表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/271

王都:半悪魔でした!

主人公とダンジョンと半悪魔


ブックマーク・評価して下さった方ありがとうございます!

次話投稿は一週間以内です!

 ダンジョンに潜ってどれくらいの時間が経っただろう。

 化粧けばけばのおばさんを追って入ったはいいが、かなりの時間歩き回り、どんどん下層へと降りていくお陰で、いったいここが何階層なのかももう忘れてしまった。


 途中にボス部屋と呼ばれるものも通り、何の苦も感じることなくさっさと行けた時は安心感と共に、もうちょっと苦戦して異世界ライフを楽しみたかったような気もして、ちょっと残念な思いもした。


 ・・・やっぱり、ゴブリンとコボルドを倒すのは気が引けるが、不思議と仲間じゃないと思えば躊躇なく倒せるようになった。まぁ、可愛いげもないし、皆とは違うしね。


 はぁ、もっと満喫しながらダンジョンを探索して、宝箱だやったー・・・みたいなのがしたかった。


 小さなモミジの背に揺られながら、ゆっくりとおばさんへと付いていく。


「・・・魔族って凄いわね」

「私も一匹欲しい」


 後ろで何かボソボソと呟いているが、自分には聞こえない。でも、どこかモミジの得意気な顔を見れば、悪口では無さそうだ。


 自分達に気づかずに横を通り過ぎていく魔物達、何処か不審気に辺りをキョロキョロと見渡しているが、ディーレさんの魔法を看破できないで、そのまま通り過ぎていく。


 おばさんに向かっていった魔物は、言わずもがな鞭で打ちのめされて息絶えている。


「そういえば、その・・・二人はなんで彼処にいるんだ?」


 小声でカテナとハイネに問う。

 普通なら遠慮して聞かないのがいいのだろうが、今の俺に遠慮なんて言う文字はない。


 二人は顔を見合わせて、うーんと考え込む。


「私は・・・行くところがなかったからよ」


 ハイネさんはそう言うと、黙り込んでしまった。

 やはり『ルティ』と偽名を名乗っているくらいだし、出生については語れないだろう。

 それに、『半竜族』っていう種族だし、やっぱり人間の世界で生きていくのが難しいのだろう。

 もしかしたら昔にかなり手酷い差別を受けたのかも知れない。あまり追求しない方がいいのだろう。


「私は親に捨てられて、彷徨っている所を暴漢に襲われました。そこを通り掛かった別の組織の者達が暴漢と戦闘、その際に私の魔法が暴走しまして、そこをまたまた偶然通りかかった暴漢・・・ではなく、オィエトさんに拾って貰いました」


 今オィエトさんの事、暴漢って言ったよね!

 ・・・まぁ、かなりハードな人生を歩んできたようだ。魔法は自然的に発生した物で、いわばカテナさんは天才であったそうだ。

 素質があり、感情の昂りが爆発して魔法が発生した・・・万に一人と言っていい才能の持ち主だそうだ。


 これなら、俺の人生も結構マシなほうじゃ・・・あ、いや、実際命を何度も失いかけてるし、どっこいどっこいか?


「ハードな人生だったんだなぁ」

「・・・私の話を聞いたのだから、貴方の出生も教えて」

「んー・・・俺はスライムで森に生まれて、何度も死に掛けて強くなって、後は知らない内に皆が付いて来ていた」

「今でもスライムってのが信じられないわ・・・」


 ハイネさんは呆れた様にはぁ、と溜め息を吐き前方で悠々と歩くおばさんに目を向ける。


 やはり相手からこちらが見えないとは言え、やはり直ぐ近くに尾行対象がいれば、気を張るのも無理はないだろう。


 しっかしそれにしてもかなり下層まで降りるもんだ。

 体感では30階層は下に潜っている筈で、その歩みはまだ止まることを知らない。


 それに、相当警戒心も強い。

 同じ場所を行ったり来たり、グルグル回ったりと、一見すれば意味もなくさまよっている様に見えるのだが・・・その実、無為な戦闘を避け、回避できない戦闘の場合は行うという感じだ。


 このダンジョンに入ったのが深夜、恐らくもう明け方近くにはなっているとは思う。


 さて………そうこうしている内に、またボス部屋へと辿り着く。

 おばさんは迷うことなくボス部屋の扉を開け放ち、中へと消えていく。

 ボス部屋の扉は岩壁で塞がれ、中では恐らく戦闘が繰り広げられているだろう。


「え?」


 しかし・・・フッと一瞬にして岩壁が消える。

 もうボスがやられたのか?


「・・・おかしい、早すぎるわ」

「三十階層の時よりも早い・・・。私も同感」


 やはり、おかしいと思ったのは俺だけじゃないらしい。

 流石にこの早さでボスを討伐するのは無理だ。俺とハルウ達がいたら可能かもしれないが、あのおばさん一人でこんな短時間で突破できる筈がない。


 であれば・・・中で何かが起きているのは間違いない。


 しかし、ここで尻込みしててもしょうがない。

 ゆっくりと扉を開こうとすると、モミジがキュッと裾を引っ張った。


「どうした?」

「さっきから身体がむずむずしてて・・・それが強まった気がするんです」


 そう言えばさっきから、モミジはソワソワと落ち着きのない様子だったけど、おばさんが持っていた『石』に反応してたんだよな?


 何かのマジックアイテムだとは思うんだけど・・・それが強まったってどう言うことだ?

 勘みたいなものが働いたのか、でもそれにしてはモミジの元気が無さすぎる。


 ・・・これは早く行って、石を壊した方がいいかもしれない。


「よし、慎重にいこうか」


 自分の中でうたた寝していたディーレさんを起こし、ゆっくりとボス部屋の扉を開いた。


 ギギギッと扉は開いてゆき、隙間から生暖かい風が頬を撫でる。扉を開ききると、中は異様な静けさに包まれ、どんよりとした空気が辺りを包んでいた。

 先程までとは全く違う空気が充満し、自分でさえ何処か遠くにいる様な気がしてならない。


 そして一番おかしな所は・・・ボスがいないのだ。

 辺りを見回してもボスが見当たらない。普通なら何処からともなく現れるが普通だが、ボス部屋に入って数十秒程、全く現れる気配がない。


 このパターンは・・・常套手段であれば、上に潜んでいるとかのパターンか?と上を見上げてみるが、なんにもない。


 入り口と出口も岩壁で塞がれておらず、ポッカリと下の階層に繋がる道が見て取れる。


 そこか不意打ちで何かが出てくるんじゃないかと警戒するが、何もいない。


『何もいないわね』

「変だよなぁ?」


 肩に体育座りしているディーレさんに語り掛ける。

 さっきから周囲掌握(ハイパーサーチ)も起動しているが、全く反応がない。

 カテナさんもハイネさんも、この異様な空気に不審がっていて、周りを油断なく警戒している。


 そして全員が次の階層へ続く階段へと辿り着き、その階段をじっと見下ろしている。


「行くしかないね」

「魔法の準備はしておくわ」


 階段を潜ると、さらにシンと静まり返っていた。


 そして


 周囲掌握に出ているのは二人の影、おばさんと・・・もう一人、誰かがいる。

 後ろにいる三人におばさんと誰かががいることを伝える。


 おばさんの他にも誰かがいることにカテナさんとハイネさんは驚き、大丈夫なのかと自分に視線を送る。

 モミジは相変わらずモジモジとしているが・・・これ以上近づけさせない方がいいだろう。


 俺はおばさんと誰かが話す通路へと向かい、壁にへばりついて・・・いや、壁に染み込んで、ゆっくりと近づいていく。


 やがて、おばさんの声が耳に届いた。


「ウフフ、さすが半端者だとしても『悪魔』なのねぇ」

「・・・・・・・・・」

「専有スキルの『支配ドミネート』の使い心地は最高よぉん」

「・・・・・・・・・」

「まぁ、当の使い手の本人が碌に扱えず、剰え私達に利用されているのだから笑い者だけれどね」


 ちらりと・・・ヌラリとおばさんの方に目を向ける。

 そこには幼い少年?とけばけばおばさんの二人が向かい合っている姿が伺える。二人は一見喋っている風に見えるけど、少年の方は全く会話を交わしておらず、心ここに在らずといった感じで虚ろな表情をおばさんに向けている。


 少年は小さく、決して健康的な体ではない。碌に食べていないのかガリガリで、頬も少しばかり痩けていて子供がしていいような表情ではない・・・。


 おばさんは子供の顎に指を這わせ、何事かを一言呟いた。


「二十階層に準備はできた。あとはここいらの魔物を一斉に導入できれば・・・ウフフ、楽しいことになりそうねぇ。それじゃあ・・・『おやりなさい』」

「あ・・・う・・・あ」


 そこで初めて少年が、おばさんに何事かを喋ろうとした・・・いや、あれは呻いたと言った方がいいのだろう。

 少年は苦しそうにもがきはじめ、やがて立ったままピクリとも動かなくなる。


 そして・・・


「スキル:『支配』」


 その言葉が紡がれた。


 一瞬自分の身体の中を何かが激しく這いずり回った様な感覚に襲われ、なんとも言えない不快さが冷や汗と共に流れ落ちる。

 直ぐに嫌な感じは治まり、詰まった息をハァと勢いよく吐き出す。


 ・・・だが、俺みたいにこうやって耐えられる者もいるだろう。いや、正直に言えば、おれでさえ、何処かに『持っていかれそう』になったのだ。


 そしてここにはいる魔物は・・・俺だけじゃない。


「ヒヤアアアアアァァァァア!!!!!」


 突如俺の背後から叫び声が聞こえる。

 カテナさんでもハイネさんでもないその声は・・・間違いなくモミジのものだ。


 小さな身体を抱えるようにして、フルフルと震えて歯をカチカチと打ち鳴らしている。

 魔法で気配を完全に殺してはいても、大きく鳴った音や声を完全に消すことはできず、おばさんはバッと此方へと振り返った。


 ・・・完全にばれてしまった。


 カテナさんやハイネさんは、急に叫んだモミジに驚き、頭を抱えて踞ったモミジに駆け寄っている。

 成る程、二人に影響がないってことは、やっぱりあれは魔物にしか影響のないスキルなのだろう。


「あらぁ? まさか私に感付かれず後をつけるなんてぇ・・・誰かしらん? まぁ、大方魔族でしょうけどね」


 おばさんは、こちらの方へ目を凝らしながら、冷たく鋭い殺気をこれでもかと放つ。

 腰に装備された双鞭に手を掛け、臨戦態勢へと入る。


 ばれてしまったら仕方がないと、ニュルリと壁から姿を現す。

 そしてここで気付く・・・あ、俺ばれてないんだから姿現す必要なかったな。


 おばさんは壁から這い出た俺を驚いた様子で見つめ、双鞭を構えてこちらの出方を伺っている。


 しかし・・・相変わらず、少年には生気がなくこちらを見ている様子もない。

 少年は何らかの方法で操られていると見ていいだろう。


「スライム? ふーん、スライムの魔族なんて見たことないわねん。ウフフ、そ・れ・にまさかあんた達もいるとは思わなかったわぁ」


 後ろから姿を見せたハイネさんやカテナさんの姿を見るや、おばさんの口角は吊り上がり、握る双鞭に力が入る。


 モミジは何とか妙なスキルから抜け出せた様で、天狼の姿となりおばさんと少年を今にも飛び掛からんと毛を逆立たせている。

 しかし、未だに自分を襲ったスキルが分からず、襲い掛かれないでいるようだ。


 えっと、ドミ・・・何だっけ?


 "支配(ドミネート):悪魔の占有スキル。対象を支配し、己の下僕とする"

 "悪魔:絶滅した種族。魔族の根元とも言われ、魔法に秀で、恐れられた種族。大戦により、絶滅した"


 お久し振りナビちゃん。まだいたのね。

 えっと・・・悪魔かぁ。んじゃあれは・・・




 ???:半悪魔 (LV3)

 状態異常:支配


 称号

 飲み込まれし者


 HP:43

 MP:124

 STR:24

 VIT:71

 AGL:51

 MGI:141

 LUC:2


 LV上限:75


 専有スキル:支配(ドミネート)


 魔法:なし




 あ、あら?

 予想以上に弱い?

 それに半悪魔ってことは・・・半豚人みたいに人間と悪魔が混ざっているみたいなものなのかな?


 これなら、あのおばさんさえ倒せれば、後は少年を捕獲すればいい・・・ハッ!?


 自分はとんでもないミスを冒してしまった。

 やってはならない、絶対にやらないと心に決めていた。あれをやってしまったのだ。


「・・・フラグ、立っちゃった?」


 恐る恐る少年へと目を向けると、苦痛に歪んだ顔から覗く瞳は赤々と輝き、口元からはカチカチと歯を打ち鳴らす音が響き渡る。

 そして・・・その背後から何体もの魔物がゆらりと姿を現したのだ。


 見事にフラグを立てることに成功したらしい。

 チクショオオオオオォォォォォ!!!


「・・・あの少年は俺が対処します。だから、カテナさん、ハイネさん、モミジは女を捕らえて欲しい」

「貴方一人であの魔物の数をどうにかできるの?」

「うーん、まぁたぶん」

「いいえ。私達と共闘した方がいい。いざとなれば、土魔法で援護もできる」


 いや・・・できることならそうしたいんですけど、フラグ建築したの俺なんで、その、物凄く申し訳ないんですよ。だから、責任はとらせてください・・・。


 フルフルと首を振り、フラグを建築してしまったことを反省しながら、ふたりへと視線を向ける。


「ダメ・・・。アルジは周りに誰かがいると本気出せない」

「あれで全力じゃないの?」

「はぁ・・・助けられた時から薄々と勘付いてはいたけど、やっぱり只者じゃないわね」


 え、あ、いや、常に全力でやってるつもりだけど?


 でも森の時みたいに命に関わる事って殆どないし、最近は油断しているつもりはないけど、自分が強くなっていることを実感してきたから少しは気が抜けていたかもしれないけど・・・。

 自分の中では常に全力投球です。


「・・・流石に四人相手はきついわぁん。じゃ、任せたわよ」


 おばさんはそう告げると、ジリジリと後ろに下がり、バッと後ろに振り返って逃げる。

 道は二手に分かれており、おばさんは自分のたっていた一から一番近い通路へと駆けていく。


「逃がさない!!」


 モミジはそれに続くように走り出す。


 すると、少年の後ろで目を爛々と輝かせていた魔物達が一斉に飛び出し、モミジへと遅い掛かった。

 口から大きな牙を生やした猪の魔物や、二足歩行で走る蛙の様な魔物がモミジへと殺到する。


 咄嗟にディーレさんに魔力を送り、魔法を編み込もうとするが、モミジはそれをスルスルと掻い潜り、すれ違いざまの一撃で殆どの魔物を吹き飛ばしてしまった。


 それでも尚続こうとする魔物達に、モミジから遅れて走り出したハイネさんとカテナさんが接近する。


 ハイネさんは魔物を捉えると、走った勢いそのままに蹴りを繰り出し、後続の魔物を巻き込んで壁へと吹き飛ばす。

 そして、壁へと吹き飛び、そこから弾き返され地面に伏すかと思われた、魔物達は壁から突き出た石の槍に体を貫かれ一瞬で絶命する。


 ハイネさんとカテナさんは通路へとたどり着き、おばさんとモミジの後を追っていく。

 少年の背後からは魔物達が止まる事を知らずに溢れ出し、またカテナさんやハイネさんの後を追おうとする。


 しかし、それは地面から発射された、小さな水の弾丸によって阻止される。

 水の弾丸に穿たれた魔物達は、当然の如く絶命し、難を逃れた魔物達は一斉にこちらに視線を向ける。


 うん。勿論発射したのは俺だ。

 丁度練った魔力もあったから、発射してみたけど・・・やっぱりディーレさんは凄い。


「えっと、言葉通じるかい?」

「・・・う・・・あ」

「できれば、そのぉ、降伏してもらいたいんだけど?」

「あ・・・う・・・アアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」


 またも自分の中を何かが這い回るような感覚に襲われる。

 多分これが『支配ドミネート』ってスキルなんだろう。対象を己の下僕にしてしまうスキルなんだっけ?


 ゲーム知識だけど、恐らくレベルによって支配される・されないっていうのがあるんだろう。

 モミジはギリギリ支配されずに済んだけど、もしモミジが支配されていたら・・・厄介なことになってただろうな。


 ・・・? そういえば、さっきは気付かなかったけどこの子状態異常に掛かっている。

 よく見てみれば、それは自分のスキル『支配』の状態異常だ・・・どうなってんだ?


 すると、ディーレさんが妖精の姿となり肩にヒョイと乗っかってくる。

 何かを考えている様子で、俺に告げる。


「・・・ねぇ」

「ん、どうしたのディーレさん?」

「多分あのおばさんが持っていたのは、『吸魔石』じゃないかしら? 魔力の高い所で長い年月放置されて、変異した鉱石ね。私が住んでいた泉の水底にあったのを思い出したわ」

「それが何か関係しているってこと?」

「そうね。吸魔石には、質の良い物だと魔法を吸収して、何回か行使できる物があるの。魔法を使われた際のカウンターとしても使えるし、もしかしたらこの子の魔法を吸魔石で吸収して、あのおばさんが使っているんじゃないかしら?」


 ・・・成る程。

 それなら、合点がいくな。俺やモミジがおばさんの持っていた石に妙に惹かれた意味がわかった。

 おばさんの持っていた石には支配のスキルが吸収されていて、それに自然と俺達が惹かれていた・・・そして、現状この半悪魔の少年も操られていると。


 しかも、吸魔石・・・中に入っている魔法が使えなくなったら、外から補給もできるそうだ。

 つまり、支配下にある少年に命令して、もう一度『支配』のスキルを行使させれば、吸魔石をまっさらな状態にできる・・・と。

 最悪な無限ループだ。


「支配を解くには・・・まぁ、定番なら、気絶させればいいんだろうなぁ」


 少年の背後から、魔物の気配が豪風の様に押し寄せる。


「ディーレさん・・・んじゃ、行きますか」

「いつでもいいわよ」


 少年の背後から無数の魔物達が押し寄せる。

 見た事のない魔物だが、なんとなく自分よりは遥かに弱いと感じ取れる。


 巨大な蜂の姿をした魔物が空中を不規則な軌道で移動しながらこちらへと迫り来る。

 耳障りなは音を響かせ、腹部から巨大な針を覗かす蜂の魔物は、肉眼で捉えることが難しいくらいに素早い動きで自分をかく乱する。


 肉眼で捉えることができず、狙って攻撃できないのなら・・・無数の攻撃で黙らしてやればいい。


 手を前に突き出して、迫り来る蜂達へと向ける。

 その瞬間、腕が不定形のそれへと変わり、枝分かれしたかと思うと、自分の前方を通路を埋め尽くす、鋭く尖った青い針へと変化する。


「専有スキル:刺し貫く蒼き槍 ver2!!!」


 不規則で素早い動きを撮っていた蜂達も、通路を埋め尽くさんばかりに突き出されたこれに対処すらできず刺し貫かれ、針に突き刺さったまま静止する。


 針は徐々に自分の腕へと戻って行き、針だったものは元の完全な腕へと戻る。


 後には蜂達の死骸が散乱し、後はダンジョンに吸収されるだろう。


 次に襲い掛かってきたのは、片手に粗雑に作られた石の剣を携えた土の人形の魔物、さっきの蜂の様に俊敏さはないが・・・。


 地面に落ちていた石を思いっきり投げつけてみる。

 すると、土人形に当たり・・・石が砕け散る。成る程、恐ろしく硬いようだ。


「精霊魔法:水の重圧アクアプレス


 土人形達の頭上に、巨大な水の壁が出来上がる。

 それは徐々に下降していき、土人形達に覆い被さる様にして下へ下へと沈んでいく。土人形達は必死にそれを除けようと短剣や手を突き出すが、水の中に出入りするだけで、全く意味がない。

 触れば普通の水、されど伸し掛ってくる水はまるで万力の様に硬い。


 土人形達は為す術なく、水の壁によって地面へと押し潰され、後には土くれと短剣だけが残った。


 さて、お次はと前を見るが、その場から勢いよく飛び退ずさ

 その瞬間、何匹もの黒い影が今しがた自分の居た場所にナイフを突き立てている姿があった。


 黒い影のような真っ黒のコゴブリン・・・さしずめアサシンゴブリンとでも言おうか?


 アサシンゴブリンはそのまま素早い動きで俺へと詰める。

 短剣を首筋へ突き刺そうと駆け寄るが、そこは既に俺の間合い。


 身を屈め、ナイフを突き出したままのアサシンゴブリンの腹へと肘鉄を繰り出し、くの字に折れ曲がったアサシンゴブリンをそのまま蹴り上げる。


 空中へと舞ったアサシンゴブリンの足を片手でつかみ、思いっきり投げ飛ばす。

 後続のアサシンゴブリン達は難なくそれを避けるが・・・一瞬視界が途切れたのだ。


 そしてアサシンゴブリンが目指していた場所に俺はおらず、地面に染み込んで背後に回り込み、お返しとばかりに首元へ手刀を叩き込む。それだけでアサシンゴブリンの頭と胴体は泣き別れとなり、絶命する。スプラッタは勘弁して欲しいんだけどなぁ・・・。


「ウウウゥゥゥゥウゥアアアアアアアァアァァァァァァア!!!!!」


 少年が雄叫びを上げると、後方で待機していた無数の魔物達の瞳に危険な光が宿る。

 少年の身体からは赤黒いオーラが滲み出し、少年の瞳が充血し始める。


 一瞬にして理性が崩壊した魔物達は、自分達の命を省みること無く、こちらへとと突貫する。

 つまずいて転んだ、魔物に見向きもせず、それを踏みつけて前へ前へ走る。


「あの子、自分の力を真面に制御できないみたいね」

「暴走してるってこと?」

「えぇ」


 この世界・・・狂走だの暴走だのと多くない? 勘弁して欲しいんだけど・・・。


 通路を埋め尽くさんばかりに迫る魔物達を前に、自分の心へと意識を集中させる。

 そして次に目を開いた時には、己の体が光を放つ金色の姿へと変わっていることを確認する。


 これが元で『金色』なんていう大層な二つ名が付いたんだよなぁ。

 ・・・なんだろう、なんか寒気がするんだけど気のせいかな?


 片手振り上げ、地面を力の限り殴りつける。

 ダンジョンが揺れ、前にいた魔物達の多数が足を取られ地面に倒れ伏した。


 初めて自分から魔物達の元へと駆け出す。


 魔物たちが犇めく空間へと足を踏み出し、その中にいた一体を殴りつける。

 それだけで衝撃波が辺りに広がり、周囲に群がっていた魔物達は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。


 難を逃れ、吹き飛ばされずに済んだ魔物達は、されど今の光景を目の当たりにしても引く事はせず、唯自分を殺そうと走り寄る。


「精霊魔法:水陣・流爪」


 巨大な水の魔法陣が形成され、その魔法陣の中からは水で形成された鋭い爪が浮き上がり、周囲にいた魔物達を切り刻んでいく。


 それを抜けてきた魔物達は、自分が直々に蹴り上げ、殴り飛ばし、着実に数を減らしていく。


「多いなぁ」


 それでも、一向に減った気がしない。

 魔物の死骸で山はどんどん高く築き上げられ・・・今になってはもう、ダンジョンに吸収される個体まで出始めたほどだ。


 何かの作業の様に永遠に迫る魔物を殴りつける。


「モミジ達は大丈夫かな・・・」

「今この階層にいる魔物は貴方に釘付けよ」

「こんなハーレムは嫌だ!!」

「最近は候補が増えてきたからお灸を吸える意味でもちょうどいいんじゃないかしら?」


 魔物に食べられるハーレムなんて、そんな異世界こっちから願い下げだ!!


 っと、ディーレさんが何故か少しへそを曲げていらっしゃる。

 ちょっとむくれている姿を見ているのも申し分ないが、今機嫌を損ねられると困る。


「ディーレさん可愛いよ!!」

「・・・もう、何度もそれで懐柔されると思ったら大間違いよ!!」


 せめて真っ赤になった顔を隠してから言おう。


 このままじゃ埓が明かないと、ディーレさんに魔力を注ぎ込む。


「精霊顕現:水霊怒る暴風の宴ディーレ・ヴィオエント


 ダンジョン内に発生した幾つもの竜巻が、通路に犇めいていた魔物達を一匹残らず貪り尽くして行く。

 それでも暴走した魔物達は自分の方へと走り寄る・・・その度に、竜巻へ吸い寄せられ、細切れにされていく。


 轟々と吹き荒れる竜巻は、魔物たちを巻き込んでは次第に勢力を増して行き、あ稲光までもを発生させる。

 それに触れたものは一瞬にして燃え上がり、次いで竜巻の刃で切り刻まれる事となった。


 そして、竜巻を放った本人である俺は、美しい精霊の姿になったディーレさんに背中へぴったりと張り付いて貰って、感涙にむせび泣きそうになっている。


 そして竜巻が収まると・・・そこには一匹たりとも魔物の姿はなかった。


 竜巻に巻き込まないようにした半悪魔の少年は、頭を抑え、地面に蹲っていた。


「あ・・・あ・・・アアアアアアアアアアアアァァァァァァl!!!」

「・・・まだあるのか」


 少年の体から滲み出していたオーラが、吹き荒れる。

 ダンジョン内に響き渡る少年の叫び声に、支配の呪詛が交じる。


 少年は一頻り叫ぶ・・・されど、少年の背後からは何も現れることはなかった。

 当然だ。魔法であれだけの魔物を殺したんだ。当分の間は魔物も出て来ないはずだ。


 今度はフラグを立てないように、少年へと駆け寄り首筋に手刀を叩き込む。


「アグッ!?」


 少年は一撃で意識を失い、倒れ伏した。


「・・・えっと、一応地上まで運んだほうがいいのかな?」

「好きにすればいいじゃない。でもそのままそこに置いていたら間違いなく他の魔物に食べられるわね」

「・・・選択肢はないと」


 俺は少年のもとへと歩み寄り、何とかして担ぎ上げる。

 周りに何もいないかを入念に確認して、その場を後に・・・しようとした時だった。


「へ?」


 ドーーーーーーーーーン!!!!!


 と、耳を劈く破砕音が耳に響き渡り、辺り一面が砂煙に覆われる。

 咄嗟に後ろへと跳躍して難を逃れたが・・・恐らくは自分がいた場所が崩落したのだろう。


 上からパラパラと石が落ちてきている。


 砂煙が晴れてから地上に戻ろうと思った次の瞬間。


 信じられない衝撃が体を襲う。

 鉄で思い切り殴らたような衝撃、体を走り抜ける痛み・・・そして壁に叩きつけられ担いでいた少年を落としてしまった。


 それよりも、今自分に起こったことがわからず、こみ上げる痛みと自分の体を伝う暖かい水に意識が集中してしまい、パニックを起こす。


 一体何がと上を見上げた・・・すると、それは姿を現したのだ。


 砂煙が晴れ、崩落した岩場から覗かせたのは・・・


「ゴーレム・・・?」


 巨大な岩でできたゴーレムだった。

主人公まさかのピンチ!?


※感想を送ってくださった方へ、返信・対応の方少々お待ちください。申し訳ございません・・・。


前話で多くのブックマーク、評価をして頂き本当に有難うございます!

宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ