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王都:門前払いでした!

サテラ視点の戦いです。

少年達には格好良く映っていたようですが・・・

『前話、内容を付け足しました』・・・伏線となっていますので是非お読みください!

次話投稿は一週間以内です!

 王都に清々しい蒼い空が広がる。

 言い伝えでは、昔この国を作り上げた大英雄は、無限に広がる空を見上げてこう告げたそうだ。

平穏と安寧の空だ(シール・デ・マルティアール)」と。

 古代語で紡がれたその言葉が、今のこの国『王都シルヴェルキア』となったそうだ。


 英雄が紡いだその言葉は、この国に今も平穏と安寧を降り注いでいる。

 その証拠に、王都の街に清涼な風が吹き抜け、万人の心を癒さんと頬を撫でる微風(そよかぜ)は民の笑顔を自然と引き出し、そして燦々と降り注ぐ太陽は、街に活気を呼び込み、町に平穏を、人々の生活に安寧を齎している


 王都の民はそんな平穏と安寧を噛み締め、幸せに日々を謳歌しているに違いない。


 しかし、私にだけはそれが訪れていない。

 頬を撫でる微風は、悪戯に心を囃し立てる厄介なものとなり、燦々と降り注ぐ太陽も、嫌な熱気を身体中に纏わせ、目的の場所までの足取りを重くする。


 ・・・言い訳はよそう。

 心を囃し立てているのは、私自身の軟弱な精神が原因だ。足取りを重くしているのもこれまた私の軟弱な精神が原因なのだ。

 勢い良く啖呵を切った結果がこれで、己の事であるのにも拘わらず、嘲りの念が芽生えてしまう。


 レェベンの訓練生に厳しい教練を施した挙げ句、兄様に大口を叩いて引き返すことができなくなった後にこれである。

 ・・・現在失踪中のユガが羨ましく感じる程に、自分は疲れているようだ。


 王都の活気ある街中をすり抜け、吟遊詩人の綺麗な歌声を聴き流し、商人の売り込みを丁重に断りながら歩みを進めていく。

 多くの人が行き交う王都の商人街を抜け、住宅街へと歩を進める。


 初めは簡素な住宅街が広がっているが、王城に近づくにつれて家屋は大きくなり、装飾が施された家が見え始める。

 それを抜けると、次に広がっているのは大きな邸宅だ。殆どの家に装飾やら凝った建築がされており、今まで見てきたどの家よりも華やかだ。


 住宅街は、王城に近づくにつれて平民・商家・貴族・騎士の順に家が構えられている。

 貴族の家は、何かの催事の時にしか使用されず、普段は任された領地の屋敷に住んでいるが、他の貴族に侮られないよう立派な居を構える必要がある。


 貴族街には平民は入ることができず、商家も限られたものしか入ることができない。騎士はそれに含まれず、私は入れるわけだ。


 そして、貴族の邸宅を抜けると、そこには王都が管理する騎士爵の邸宅が並んでいる。

 貴族の家の様な華やかさはなく、しかし、重厚な作りの邸宅はいかにも騎士という言葉が似合う造りとなっている。


 先にも言ったが、ここには平民は入ることを許されていない。

 つまりは、今現在私は一人なのだ・・・それが更に足を重くさせる原因である。


 そして、足を止める。


 目の前には、他の騎士爵の邸宅とは一回りほど大きさが違う屋敷が(そび)えている。

 邸宅と外界を隔つ大きな門には、見覚えのある紋章が大きく刻まれている。


 角が剣となったユニコーンが、前足を高々と上げ、空に向かって(いなな)いている紋章。

 間違いなく『レェベン』の紋章である。


 門の前で立ち止まり溜め息を吐いていると、怪しい人物(わたし)に気付いた門番が、剣の柄に手を当てて此方へと走り寄る。


 険しい顔で近付いてきた門番は、しかし、私の髪と瞳の色に気づき、 目を大きく見開いた。二年ではそれほど顔つきも変わっていないだろうし、気づくのも当然だ。それにローブを纏っておらず、顔は隠していないからね。

 門番は、まさかと私の顔をじっくりと見つめた後、慌てて頭を下げた。


「こ、これは失礼を」

「・・・今帰った、父に伝えて貰える?」

「ハッ!!」


 足早にその場を後にして屋敷の中へと駆けていった。

 無駄に広い屋敷なだけに行くのにも、戻るのにも時間が掛かるだろう。

 一人静かに待つことにする。


 周りの邸宅に耳を傾けてみるが、やはりどの家も静まり返っており、人の気配を感じさせない。

 ・・・と考えてみたものの、それを見越してこの時間にやって来たのである。

 レェベンに泥を塗った私が、今更帰ってきて、レェベンの屋敷の前で突っ立っている等と噂が流れれば、更に泥を塗ることになってしまうからだ。私自身も衆目に晒されたくはない。


 酒場で聞いた情報では、王都在中の騎士達は、遠方にて軍事演習を行っているらしい。早くても二、三週間は帰ってこないそうだ。

 ここにいるのは騎士でない使用人の者達か、現当主である者くらいだ。


 出ていったレェベンの家の前で、じっと立っているのに居心地の悪さを感じつつも静かに待っていると、先程屋敷内へと駆けていった警備が戻ってくる。


 ・・・しかし、その顔は浮かないものだった。


「どうしたの?」

「その・・・今は職務が忙しく、時間を取れないと」


 警備の顔をよく見てみれば、沈んだ表情でこちらに同情する様な気配が感じられた。

 恐らく、言葉を濁しているのだろう・・・実際は、もっと酷い言い方なのは間違いない。


「そう・・・わかったわ。兄様に私が来た事を伝えておいて貰えるかしら?」

「・・・ハッ」


 私は開いた門を前にして、その先へ進むことは出来なかった。




 -------------------------------------------------・・・



 はぁ・・・一体自分は何をしているのだろう。


 覚悟を決めて、レェベンの屋敷まで行ったというのに門前払い、挙げ句の果てにはムシャクシャして、一人でダンジョンに潜ろうとするなんて・・・。

 それにミリエラまで巻き込んで危険な目に遭わせているなんて、ほんと一体何してるんだろう。


 ミリエラが聴いた悲鳴の方へと駆けながら、そんなことを頭の中で反芻させる。


 いつもより身体が重さを増し、足を上げるのが重く、身体全体に負荷が掛かっているかの様な感覚に囚われる。


 会わずに少しだけホッとした部分もあるが、折角の自分の覚悟がこうも簡単に打ち砕かれると、なんだか一気に身体の中から力が減っていく。


 あの後、ヴォルドス家から街の宿屋へと移った私は、ハルウ達やミリエラを置いてレェベンへと向かった。

 そして、あの日父が私に言った「騎士」を、私の思う「騎士」で越えてみせると意気込んだのだけど、結果は門前払い・・・どうしようもない。


 そして、兄様から私宛に届いた手紙が、更に拍車を加える。


 要約すれば

「すまない。父に交渉したけど取りつく島もない。明日から本格的な軍事演習で、当分連絡は取れない」

 というものだった。

 兄様らしく丁寧な文章で、便箋を何枚も使っていたけれど要点をかいつまめばこんなものだ。


 そんな事を考えながらでは、他の事に集中できるはずもなく。

 ミリエラが何の躊躇もなく、さっき私達が避けた、通路にあった扉へと駆け込んでいく。

 そこでハッと意識を取り戻し、自分も急いでその扉を潜って、部屋の中へと躍り出た。


 扉を潜った先の部屋はかなり広いが、それを埋め尽くす程に数十匹もの大量の魔物が(ひし)めいていた。

 爛々と目を輝かせているのはゴブリンとコボルド、そして中央には案の定ゴブリンメイジの姿が伺える。


 そして、ゴブリンメイジの足元を見て、私は顔を歪ませる。

 ゴブリンメイジの下で光っている魔方陣・・・恐らく、ゴブリンメイジが転移の罠によってここの部屋に転送され、しかもトラップに引っ掛かるなどと言う、笑えない冗談の様な光景が広がっていた。


 ゴブリンメイジは私達の姿に気付いていないようで、背中を向けている・・・しかし、ゴブリンメイジの右肩辺りから杖の先が見え、そこからは轟々と燃え盛る火球が見えている。


 そして、その奥・・・恐らく悲鳴の元となったであろう青年達のパーティーが、魔物の波に飲まれようとしている。

 前衛を努めていた槍と剣を持った者は、魔物に刃を拘束され武器を使えなくされている。

 そして 、後衛を努めているのであろう二人・・・一人は焼け爛れた衣服を晒し、その隙間から酷い火傷(やけど)を見せている。もう一人はそれを必死で治そうと、驚いた事に回復魔法を行使している。しかし、低級の回復魔法なのだろう、一向に治る兆しは見えてこない。


 ゴブリンメイジが高々と杖を掲げ、醜悪な顔に、更に醜悪な笑みを張り付け魔法を行使する。燃え盛る火球が、冒険者パーティーを一つに包み込む・・・かと思われた。


 私より先に部屋へと駆け込んでいたミリエラは走りながら、精霊魔法の準備を終わらせていたようで、魔物の半分は空中へと舞い上げられ、風の刃によって少しずつ切り刻まれていた。


 そして、ミリエラの魔法はそれだけでは終わらない。


「走りながら多重詠唱なんて無茶苦茶ね・・・」


 ミリエラの片手からは、魔物を空中に舞いあげ切り刻む魔法に使われた、魔力の残滓が散っていく。

 そしてもう片方手には、次の魔法であろう、眩く水色に輝く魔力の塊が現れる。


 通常走りながらの魔法の行使は非常に難しい。繊細な魔力操作を行う魔法は、通常では立ったまま詠唱を行う。

 走りながらだと魔力操作どころか、詠唱の為の集中が乱れ、生半可な魔法使いでは、魔力暴走を引き起こし自爆する。


 ミリエラはそれを行使するどころか、まさか多重詠唱とは・・・もはや一流の魔術師と肩を並べても問題ないだろう。

 英雄と呼ばれた者には剣を交えながら、魔法を行使した者もいるとは聞いたことがあるけれど、ミリエラならできるんじゃ・・・。

 剣に怯えて、できなくなる未来しか浮かばない。


 ミリエラは、冒険者パーティーの元へと辿り着くと、一番重症を負っていた者に、直ぐ様用意していた回復魔法を行使する。

 手から水色の輝きが解き放たれ、みるみる内に回復していく少年?は、驚きのあまり呆然とミリエラを見上げている。


 と、ミリエラばかり見ているが、魔物はまだまだ健在なのだ。

 ミリエラが後衛のあの二人につくのなら、自分は前衛のあの二人の手助けでもしよう。


 思考を身体の隅々のバネへと集中させる。

 今自分が踏みしめるダンジョンの床、身体にぶつかる空気の重み、装備によって生じる軸のぶれ、それらを考慮し、地面を蹴り一気に加速する。


 剣や槍などを使って行う接近戦は、常に頭を働かさなければならない。

 一の太刀から二の太刀、それに続いていく連撃、相手の先を読み、如何に敵の目を欺くか等、思考速度と判断能力に問われるのだ。


 これをしっかりできるようになって、漸く騎士となる。

 そして、その上である一流の領域では「感覚」「勘」「感情」等を持ち出して戦う事となる。


 私は感情や勘といった点では劣るが、「感覚」は他の騎士よりも上をいっている。

 どう剣を振るえば優位に返せるのか、どう動けば一番効率のよい立ち回りができるのか等を、実戦を積む事で、感覚としてどんどんと取り込んでいくことができる。所謂、一つの才能を持っている。


 加えて私には魔法がある。

 剣士としての才能は、言いたくはないがレェベンからしっかりと受け継いでいて、魔法は独学であったが最近はミリエラに教わっている。


 一瞬の内に、二人の元まで駆けつけた私は、剣を一閃させて周りに密集していた魔物を切り伏せた。

 数は多いが、何階層か上の魔物であるし私の敵ではない。


 身体のあちこちに裂傷が刻まれた青年と少女の姿をみとめ、その周りに群がる魔物を一刀のもとに切り刻んでいく。


 振り抜いて両断し、返す刃で両断し、向かってくる魔物には突きをお見舞いする。

 それを少しペースを早めてやれば、大量にいた魔物はどんどんと数を減らしていく。


 なんだか今朝の事でムシャクシャして、魔物に当たっている様で情けないが・・・あくまで人助けだ。


 あ、ミリエラの腰が引けている・・・やっぱりまだ怖がっているようだ。

 颯爽と格好良く登場したのに、それでは意味がない。

 それでも、ゴブリンメイジ程度の魔物が扱う魔法であるならば、ミリエラの足下にも及ばないだろう。


 案の定ミリエラが放った精霊魔法は、ゴブリンメイジの魔法を飲み込み、ゴブリンメイジへと炸裂する。

 石ころのように吹き飛ばされていく、ゴブリンメイジは激しく壁に激突し、バラバラに粉砕された。


 私の方もそろそろ終わりそうだ。


「身体強化:速度上昇(スピードブースト)、スキル:『舞斬』」


 魔法の詠唱を終え、スキルを放つ。

 周りの魔物達の動きが緩慢になり、自分だけがいつも通りの素早さでもって攻撃を仕掛ける。


 ステップを踏むようにして移動しながら、赤い弧を描くように目にも止まらぬ早さで魔物を屠ってゆく。

 魔物の残骸が辺りにぶちまけられ、周囲に魔物の血が振り掛かっているが、自分には一滴さえ掛かっていない。


 剣が奏でる空を切り裂く音、地面を鳴らす自分の軽快な足音とが部屋の中を反響し、妙に耳に心地良い。

 ユガ達と一緒に行動するようになってからというもの、戦闘をする機会が増えたからか、しっかりと力がついてきている。


 魔物に対して余裕をもって対処できるようにもなったし、剣の扱いもソウカイとコクヨウを練習相手にしている内に、上手くなった。


「これで最後!」


 此方へと牙を剥いて襲い掛かってくるコボルドを、上段から振り抜き、縦に両断する。


 フゥと一度息を吐き出し、張り詰めていた神経を和らげる。

 しかし、油断なく周りを警戒し、魔物の気配が完全になくなったことを把握した後、剣に付着した血糊を振り払って静かに鞘に納める。


 回復魔法はあまり上手くはないが、裂傷程度であれば私でも治せる・・・けどやめた方がいい。

 今更ではあるが、素性がばれるのは良くない。


 魔法を使えて、剣を扱える者など、一般的には考えられないのだ。

 つまり、そう言った者は限られてしまうわけで、王都でそれができるものは私や王国騎士長直轄の騎士団くらいだ。


 正直剣技でも騎士独特の癖があるし、それも『レェベン』に繋がってしまう恐れはあるけれど・・・まぁこの人たちでは気づいていないだろう。


 そうこうしている内に、ミリエラは前衛を努めていた二人の傷もあっという間に回復する。

 状態異常等を受けていないことを確認し、そそくさとその場を離れることにする。


 自分もそうだが、ミリエラもあまり関わりをもつのは良くない。


「はぁ・・・ミリエラあまり無茶しないの」

「ご、ごめんなさい」


 ミリエラは優しい。

 誰かが困っていれば、後先考えないで行動する節がある。

 ユガはそんなミリエラもしっかりコントロールできていて、さすがあのワンパク魔族を従えているだけの事はあるなと、感心した程だ・・・腑に落ちないが。


 さて、恐らくミリエラの耳も見られてしまっただろうし、どうにかして情報が漏れないようにしなければならないけれど・・・無理よねぇ。


 ユガが金色って呼ばれるようになってから、ユガが言っていた言葉が脳裏を過る。


「人の口に戸は建てられぬだったかしら? ほんとどこでそんな言葉覚えてきたのかしら? 人間よりも人間らしいわね・・・」


 それでも、一応言っておこう。


「秘密にしてもらえるかしら?」


 初心者パーティー?は互いに顔を見つめあい、コクコクと頷く。


 さて、長居は無用だしそろそろ出ることにしよう。

 はぁ・・・明日からはまたユガの捜索の始まりだ。ハルウ達にもしっかり言っておかなければ。


 もう一度大きく溜め息を吐いて、私とミリエラは部屋を後にした。

不純な気持ちでいっぱいのサテラさんでした。

次回は「頑張っているお姉さん、モミジ視点」にしようかなと考えています。


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!


※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。

方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。


わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!

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