25 『誕生日の夢』
第2部 第4章 第25話 『誕生日の夢』
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PCスペックや演出と格闘する苦悩の最中、時は2025年6月24日。
29歳の誕生日を迎える。
無意識に独り言が口から出る。
「29か・・・。」
「20代も最後・・・。」
「親父はこの歳の時には既に俺の妹までいた・・・。それなのに俺は・・・。」
「何を・・・。やっているのかな・・・。」
「何のために・・・生きているのかな・・・。」
「死んだらどうなるのかな・・・。」
ベッドの上でそんなことを考えていると、瞼が重くなる・・・。
「今・・・この瞬間・・・世界では・・・どんな人が・・・何を考えているのかな・・・。」
「幸せな・・・人ばっかり・・・ってことも・・・ないか・・・。」
「ウクライナで・・・戦争・・・やってる・・・。」
「6時間・・・時差があるから・・・向こうは夕方か・・・・・。」
「Zzz・・・。」
――・・・。
榴弾砲による支援砲撃が着弾する音が聞こえる。
「弾丸がかすめる音・・・ではない。
ドローンが飛び交う音だ・・・。
俺は・・・。戦場に・・・いるのか・・・?
嫌だ・・・。死にたくない・・・。
死ぬのが怖いんじゃない。
こんなわけの分からない誰かの思惑のために犠牲になりたくない。
世の中への怨み辛みの塊である私が、命まで誰かに利用されるなど耐えられない・・・!!!!」
ズザッ・・・!?
一瞬で景色が切り替わる。
ここは・・・?
パイプだらけ・・・工場・・・か?
石油化学コンビナート・・・?
暗がりに輝く白とオレンジのライトが眩しく、美しく、不気味だ。
外に出ると、辺りは真夜中から夕方へと変わる。
ふと、一人の背中の丸まった人影が見える。
老婆だ。
老婆は疲れ切った眼差しで赤い西の空を見上げている。
スカーフ・・・いや。プラトーク・・・。
そういうことか・・・。
前線にいる奴ほど、政治的意思なんて関係ないのにな・・・。
間違っているよ。
スッ・・・。
次から次へと、様々な国の様々な場面を見せつけられる。
イギリスでは、昼下がりの雨上がりの公園で少年が水たまりを長靴で踏んでいる。
スペインでは、陽の強い広場の噴水のそばで少女が赤いスカートを揺らして笑っている。
ネパールでは、夕方の山道の祠の前で青年が風にはためく旗を見上げている。
アメリカでは、バスケットコート脇で出勤前らしい女がほどけた靴ひもを結び直している。
ケニアでは、赤土の道の木陰で若い男たちが笑っている。
ベラルーシでは、公園で女の子がリスとハイタッチをしている。
日本では、夜のコンビニの前で若い男が膝を抱えたまま、明るい看板をぼんやり見上げている。
ポーランドでは、石畳の広場で男の子が鳩の群れを追いかけている。
メキシコでは、中年の男が色紙の旗を見上げて煙草の火をつけている。
笑っている者もいた。
疲れ切っている者もいた。
少しだけ善いことをする者もいれば、少しだけずるいことをする者もいた。
それでも誰もが、同じ世界の、同じ一瞬を生きていた。
そして暗闇・・・。
いや・・・星空・・・?
違う。町明かりだ・・・。
それも違う・・・。
かすかに雨の音が聞こえ始める。
すりガラス・・・。
そう。すりガラスだ。
すりガラス越しに近所の家の門燈や街燈が見えているのか・・・。
あゝ・・・。これは・・・。実家の窓だ・・・。
すりガラスかと思ったら、窓が開いてるじゃないか・・・。
雨が吹き込んでくる。窓を閉めないと。
窓に近づこうとすると、窓の下側から背が高く筋肉質で逆三角形の体型の道化師が、足を組んだ状態で横向きで浮かび上がり、薄ら笑いを浮かべた横顔のまま、目でこっちを見ている。
そうだな。さながらそれはFFのケフカ8割、ヒース・レジャーのジョーカー2割な外見だ。
服は黒のスーツとシルクハット、帯やスーツの縁は明るい紫だ。
髪色はケフカよりも黄色が濃く、暗い黄茶よりは金髪寄りという具合だ。
髪型はSmooth CriminalのPVのマイケル・ジャクソンが髪を縛らず、ヒース・レジャーのジョーカーのような肩につかないくらいのミディアムヘアにした感じだ。
毛量やセットの雰囲気はジョーカーよりもマイケル・ジャクソンだ。
そして瞳は紅蓮。
彼は宙に浮いており、僅かに上下に浮遊しながら私が寄ってくるのを待っているようだ。
紅蓮の瞳が怪しく光っており、浮遊に合わせて微かな光跡を残していた。
狂気というよりは、不気味。やや恐怖。そのようなイメージだが、どこか楽しげな空気も僅かに残っている。
私は躊躇することなく窓に近づく。
「あなたは?」
私が声をかけた瞬間。
彼は『待ってました』と言わんばかりに、口角を思い切り吊り上げ、目を見開く。
そして、横顔のままで口を開く。
『ピエロに自分から話しかけちゃいけない。』
「・・・。」
窓の手前であっけにとられている私に対し、空中でこちらに向き直り、窓の下枠を両手でつかんで身を乗り出し、私の顔のすぐ目の前にまで顔を近づけ、こう続ける。
『ピエロに自分から話しかけたから呪われたんだ。』
低めのダミ声でそう言いながら、ピエロの表情は、片目は見開き、もう片方は半開きで、口元も左右に崩れ、眉は困り眉になり、顎を少し上げ、力の抜けたぐにゃっとした、威圧しているような嘲笑しているような顔になる。
そう言うと、彼は不気味な笑いと共に雨の中の暗闇へと消えていった。
私は、彼そのものには恐怖しなかった。
禁忌を犯したと理解した瞬間、身体が円筒状にくり抜かれ、内臓が冷えるような後悔と、本能的に汗が全身から噴き出す感覚が私を襲った。
彼の言葉の意味が胸に落ちた瞬間、全身の血の気がすっと引いたのだ。
ぞっとした、というより、知らず知らずのうちに、自分から踏んではいけないものに踏み込んでしまったような、自分が真に信じていた人生の柱そのものを、根底からひっくり返してしまうような、取り返しのつかない大失態を引き起こしたかのような感覚だった。
そして、それを頭で冷静に理解しきるかどうか、というところで瞬間的に冷たい汗とも、脂汗ともつかない嫌な汗が、一気に全身から噴き出したのだ。
――・・・。
「わっ!!!!」
文字通り飛び起きた。
全身汗だくだ。
「ゆ、夢か・・・。」
『ピエロに自分から話しかけちゃいけない。』・『ピエロに自分から話しかけたから呪われたんだ。』
起きても、その二つの言葉を、あの声と表情までしっかりと覚えている。
目が覚めてから、先ほどより的確な言い方をすると、声は高木渉さんの低いダミ声。表情は英語圏で言うと絵文字にある「Woozy Face」がまさにその表情だ。
急いでChatGPTとGoogleで検索してみたが、そのような話はなかった。
内容の意味はともかく、強く印象に残る夢だった。
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次回!第2部 第4章 第26話
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