幕間:ハンゾー①でした!
忍者スパイダーハンゾーのお話です。
誤字・脱字がございましたら報告お願い致します。
次話投稿は一週間以内です!
私は蜘蛛である。名前はまだない。
どこで生まれたかは知らず、親なんていうのものはいるのかさえわからない。そもそも親とはなんだろう?まぁ、捕食すればどれも一緒だろう。
自分が自分というものを知ったのはいつだったか・・・確か、あの大蜘蛛に倒されて以来だったような気がする。
何の変哲もない同族・・・あれにやられた後、自分は奴の部下になった。
どうやら、自分も相当な力を持っていたのか、部下達も数百単位で後ろに付いていた。
奴の強さはこの森の中でもかなりの強さだった。
いつしか部下の大蜘蛛達は300を超え、奴の地位は絶対のものになっていった。負けた当初はいつしか報復をとも思っていたが・・・この頃になるとやつに対する反抗心もなくなっていった。
反抗心がなくなっただけで、忠誠心が目覚めたわけでもない。
そして次に見た奴の姿は、紫色の斑模様、身体も自分達よりも一回りも巨大化していた。
恐怖により他者を統べ、力により他者を圧倒し、大蜘蛛達の数はますます増えていった。
そんな時だった。・・・自分達がいる森が急に騒々しくなったのは。
何があったかは知らないが南の方で何者か達の激突があったらしい。
魔物同士の争いは日常茶飯事だが、群れ同士での争いは少ない。互いが消耗を避けるために、争い合う事を避けるからだ。
・・・それも騒がしさからして、群れの数はかなり多い。
その騒ぎはほどなくして鳴りを潜めたが、自分たちの森は激変した。
縄張り争いが激化し、自分達がいるより更に北部から力を持った者達が押し寄せ、それから自分たち大蜘蛛は逃げ出した。
筆頭である奴でさえ、敵わない相手がゾロゾロとやってきたのだから仕方ないだろう。
そして南部に移動している最中だ。
南下していると、森の中央付近から力が流れてきたのだ。
それも自分達の腹を満たすであろう香りが漂ってきたのだ・・・食欲を掻き立てられ、釣られるようにしてそちらに向かっていったのだが・・・それが我らの運の尽きだった。
「ナント・・・」
いい匂いが漂ってくるその場所に広がっていたのは、同族達の屍だった。
自分達が到着した頃には、既に死屍累々が広がっていた。
破裂し、切り裂かれ、潰され、抉られ、焼かれ・・・凄惨な光景がそこには広がっていた。
自分の部下達もその光景に竦み、足が動かなかった。
漂う匂いの中に同族達が齎す屍臭が漂う。
後ろに続く他の大蜘蛛達は何も感じないのか・・・こんな凄惨な光景を目の当たりにしてそれでも尚歩みを進められるというのか、そんな事を考える。
しかし、部下達を除いた大蜘蛛達の進行は止まらない。
自分達の足は止まっているというのに、俺の部下ではない大蜘蛛は同族の屍を蹴飛ばし、掻き分け・・・進んでいく。
何も恐れることなど無いという様に、何も考えず何かに盲信するように唯、獲物に突き進む獣の様に。
自分達だけは、その大蜘蛛達の様にはできなかった・・・いや、なれなかったというべきなのか?
それから、自分達は慎重に森を掻い潜り、姿を見られぬよう、気配を感じ取られぬようにゆっくりと漂う匂いの方へと歩みを進めた。
部下達の足並みも揃い、一切足音を立てることなく、ゆっくりと・・・ゆっくりと・・・。
そして自分達は見たのだ、見てしまったのだ。
己の主が無残に塵と化す様も。
自分たちにとって強大な存在である主・・・それを手玉に取るたった一匹の魔物。
額から角を生やし、身体の色は茶褐色・・・しなやかな手足は合わせて四本。
顔には笑みがこぼれ、胡乱げな目をして喜悦の笑い声を上げながら同族を薙ぎ払い、主を寄せつけず、気の向くままに暴虐を繰り返す魔物が・・・。
体から立ち上らせる赤いオーラに目を焼かれる様な恐怖を覚え、逃げようと後ろへと振り返った直後
「てんはぁ~~~~~!!」
そんな声と共に、自分達の視界が真っ白に染まったのだ。
耳からは風の音も、足音も、先頭音も聞こえず、視界には何も映らず唯真っ白な世界が広がっていたのだ。
そして・・・目覚めた時にはそこには何も存在していなかった。
戦闘で折れた木々の破片も、今まで戦っていた同族も、戦いに混ざろうとしていた同族も消え失せ、彼方に吹き飛ばされた。
そしてそれは、自分たちも例外ではない。部下達も・・・後ろに吹き飛ばされ辛うじて息をしているのみだった。
俺の体もズタボロであり、もはや立つことすらままならない・・・俺?
朦朧とする意識の中フラッと眼前に暴虐の存在が立つ。
獲物を見つめる視線を投げかける魔物は、静かに腕を振り上げる。
「・・・!?」
死ぬ、死んでしまう。俺の部下もやられてしまう。
それだけは、それだけは避けなければ!!
「コウフクスル、ジュウゾクスル、ダカラ・・・」
その言葉を最後に意識は途絶えた。
・・・目を覚ますと、そこにはいつもと変わらない森が広がっていた。
周りを見やれば意識は失っているが、仲間達・・・部下達の姿がある。
息も絶え絶えだった部下達が生きているのだ。
その光景に安堵したのも束の間・・・自分達の置かれている状況に絶望した。
よく見やれば・・・暴虐がいた。
顔に微笑みを湛えたアレが・・・いや、アレと同格であろう存在が何体もそこに立っているではないか。
取り囲むようにして我々を取り囲むそれの奥には・・・もっと恐ろしいものもいる。
ウルフ・・・の姿をしているが、その存在は計り知れない何かに支配されており、自分の直感がアレにだけは絶対に逆らってはいけないという警笛を鳴らしている。
やがて、部下達も目を覚ます。
すると俺と同じように全員が恐怖をその身に刻み始める。
「さて、汝らは我らが主が支配するこの森を襲ったわけだが・・・従属を受け入れるって言ったのに間違いはない?」
俺を含む全員が首をコクコクと激しく縦に振る。
目の前に進んできたのは、暴虐ではない存在だった。それでも、彼の暴虐に勝るとも劣らん気配を感じ取れる。
額からは暴虐と同じ様に角が生え、しかし暴虐とは違い体は小さく、頭から生える髪は美しく光り整っている。
しかし、外見は美しいが、その内に内包される力だけは奥底がしれない。
・・・主というのは奥のウルフ(仮)の事だろうか?
「ソ、ソノトオリデ」
「では、この森を襲ったのは貴方の命令?」
そう目の前の雌・・・女が問うた直後、周囲の殺気がミシミシと唸りを上げる程に強い物へと変わる。
体中を駆け巡る怖気を辛うじて沈め、口を開く・・・ここで答えを間違えれば俺と部下達は間違いなく殺される。
「チガウ。ムラサキイロノマダラモヨウガアルジ・・・」
アルジと言った瞬間にまたもや殺気が迸る。
「ダ、ダッタクモガ、メイレイシタ」
「・・・そう。それじゃ仕方ないのかな?でも主人の森を襲ったのは許されることではないわ。貴方達はここで殺しちゃおうって思ってるのだけれど?」
「ク・・・」
その女から紡がれる言葉は一言一句真実であり、冗談を言ってはいないことが分かる。
自分たちは殺される・・・。
「でも・・・今主人は不在なの。この森を私達に任せてね」
「オレナラドウナッテモカマワナイ。ブカタチダケワ・・・」
「・・・・・・・・・」
何故だ。こんな命が奪われようとしてる瀬戸際なのに、どうして、部下達を見捨てる事ができないのだろう。
自分で自分が理解できない。
女は黙り込んでいる。
何かを考え、こちらをジッと見つめている。すると・・・
「構わないだろうが、殺しちまおう」
「下僕が殺されかけてね・・・僕が治したけど、今でももっと嬲って殺したいと思うよ」
「主君の森を汚した者を生かすのはどうかと思うがな」
後ろに立っていた二匹の男が口を開いた。
一匹は額から角を生やした巨大な男、もう一匹は頭から耳を生やし、尻尾を後ろから垂らしている男であった。
まずい!!
後ろに控えている男三人は俺を殺す気でいる。濃密な殺気が漂い、その殺気に触れた身体から一気に体温が奪い取られる。
「・・・タノム」
だが、こっちは文句なぞ言えるわけもない。反論もできなければ、反抗もできない。唯、願い乞うしかないのだ。
「ふむ。主人の森を荒らしたのは確かに許せない。しかし、下の者を助けるその心、一つ考慮する余地もあるな」
「・・・気に入らないけれど、ソウカイ爺の言うことも一理ある。本当なら斬って捨てたいけどね」
「わたしわぁ、どっちでもぉ、いいかなぁ」
どうやら反対派もいるようだ・・・とは言っても同じような殺気を向けてくるが、先の三人よりは俺達を有効に活用しようとしている。
「直接主人に牙を剥いていないとは言え、下僕に手を出したのは・・・しかし・・・うーむ」
「主君のご判断なく勝手に行動していいものか・・・」
全員が一斉に黙りこくってしまった。
この化物達の裁量によって我々は生きるか死ぬかを決められてしまう。
どうか、生きていたい。利用されて使い潰されても構わない!!
「面倒だなぁ、殺しちまえば全て後腐れないだろうよ。ここを守ったんだから怒られるなんてことはねぇと思うぞ」
この巨漢の男は特に我々を毛嫌いしている。
この男が発言すれば、我々の立場が揺らいでしまう・・・クソ、黙っていてくれ。
「無駄に考えこむくらいなら、やっちまった方が」
「ワタシワ、キタノモリヲシッテオリマス」
男に入り込んで発言する。
ここは自分をこいつらに売り込むことが重要だ。自分の有用性をアピールし、今だけはこいつらの傘下に加わればいい。
「あぁ?」
「キタノナワバリ、キタノシュザヲ、シッテオリマス」
「それがなんだってんだ」
男が噛み付く。
ふん、そういった物の重要性を理解しないとは・・・こいつは恐らく戦闘に重きを置いているのだろう・・・。
とは言っても、自分も何故このような知能があるのか全くわからないが。
「ココノアルジワ、イダイダトオミウケシマス。コノモリヲスベルニハ、ヒツヨウカ・・・ト」
「我らが主人はそんなことがなくても!!」
案の定男が俺に噛み付くがこれはかなり決め手に近いだろう。
この化け物達は必要に「主人」と呼ばれる者を尊敬している。正直に自分には理解し難いが、彼らからすれば一番重要なのだろう。
・・・もしかすると、俺も部下達からはそう見られているのか?
巨漢が次に何かを告げ様とした時、後ろからパシンと何かが打ち付けられる音が聞こえる。
今まで後ろに鎮座していた存在が動いたのだ。
「情報とは力、そうアルジは仰った。だから生かせ、嘘偽りならば、俺の牙を持って殺す」
「言っておくが、もし歯向かえば容赦なくころすぞ」
「わ、私も正直納得はいきませんが、アルジの言っていたことは絶対です。でも・・・嘘ついていたら、殺すね」
前に立つ存在よりも悍ましい気配を漂わせた存在は、そう告げる。
全身に冷たいものが走り、部下達を震え上がらせる。いつか・・・牙を剥いてやろうと考えていた思考が一気に真っ白になる。
これらには、勝てない。そう本能が告げていた。
・・・どうやら生かしてはもらえるらしい。しかし、俺の部下は圧倒的な気を前にほぼ死にかけている。
生を許されても、許されなくても、死んだ心地しかしなかった。
数日経った。
我々が捕食対象としていたいい匂いの正体がエルフだった事は驚きだ。もしかしたら主・・・毒蜘蛛は知っていたのかもしれないが。
俺は数日中にこの森がどういった特徴があるのかを自分の中で纏め上げた。
どうやら、この森は「アルジ」「主人」「主君」と呼ばれる存在によって統べられているらしい。
その存在はこの森に住む何者よりも強く、慈悲深い存在だそうだ。
『鬼』の集団からは「どれをとっても最強」とされており、『浪武犬』の集団からは「強く、勇ましく、忠義を尽くすべき存在」とされている。
俺達大蜘蛛はまだあったことのない存在故に推し量ることもできないが・・・きっと悍ましい化物なのだろうと想像したのだが・・・。
エルフからは「優しくて、可愛くて、頼りになって、神様の様な・・・人?」と言われているのだからさっぱりわからない。
因みにあの化け物達には話しかけていない。
・・・そして、この群れの主な目的は「主」から命令され、この里を拠点とし、守っているらしい。
なんでも、この里のエルフ達は一度オークの集団に襲われたらしく、それを「主」が退けたのが理由らしい。
「主」はエルフをとても重要視しており、手を出すことは禁じているのだそうだ。万が一破ろうものなら、何が待っているかわからないらしい。
そしてこのエルフの住む場所を守っているのが・・・『九柱』だ。
正確には大鬼である「五傑」と、犬神である「四傑」を合わせて、鬼と浪武犬は「九柱」と呼んでいる。
この九柱はこの森の中では最強クラスに強い者達であり、この森の東西南部を征服している「主」の下僕だそうだ。
我々は現在ショウゲツ、コクヨウと呼ばれる者の仮の配下として従属している・・・正直に言えば、あまり気は乗らないが仕方ない、負けてしまったのだから。
因みに、あの我々を毛嫌いしているあの男は「フゲン」というらしい。今でも、里の中で擦れ違うと、露骨に嫌な顔を向けてくる。
・・・我々を圧倒した彼らほどの実力があるのなら、北部でさえも征服してしまえるであろう。
しかし・・・彼らが命令されていることは雑用ばかりなのだ。
自分より大きな丸太を担いでは、森と里とを何往復もしてエルフ達の仕事に手を貸す、森から木の実や獣などの食料を取ってくる、巡回・警備を主な仕事として行っている。
俺から見ると、この化け物達が一体何をしているのか、全く理解できない。
エルフは非常時の食料か苗床かと思っていたのだが、共存し、それどころかお互いを尊重し合い、助け合って生きている。
エルフ達も彼ら彼女らに尽くし、彼らは彼らでエルフ達に尽くす・・・尽くしているのは「主」の命令なのだろうが・・・それでも、まさかここまでとは。
エルフの子供を笑いながら追っ掛け回している鬼を見た時は、呆然としたものだ。
他にも家を修復したり、薪割りをしていたり、はたまた家具を作っていたり・・・無茶苦茶だ。
俺達も最初はエルフから怖がられていたが、害がないとわかると、取り敢えずは不干渉という形に収まったようだ。
シロタエ、ソウカイ、エルフの族長の三名がこの里の運営を行っているそうだ。
里の維持・運営、発展案、改善案・・・それを日々行っているらしい。
実は、俺達はソウカイとシロタエには感謝している。あの日以来、全く殺気なども向けられず、衣食住を提供され、事を里にいる者達全てに俺達に手を出すなと触れ回り、最後には良い待遇をときたものだ・・・。
部下達もこれには驚いているようで、正直自分も動揺した。
今では、部下の中から感謝する者さえできたくらいだ。前の主に使えていた時には考えられないくらい充実した、生活を送れている。
そういえば、九柱の内の一人「キク」と言うそうだが、今は「主」と旅立っているので不在だそうだ。
そして・・・九柱を起点としているこの里だが、頂点に君臨するのは四狼と呼ばれる者達・・・あの日、九柱の後ろに鎮座し、俺達を生かすことを決めた狼達だ。
狼といっても、見た目はウルフよりも一回りも二回りも大きく、その眼光の鋭さは、何者をも射殺してしまいそうな程ギラギラと輝いている。
十中八九ただの狼でないことは間違いない。
この者達は普段、里の中をグルグルと歩き回っているのだが・・・なんと、九柱に頭を下げさせる唯一の存在だ。
普段は、狼の姿で歩き回っているのだが、主の前では人間の姿へと変わるという。
その力は「主」から賜った恩恵を一身に受け、九柱が一斉に襲い掛かっても倒せるかどうかもわからない・・・と、鬼や浪武犬達から聞いた。
あれら全員より強いなど、俄かに信じられない・・・いや、信じたくないな。
主に里の中の諍いや揉め事を治める為に巡回しているそうだが、「主」が旅立ってからは諍いや揉め事は起こっていないらしく、それからして四狼の力がどれほどのものかは想像に難くない。
現在四狼の内の一匹は「主」と共に旅立っているそうで「ユキ・・・様」というらしい。
鬼や浪武犬からは、四狼の方々には関わらない事を勧められ、現在四狼に普通に接しているのはエルフだけなのだそうだ。
さて・・・我々大蜘蛛はと言うと、森に潜み、森の状況や他の部族の情報をソウカイ様に伝える役目を担っている。
それに、どうやら自分は進化していたらしい。
ここに運ばれ、眼を覚ました時には、あまりの恐怖に気づかなかったが、少し経って、漸く気づいたのだ。
「忍蜘蛛」・・・一体どんな能力があるのかと模索中だが、足音が全く立たなくなるのだけはわかった。
自分の状態については、主君がお帰りになられたら聞こう、とソウカイは言っていた。
そしていつもの様に森に潜んでいた時の事だ。
俺達は、この数日森の警備と北の森の様子見をしていた。
警備といっても、この森の魔物は里の者達を襲ってこない。襲えばどうなるかを本能的に理解し、こちらから近づいても逃げてしまうのだ。
一度ばったり遭遇して、戦闘になるかと思ったが・・・大慌てで服従のポーズをとったのだから困惑した。
そして、里から少し離れた場所で、森に異常がないかを警備していると。
「・・・・・・。・・・・」
「・・・・・・」
森の奥から話し声が聞こえたのだ。
俺は人間というものを見た事がない。
この森に生まれついてから唯の一回も出会った事はない。
姿形はエルフと何ら変わらないらしいが、実際に見てみないことにはわからない。
勿論部下達も見たことがなく、話し声がする方に全員興味を注いでいる。
だが、今俺達がしているのは森の警備、何か異常があれば自分達が対処するのだ。
あわよくば、あの人間達が化け物を・・・という思いも少しばかり湧いてくるが、人間でもあれらに勝つことは不可能だろう。
長い物には巻かれた方がいい。
シロタエからは、森に何か異変があった場合、侵入者を発見した場合は直ぐ様知らせるようにと命令されている。
そして、場合によってはそれを食い止めろ・・・とも言われている。
侵入者なのは間違いないな。恐らく人間であろうが、取り敢えず姿だけは見ておかなくてはいけない。
その情報を部下の一匹に知らせ、里まで走って貰わなくては。
姿を見ようと、声のする方に俺一匹で移動する。
気配を消すことに長け、完璧に気づかれないようにするなら、数は少なくして、また力量のある俺が行ったほうが良いだろう。
なるべく音を立て無いように、姿を見せずに、気配を消して勘付かれないように。
そして声の下まで、忍び寄ることに成功した。
やはり、エルフの姿に酷似した者がそこにいた。耳が尖っていないところを見ると、人間なのは間違いないだろう。
そこには人間が馬に乗り物を引かせて、里の方角に一直線に進んでいた。
数は・・・かなり多い。武装した者と、非武装の者、先頭の馬車には男が一人だけ乗っている。
女達からは強そうな気配が漂うものが二名・・・普通なのが二名だ。
男に関しては・・・何も感じない。恐らく小物だろう。
それを確認した後、部下達が待つ方へと下がる。
部下の一匹に今見た者達の特徴を伝え里へと急がせる。
さて・・・ここは、全員で足止めしなければいけないのだろう。
できれば、俺達の姿に驚いて逃げ帰ってくればいいのだが、正直荒事を起こしたくない・・・あれらにいいように使われるのは気が引けるが、これも仕方ない。
「イクゾ」
そう告げると、予めわかっていたかの様に、全員が動き出す。
なるべく音を立て無い様に、木の上を猛スピードで駆け、人間達に近づいていく。
やがて人間達が乗る乗り物の周辺を取り囲むようにして、配置が完了する。
もしも、抵抗されれば・・・殺すしかないだろう。
木からぶら下がるようにして、姿を見せる。
これで引いてくれれば儲けものなんだが・・・どうやらそうはいかないらしいな。
全員が乗り物から降り、目を付けていた女二人は凄まじい殺気をこちらにぶつけてくる。
そして武装した女二人は、後ろで魔法を唱えている女の前に出るようにして武器を構える。
そして・・・男は俺の方をじっと見つめてくる。
気づかれてる?
いや、そんなはずは・・・。
しかし、そんな意に反して男はこちらを静かに見据えている。これはバレていると、自分も前に進み出る。
しっかりと目が合い、男は俺に告げた。
「えっと、言葉わかるよね?」
「・・・・・・・・・」
その言葉に警戒する。
なぜ、俺がこの群れのリーダーであるとわかったのか。
確かに、体は全員より小さい、しかし、あの短時間でこれほど数がいる大蜘蛛の中から気配を消している俺を探し出せるはずがない。
もしや、これが「主」なのか?
いや、それにしては小物の匂いが漂いすぎているし、あの化け物共を統べる者には到底思えない。
それに、後ろに人間を引き連れている事からも、この男は人間であろう。
この男は地位が高い者で、周りの者は護衛であろう。
男の質問に答えようか否かを迷っていると、男の前に白い女と小さい女が立つ。
こちらに殺気の奔流を叩きつけてくる二匹に、臆しながらも、あの里に居着いてからというもの少々慣れてきている自分が悲しい。
「アルジに返答しないなんてどういうつもりなの?」
「殺す」
二匹がこちらに向かって告げる。
その言葉の中に聞き逃せない物が混じっている「アルジ」そう呼ばれる存在はこの森の中では一人であり、また「アルジ」と呼ぶ者はこの森の中には四匹しかいない。
まさか・・・コレがこの森の「主」と、そう思いかけた時だった。
「ユキ、キク静かに。・・・もう一度だけ聞く」
男の瞳の色が唐突に変貌し、その眼の奥深くに潜む闇が自分を捉えた。
「俺の森で何をしている?」
目の前の景色が歪む。
その場に存在することが間違いだと思い知らされてしまう。
本能が自分の死を悟ってしまった。
身体を・・・いや、心の蔵にまで届き、息の根を止めようとする気の呪縛を一身に浴びる。
男の瞳から降り注ぐ奪命の殺気に、部下達も当てられ後ろに遠ざかり、今にも逃げ出してしまいそうだ。
しかし、俺がここに立ち尽くしているせいで、部下達は逃げられないでいる。
ふざけるな。出来ることならば背を見せて全力で逃げ出してしまいたい。
しかし、己の足が言うことを聞かないのだ。己の本能が死ぬ事を当然と受け止めてしまっているのだ。
間違いない『主』だ。
これがこの森の覇者だ。
その覇者から吹き荒れる殺気に、前に立っていた女二人も身を震わせ、必死に後ろを振り返らない様にしている。
後ろにいる女達はその殺気に当てられていないのか、平然としている。
「・・・・・・・・・!」
ダメだ。声すら出ない。
ここで、俺達は・・・。
そう覚悟を決め用とした直後。
「主君!!!」
「主人!!!」
どうやら部下が間に合ったようだ。
ハンゾーは中々波乱の人生を歩んできていたみたいです。
次週も続いてハンゾーです!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないこと・疑問に思った事がございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!




