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王都:王都騒動でした!

お、遅れましたぁ!!


ブックマーク本当にありがとうございます!


次話投稿は一週間以内です!

 我々は主命を受けて行動している。


 窮屈な人間の姿をしていなければならないのが、唯一の不満である。

 しかし、この姿で主と接していると、多く会話ができる事がつい最近になってわかった。

 天狼の姿でいると、主はあまり会話せず、こちらを撫で回してくるのだ・・・無論喜ばしい。


 主に褒められ、常に一番上の配下として居続ける事こそが至上の喜びであり、我々の存在意義である。

 此度の命令も主の為、誠心誠意尽くし、主に良き姿を見て貰おうと気合いを入れた。


 ・・・だというのに、何故、俺は人とエルフのメスに付いていかねばならんのだ。

 主は別件があり行動を共に出来ず、俺とナーヴィ、モミジはサテラとミリエラの後を、密かに追跡しなければならないのだ。


 不服ではあるが、お前達が"特別"だから頼むんだ、等と言われれば、やるしかないであろう。


 そして、我々がやっていることと言えば。


「デド商会について何か知らない?」

「あん? 嬢ちゃんら何者だ?」

「デド商会についてだけ聞きたいの」

「ハハハ! そんなに知りたけりゃ・・・俺の女になりな」


 細身の男が腰掛けていた石の階段から、ゆらりと立ち上がる。

 一見細身ではあるが、十分に戦い慣れしているだろう事は明白だ。暴力の気配が染み付いており、確かな力量を感じさせる。


 男は初めに、横に立つミリエラへと手を伸ばす。恐怖で萎縮するミリエラに変わり、サテラがその手を払い除ける。


 男はそのサテラの態度に目を細め、剣呑な気配を漂わせ、苛ついた表情でサテラを見下した。

 しかし、サテラはそれに動じた様子もなく、男の感情を逆撫でするかの様に、わざとらしく大きく溜め息を吐く。


 額に青筋を浮かべた男は、サテラへと殴り掛かった。


 ここまでは想定済みだ。

 暗がりから一気に飛び出し、サテラに殴り掛かった男へと迫る。


 そんな不意を突かれた一瞬の出来事に、男が対処できる筈もなく、先に男に辿り着いたモミジから、足を払われ宙に身を踊らせる。

 目を向く男の視界を影が覆う。未だに地に足がついていない男へと、接近していたナーヴィが顔面に軽く拳を落とす。

 軽くとは言っても、人間は脆い。軽く振るったはずの拳が先程は瀕死にまで追いやってしまった程だ・・・今回は上手く加減できている。


 そして地面に叩きつけられ、顔面を歪ませた男の元へとゆっくりを歩みを進める。


「ひひゃあああぁぁぁ!!」

「煩いな。我等が主命を邪魔するものに慈悲はない」

「言う! 言うから助けてくれ!!」

「・・・いや、信用ならない。まずは歯の一本を抜き取らせてもらうぞ」


 怯えて動けなくなった人間の口に指を入れ、歯の二本を無理矢理引き抜く。

 当然男は襲い来る激痛に暴れだし、涙と涎を周囲に撒き散らしながらギャーギャーと喚きたてる。


 ・・・この歯を抜く、という方法は普通に殴り蹴るよりも、拷問として有効な手段だと、オィエトとアルジから聞き及んでいる。

 なんでも、気を失わせない様に激痛を感じさせることが有効な手段なんだとか。

 そして、嘘の情報を吐かせないための念押しを忘れない。


「さぁ、話せ。次はないぞ」

「ふぐぅふー! わ、わかった話す、話す!! 組織に小さいガキが来たんだ。そいつを使って何かするらしいが、それ以上は知らねぇ! 本当だ!!」

「ふむ・・・それでは次は四本、行くぞ」

「な!?」


 瞬時に指を入れ、四本の歯を強引に抜き取る。

 これもまた念押しだ。相手が嘘をついてるかついてないかはわからない。だから、二回目を行使するらしい。


 男は先程よりも強烈な痛みに襲われ、けたたましい叫び声を上げる。


 抜いた歯をそこら辺に捨て、汚れた手をどうしてやろうかとぷらぷらと振る。


「で、どうなんだ? 次は・・・全部抜き取ってみようと思うがどうだ?」

「うぐぅぅぅ、ひゃ、『氾濫』だ! 豊ひょうのダンじょっンを氾濫させるんだ!!」

「・・・ふん。で、方法は?」

「そ、そこまでは」


 俺が身動ぎすると、男は顔面を蒼白にさせながら、ヒィィと後ろに下がる。


「そ、そそそのガキを使って何かしゅるってのはひいた!! 本当にそれひゃけだ!! も、もうこれ以上ぅわ勘弁してぐれ」


 もう一度抜き取ろうかと手を突き出すが、後ろから服を引かれそちらに目をやる。

 そこにはどこかげんなりとしたサテラの姿があった。


「もういいわ。気配で何となく判る。そいつはそれ以上なにも知らない」

「ふむ」

「後、ミリエラが泡を吹いて倒れちゃったから手伝って」


 この人間は正直に言えば気にくわない。

 しかし、こと戦闘やそれに通じる勘等に関しては飛び抜けていて、信用にはあたいする。アルジと対等に話し合う等、不躾な人間ではあるが、アルジからの信頼も厚い・・・だから、我々からとやかく言うことはできない。


「わかった」


 自分がどうなるのかと、ビクビクしながら話の行く末を見守っていた男に、サテラは鞘に入れたままの剣を男の首元に振るい、意識を飛ばす。


 ハンラン?という物がいったい何なのか、俺は知らない。

 しかし、この人間は知っている様で、男の言葉を聞いてからは深刻な表情を湛え、額からは汗が滲み出している。


「氾濫・・・言っていた事が私の知っている氾濫なら、とんでもないことになるわ。でも人為的に起こせるものかしら? ともかく、一人でどうこうできるものじゃないことだけは確かね」

「・・・里から助力を呼ぶのか呼ぶのか?」

「いいえ、それだと悪目立ちするわ。今、里にいるエルフや魔族達の存在を知られるのは信用のある人だけにしたい。それに、あの程度の人間に事が伝わっていると言う事は、決行はもうすぐの筈よ」


 成る程、事は急を要するらしい。

 しかし・・・アルジに伝えようにも、別れて行動してしまった為に連絡は取れない。

 かと言って、アルジを我々から奪い取ったあの人間に、助力を乞うのは拒否する。


「・・・オィエトは信用できない。裏でこれを助力している可能性だってあり得る。なら出来るだけ迷惑は掛けたくないのだけれど、この際仕方ないわ。アタライに情報を流しましょう」






「アタライはいる?」

「これは、サテリフィト様、今日はどのようなご用件で?」

「・・・鐘は鳴らされた」

「・・・委細承知致しました」


 屋敷の前で門の守衛を勤めていた老年の騎士が、自分に親しみをもって語りかけたが、事は急を要する。

 緊急事態を告げる隠語を用いて、老年の騎士へと一言告げると、雰囲気は一変する。


 守衛は急いで屋敷の中へと戻り、己の主人の元へと走る。


 ・・・少し経った頃、大きな鎧に身を包んだ人間が姿を現す。その老騎士は眉間に皺を寄せ、大きな幅広の剣を担いだままゆっくりとこちらへと歩み寄る。


「・・・入ってもよい。事情は応接室で聞こう」

「有難うございます」


 私はアタライに続き、長い敷地を抜け、屋敷の中へと入る。

 前に来た時と変わりなく豪華な部屋が出迎え、その中に自分達は通される。


 鎧を脱ぎ、傍に立て掛けたアタライは私の目を覗き込み、真剣な眼差しで私に問う。


「さて、聞こうか?『鐘は鳴らされた』と聞いたが、何があった?」

「スラムの方で怪しい動きをしている者がいてね。問い詰めてみたのだけど・・・近々豊穣のダンジョンを氾濫させようとしている者達がいる。幹部ではあるのでしょうが、あの程度に知れていると言うことは、決行はもうすぐだと思うわ」

「・・・・・・人の手で氾濫を起こす事などできるのか?かつて一度だけ、外から大量に魔物を連れ込んだ結果、氾濫が起きたと聞く。しかし、今はダンジョンの出入り口を警備が見張っているはずで、そんなものが入れるとは到底思えない。もしも強引に突破したとして、対策は直ぐに練られるはずであり、事が起きる前に鎮圧されるはずだ」

「それは私にもわからない・・・けれど、奴らは『子供を使って、氾濫を起こす』と答えたわ」


 アタライは私の言葉にしばし考え、何か思い至った様に机から一枚の紙を出す。

 そこには『スラム調査報告書』と記され、四枚ほどの紙の束となって紐で止められている。極秘書類であれば、封蝋がされている筈であるがそういったものはなく、紙の質も決していいものであるとは思えない。


 アタライに了承を取り、書類へと手を伸ばす。




 スラム調査報告書

 周辺の状況に何ら変わりなし。主要な人物による怪しい動きも見られない。

 最近になって騒がしくなっている。それもローブを着た集団が暴れていると言う噂だ。

 それの一つに娼館を襲ったという噂有り(尚信憑性はない)、その者達は娼婦達を逃がした。

 しかし、この手の話はスラムのどこにでも聞く物だ。

 報告、逃げ出した娼婦は何れも年端もいかない子供である。殆どは逃げ去ったそうだが、一人は捕らえられたもよう。

 引き続き調査を開始する・・・。




 簡単に言えばこんな所だ。

 ローブの集団・・・恐らくユガ達なのは間違いなく、スラムでの治安維持を行っていたというのは聞いている。

 その中でも、スラムの多くの組織が裏で贔屓にしている娼館を襲ったという事は聞いていた。逃げ出した女子供を西のスラムにて匿ったという事は聞いていたのだけど・・・一人が捕らえられた?


 初めは女子供を匿ったという事に不信感を覚え、オィエトを問いただしたものだが・・・まぁそれはもういい。


 たった一人が捕らえられた。という事に違和感を禁じ得ない。

 聞く所によれば、娼婦として逃げ出した者達は少なくない。本気で取り返そうとしていれば、もっと多くの者達を捕らえれたはずだ。幾ら西のスラムの圧力があったとは言え・・・たった一人しか捕らえる事ができないなんておかしい。


 そして、それは子供。


「それが引っ掛かってはいたのだがな、スラムの一事として処理していた・・・。まさかとは思うが、それが関係しているのかもしれんな」

「・・・私自身、信じられないとは思っているのですが、嫌な予感がします」


 アタライは腕を組み、私が齎した情報との関係性と信憑性を秤に掛けて考える。

 私もまずは状況を整理しようと、怪しい場所がないかを見つけ出そうと書類に目を凝らし、机の上に置かれたティーカップに手を伸ばし紅茶を啜る。


 ・・・すると、ドアが激しく叩かれ、アタライの了承も取らずに扉が開け放たれる。


「報告します! ハルウ様とナーヴィ様が・・・」


 そう。

 実はハルウとナーヴィには豊穣のダンジョンへと向かって行って貰っていた。情報を聞き出したのが昨日の事であり、あれから一日が経過している。

 その間、豊穣のダンジョンに異変がないかをハルウとナーヴィに探ってもらっていた。


 何かあれば私に直ぐに報告を伝える様にと言っていたのだが、恐らく戻ってきたのだろう。

 ミリエラには私が泊まっていた宿で待機して貰い、もしもハルウとナーヴィが帰ってきたらこの場所を伝えて欲しいと言っていた。ミリエラも戻ってきてはいるのだろう・・・


 しかし・・・


「どうした、騒がしいな」

「そ、それが、実は先程門前の警護を行っていたベイ様が腹痛で離席されておりまして・・・その、若い騎士が代わりに警護を行っておりまして・・・」


 部屋に駆け込んだ騎士は随分焦った様子で、私の姿を見つけてからは何かを言い淀んでいるようで、こちらをチラチラと見ては視線を逸らし言葉がどんどんと小さくなっていく。


 アタライと私は視線を交わし合い、騎士の言葉を促す。


「何があった? 話せ」

「は、はっ!! 警護の者がハルウ様達と面識がなく、急な用件があるというハルウ様方を通さず、結果若い騎士とハルウ様とナーヴィ様・・・そして『金色』様の戦闘が収拾がつかない程のレベルで行われております!!」


 口に含んでいた紅茶をすべて吐き出し、持っていた書類を床にばら撒いてしまう。

 顔を真っ青にさせ、面食らったアタライは初めこそわけがわからないという表情をしていたが、やがて状況を把握するといそいそと鎧に袖を通し始める。


 私も無言でそれに続こうとするが・・・ここに入る際に装備の一式はメイドに渡してしまっている。


 アタライが鎧に身を固めると、部屋へと駆け込んできた騎士についていく。

 私も出来うる限り身を小さくしながら、アタライのあとを付いていく。


 だけど・・・『金色』、まさかユガが帰ってきているなんて思いもしなかった。

 それにまさかこんなとんでもない事態を引き起こすなんてことも考えもつかなかった・・・やはりキョウイクが足りていなかったようだ。


 そして、敷地内へと歩みを進めると、その集団へと嫌でも目が行ってしまった。


 あろう事か止めに入った騎士達までもが、ハルウ達を討ち取らんと殺到し・・・投げ飛ばされ、蹴り倒され、殴り倒され、吹き飛ばされ・・・踏みつけられていた。


「ウェーイの仇!!!!!」

「フン!!」


 誰かの名前を叫んでハルウへと突貫する騎士は、しかし、身を屈めて肘鉄を叩き込んだハルウに吹き飛ばされ、地に伏した。

 すると、今まで騒ぎを止めようとしていた騎士達の瞳に怒りが宿り、参戦する・・・最悪な無限ループだ。


「久々に手応えのある奴と戦えて嬉しいぞ」


 ハルウはそう言うや否や、拳を振り上げて果敢に騎士たちの中へと突進する。空中には何人もの騎士達が舞い上がり、一気に何人もの騎士達が戦闘不能となる。

 ・・・若く、そして力量のある騎士達が遠征に出ているからこそ起こってしまった惨劇がそこに広がっていた。


 そして・・・何よりも呆気に取られたのが、ナーヴィの背中に佇んでいる一人の影・・・金色の髪を靡かせ、灰色のローブを身に纏い、目をグルグル回しながら、笑いながら魔法を連射している・・・『ミリエラ』の姿だった。

 完全に、パニックになっている。


金色って・・・まさかとは思うがミリエラの事じゃないよね?


「金色を打倒せぇ!!」

「「「おぅ!!!」」」


・・・最悪の予想は的中した。


 アタライは、尚もこの騒動を止めようとしている騎士を引き止め、騒動の発端を聞き出している。


「どうやら、こちらにも非があるらしいな・・・それにしても、あの者達は一体何者だ。それにあれはどう見てもウルフなのだがな? それに背に乗っているのはミリエラだろう? どうなっているのだ」

「・・・言い返す言葉が見つかりません」

「・・・フハハハハハハ、面白い!!! 今回はこちらにも非が有り、あ奴にも非があるのだろう。ならば我との一騎打ち、見事に勝利してみるが良い。勝者こそ正義だ!!」


 アタライはブロードソードを片手にハルウへと突貫する。

 ハルウは騎士たちの間を猛スピードで突進するアタライへと、咄嗟に掌打を繰り出したハルウの一撃が直撃する。


 しかし、重たい全身鎧に身を包まれたアタライの勢いは衰えることなく、ハルウに刀身が直撃する。


 ハルウは不意を突かれた攻撃に反応が遅れ、当身によって空中へ身を踊らせてしまった体を制御できず、身体を硬い地面へと強く打ち付ける。


 グゥッと呻いたハルウはじめんに叩きつけられた身体に鞭打ち、跳ね起きるとアタライに威嚇の唸り声を上げる。


「来るがいい」


 ハルウの身体が紫炎に包まれたかと思うと、そこには紫色のメッシュが走った狼の姿があった。今まで戦っていた騎士との雰囲気の違いに気が付いたハルウは油断なく、剣を構えるアタライを注視する。


 静寂が戦場を支配する。

 二人は円を描くように互いの位置を調整する・・・しかし、距離は少しづつ近付いて行き、遂にふたりの間合いにお互いが収まる。


 アタライが剣を振り上げ、ハルウへと突貫する。

 両手で構えられた剣を横薙ぎに一閃すると、ハルウは一瞬にしてアタライの視界から消え失せ、横合いから鋭い爪で襲い掛かる。

 しかし、アタライは両手で振るった剣から片手を離し、横合いに飛び込んできたハルウへと裏拳を放つ。


「アマイ」

「ムッ!?」


 誰もがアタライの攻撃がヒットするかと思われた直後、ハルウは急静止し、下から上に向かって後ろ足で飛び蹴りを放つ。

 アタライもそれに気がついて、身を捻り込んではいたが躱しきれず鎧に重い蹴りが突き刺さる。


 アタライは二歩後退したが、それでも果敢にハルウへと接近し、ブロードソードと体術を駆使しハルウへとダメージを与えていく。反面、ハルウからのダメージも相当食らっているはずだ。

 しかし、ハルウとは違い鎧を着込んでいる為、ダメージをかなり遮断していて、ダメージレースは恐らくアタライが勝つだろう。


 そして一際大きな金属音が響き、ブロードソードとハルウの爪がギリギリと火花を散らす。

 ハルウとアタライは同時にお互いの武器を払い除け、後ろへと跳躍する。


「最後としよう。小僧」

「・・・ふん。来い、デカ物」


 アタライの体から赤いオーラが立ち上り、その身体からは歴戦の闘気に満ち溢れ、鎧がミシミシと唸りを上げ始める。地面はビシビシとひび割れ、ハルウへと闘気が襲い掛かる


 一方のハルウからは全くと言っていい程何も感じられず、しかし、アタライの放つ闘気を不自然なまでに涼しい顔をして受け流している。


 そして、強い風が吹いたその一瞬、アタライがハルウへ一気に接近する。

 じっと見ていた私でさえ、見失った程の速さでハルウへと攻撃を仕掛け、ブロードソードの風を切る音が轟音となって辺りにこだまする。


 しかし、ハルウはそれを避けた。

 風と一体化するかのような流麗な動きで避ける。


 続くアタライの攻撃を二度三度、とゆらゆらと揺れるように避ける。


 そして、一瞬の内にハルウはアタライの懐へと潜り込み、アタライの腕を掴む。


「秘技:一本背負い」


 ふわりとアタライの体が浮き上がる。

 まるで軽い羽衣を掲げるかの様に、重さを感じさせない浮遊・・・とても全身鎧に身を包んだ巨漢が宙を舞っているとは思えない。


 しかし、それも束の間、自重と遠心力を利用し、一気に地面に振り下ろされる。


 ドゴンと地面が割れ砕け、地面へとめり込んだアタライは尚も起き上がり追撃しようと試みる。

 が、トンと首元に手を置かれ、アタライはハルウにじっと目を見つめられる。


 両者は暫くの間硬直し、ニヤリと笑うと互いに立ち上がり、握手を交わす。


「小僧、後で訓練に参加してもらう。やるじゃないか」

「ふん。人間も捨てたものじゃないな。いいだろう」


 呆気にとられる騎士達の中から、一つ拍手が起きる。

 すると、ハッと意識を取り戻した騎士達もそれに続いて訳も分からず、拍手を始める。


 ・・・取り敢えず、後で二人共説教だ。





「・・・という訳だ」

「・・・それは本当か? それ程の案件、見間違いでしたではすまされないぞ」

「まずいわね。早く行動を起こさないと、手遅れになる」


 会議室は沈黙に包まれる。

 そこにはアタライと私、ハルウ、ナーヴィ、ミリエラ、そしてヴォルドス家騎士長の姿がある。

 皆一様にハルウへと視線を向け、ハルウから齎された一報に顔を顰め、どうしたものかと途方にくれていた。


 ハルウがダンジョンから持ち帰った情報は一つ・・・大量の魔物が集結し、既に氾濫を起こしているとの事だ。

 その中にはゴブリンやコボルドの下位種だけでなく、レッドオーガやサイクロプス等の上位種の危険な魔物もいたらしい。


 何よりもその中に『龍』の存在もあるらしいのだ。

 魔物の中でも最上位に位置する最強の種族・・・その種類は多岐に渡るも『龍』と呼ばれる種族に弱い者などいない。


 ハルウ、ナーヴィに聞いた特徴では恐らくは下位の龍・・・それでもA-相当力量を有するであろう『地龍』だろう。

 これが『亜龍』のワイバーンやドラグモスなら良かったのだけど、純粋な『龍』であれば、その脅威は跳ね上がる。


「これが漏れたら、間違いなくパニックが起きるな」

「私達だけでどうにかして」

「・・・いや、まずいな、レェベンの騎士達が『豊穣のダンジョン』へ遠征に出ている。見つかるのも時間の問題だ。それに、お前達だけで全てを相手取れるとは思えん。そして今回の氾濫は異常事態だ。何か不規則な事態が起きるかもしれん」


 ・・・完全に詰んでいる。


 恐らく直ぐにでも冒険者ギルドから緊急依頼が発布されるだろう。

 王都騎士を巻き込んだ魔物と人間の総力戦になることは間違いない。それに、帝都遠征によって、現在の王都の騎士では氾濫に対抗でうきるほどの戦力きしを有していない。早馬によって伝えれたとして、戻ってくるのは・・・あの王国騎士長であれば二日、全ての騎士達が戻ってくる時間は約四日程だろう。


 その間、もし地龍の存在が浮き彫りとなれば間違いなく士気は最悪になり、魔物の軍勢に押し流される事は間違いない。

 もし地龍が現れでもすれば・・・どうしようもできないだろう。


「恐らくレェベンは地龍の存在を初めから告げる様な事はしないだろう。であれば、地龍が姿を現した時は自分らで何とかしようとでも考えるであろうな」

「・・・兄様でも地龍には勝てない。それに地龍に怯える冒険者に、多方面から襲い掛かる魔物・・・瓦解して乱戦になるのは目に見えています」


 そうならない為には、どうにかして士気を上げる必要がある。

 報酬額を破格にすれば最初は士気も上がるだろう・・・しかし、己の命と報酬を秤に掛け、地龍の存在が知れ渡れば、間違いなくどん底まで低下するだろう。


 そして・・・もしも、万に一つそれを退けたとしても、冒険者達や街の住人は騎士の存在を決して良くは思わないだろう。

 隠していたのではないか、という猜疑心から始まり・・・やがて追及する者は答えに行き付き、騎士の名声は落ちる。


 ・・・はぁ、本当に詰んでいる。


「・・・」

「・・・」


 アタライも私も頭を悩ませていると、そこに一人歩みを進める者がいた。


「欲を刺激すればいいのだろう?」


 ハルウが私にそう告げる。

 間違いではない。こういった命を掛ける戦闘にあって、対価として得られる報酬という欲を湧き立たせる物は唯一士気を上げれるものだ。


 しかし、どんな報酬を用意したとしても、己の命と対等な物など無く、圧倒的な恐怖や絶望の前では報酬等無いに等しい。


「人間が何を欲しているのか等は知らん。だが、我々はアルジの悲しむ顔を見たくはない。しかし、喜び褒めて、可愛がって頂ける・・・それだけで、我々は命を投げ打ってでも戦える」


 ・・・えっと、よくわからない。


「えっと・・・つまり?」

「それだけだ・・・」

「?」


 私はハルウの言っていることが全くわからない。

 ハルウはそれだけ言うと元の場所まで戻って、また目を閉じてジッとしてしまう


「なるほどな」

「え? アタライはわかったの?」

「男というものは守る者がなければ命を掛けて戦えない者がいる。他にも、見栄、意地、プライドそういった物が士気を左右する事もある」

「と、いうと?」

「・・・『英雄は色を好む』という事だ」


 ・・・なる程。つまりは可愛い女を報酬にするということか。


 私は傍に立て掛けていた剣を手に取り、ゆっくりと引き抜いて、笑顔を絶やさずに構える。


「何も女を与えるといっているわけではない・・・。戦場に姫がいれば、それに見栄を張ろうと男は奮起するという事だ」


 あぁそういう事。

 つまり、可愛い女を戦場に立たせて、それを守らせために戦うと・・・騎士道なんて欠片もないやり方だ。


 しかし、この際手段を選んではいられない。


「では・・・私が?」

「「「可愛いのか?」」」


 私は無言で剣を振るう。

 ハルウとナーヴィは軽々と避け、アタライが篭手で受け止める。


 しかし、現実問題。

 守って上げたくなるような弱々しくて可憐で、命を掛けてまで守ってあげるという程のお姫様の様な絶世の美貌を持った者なんているわけが・・・。


「「「「・・・」」」」

「あぇ? あの、何?」


 ・・・・・・・・・いた。


「人と思えないくらいに可愛くて、守って上げたくなるような華奢な身体」

「・・・魔法の使い手であったな? 天使の微笑みで回復魔法を施せば、完璧な姫だな」


 そこで縮こまっていた、小さく可憐で美しい、エルフ(仮)のミリエラへとズイッと詰め寄る。


「力量も問題ないし・・・『金色』と間違えられていたわよね? ならこの際『金色』として地龍の対抗策としても講じれば」

「・・・それで問題ないだろう。装備は任せろ。家宝である『シルバーメイル』も貸し出そう。後はギルド長にも通達し、共に策を講じればいい」


 そして、私とアタライはミリエラを担ぎ上げる。


「い、いや」


 ミリエラは涙ぐみながら、叫ぶ。




「イヤアアアアアァァァァァ!!!!!」

ミリエラの憂鬱・サテラの戦いは次章閑話として投稿致します!!

次話、主人公無双パート!?


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!

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