第六章 再会の光と影、指輪の輝き
再び彼女と会った日のことを、今も鮮明に覚えている。
彼女は少し照れたように微笑みながら、こう言った。
「試用期間は昨日まで。今日からデビューです。初めての同伴なの」
その言葉の真偽など、私にとってはどうでもよかった。
ただ――その瞬間、自分が彼女の大切な節目に立ち会えているのだという事実が、心の底から嬉しかった。
彼女の髪は以前よりも伸び、先端には柔らかなカールがかかっていた。サイドには細やかな編み込みが施され、より洗練された美しさを醸し出していた。
その姿に、彼女が新しい環境に適応しようと努力し、また一段と輝こうとしていることを、私は言葉にせずとも理解した。
身にまとっていたのは、白を基調にブルーの花柄が散りばめられた清楚なワンピース。
その可憐な衣装は、彼女の持つ可愛らしさを一層際立たせていた。
彼女から聞いた話では、ドレスはすべて店で用意された借り物だという。
ならば――私は遊び心を込めて、以降、毎回のように色をリクエストしていくことになる。
赤、黄色、ピンク…。
その度に彼女は新たな色をまとい、まるで着せ替え人形のように違う表情を見せてくれた。
彼女自身はモノトーンの黒を好んでいることを、以前から私は知っていたが、艶やかな色合いのドレスは、彼女の新しい魅力を引き出していた。
そして、その華やかな髪型も衣装も、一瞬で吹き飛ぶほどの衝撃が私を襲った。
彼女の左手――中指に光る指輪。
視界に入った途端、世界の色が反転したように胸が冷たくなり、同時に抑えようのない痛みが走った。
彼女が何を思ってその指輪を選んだのか、私には分からない。
ただ――問いただすことはしなかった。
「今日は、触れないでおこう」
心の中でそう繰り返し、自分を必死に抑え込んだ。
彼女の笑顔を壊すことだけは、したくなかったから。
そのおかげか、彼女の新たな門出で彼女自身も感極まったのか、その日の見送りでは、彼女の顔を触り、彼女と熱い抱擁を交わした。
抱擁の後、私は彼女へメールした。
「俺のことが好きか?」
彼女は、「今はありがとうございますでお応えしておきます。このお仕事をしているうちは。
誰か一人を好きになるということは他のお客さまに対して全て嘘をつくことになるので、そのスタンスです。そのスタンスが平和なんです」と。
ホステスのテンプレートのような答えとも思えたが、それでも彼女の一文字一文字が、私には血の通った本音に見えた。
私は純粋に彼女の言葉のまま受け止めることにした。彼女のプロフェッショナルスタンス、仕事を尊重しようと。その言葉を、私は信じようとした。まだ、この時の私は。




