないものを創造するまでに至っている。
しかし、その人間性や精神性はどうか?道徳や倫理の発展は今まで『打倒敵国』のスローガンの前に、経済や科学よりも大きく遅れてきた。
『野生レベル』の『闘争心』と『優劣思想』を捨て、次の人類へと進化する時が来ているのではないか?
※野生レベル=「相手を支配・排除しないと安心できない心」 優劣思想=「自分や集団の価値を、他者より“上か下か”でしか測れない心」
私はホモ・サピエンスの次の進化は物理的なモノではなく、精神的なモノだと考えている。
『人が野生動物ではなく、理性を持ち自分を律す生き物』だと触れ回るのであれば、不必要に強すぎる野生的闘争心は捨てるべきである。
だが、私は向上心を捨てろと言っているわけではない点は誤解しないで欲しい。
『より良いものやより効率的なものを作り出すのに必ずしも競争する必要はない。』と言っているのだ。
それが出来ないのなら、ターミネーターの世界が来るだけだろう。核戦争で滅びるか、ロボットに殲滅されるか。だ。――
教祖と名乗っている以上、本来の道徳・倫理・秩序に関する哲学も説いていかなくてはならない。
そう思い、徐々に私が本来成し遂げたかった方向へ話を進めていく。
政治に関するものはあくまで極短期的なモノ。人間性・精神性は長期的なモノだ。
つまり前者は応急処置であり、後者が抜本的治療である。
高市政権で少し落ち着いていた世論だったが、『頭が変われば簡単に舵取りが変わってしまう。それを制御する構造が必須』そして、『その先の根本的な問題解決がなにより重要で必要。』というユキの思想に多くの賛同が集まる。
『虚飾を排した、公平なる国家のために。』
その言葉がスローガンとなっている。『天凪祓が悪人を祓う』と・・・。
皆。大なり小なり。世の中の仕組みによる理不尽や、人間性や精神性の教育不足による苦痛を感じていたのだ。
流石情報化社会というべきか、たった約半年という短い月日で、その生々しい人生譚と奇抜で大掛かりな発想は日本国内で爆発的な支持を集めていった。
既得権益層を除いて・・・。
しかし、立党こそしてはいないものの、既得権益層も既に無視できないほどの支持を得ている。
それと同時に『大胆で強行的な案を掲げている=タカ派(暴力的)』と勘違いするコメントもちらほらと見かけるようになっている。
これは早めに対処しなくてはならない。何故なら暴力事件が起これば内乱罪などの適用にこじつけられてもおかしくないからだ。
「私を支持してくださるみなさまには、本当に感謝しております。しかし支持者が増えたと同時に、私が大胆かつ強行的な案を提示しているがゆえに、『私が暴力革命を望んでいる。』と誤解されているコメントやアカウントをお見かけいたします。私にその様な思想も計画も一切ありません。くれぐれも暴力革命や公務執行妨害に該当するような、暴力行為や妨害行為は絶対にやめていただきたいです。私が根底に掲げる道徳・倫理・秩序の進歩にも矛盾しますし、法的にも私に内乱罪が適用される可能性もあります。どうかご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。」
その様な声明を出した。
そんな中、遂に既得権益の手先である政治家がマスコミを使って攻めてきた。
テレビ中継される特別公聴会での質疑だ。
既得権益を守るという本音を隠すための建前を全て論破していく。
下心の一切ない私の強い思いに薄っぺらい建前なんかが入り込む余地なんてない。
私のベースの意見としては『そもそもどれもこれもお前らが戦後80年もあったのに何もできないどころか悪化させた結果、この様な強行論が出てきている。』というものだ。
私の強行思想はそもそも、この社会の結果として生じた苦痛から生み出されたものなのだから。
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『VSマスゴミⅠ-Ⅰ ~プライバシーX人権~』 DON'T MISS IT!!!




