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開拓:アジトでした!

もしかしたらサブタイトル変えるかも知れません!!

少々胸糞悪い展開がございます。

次話投稿は一週間以内です!

 ここカナンの街にはスラム街なるものは存在しない。

 大きな国や街にはスラム街は必ずと言っていい程存在するはずであり、現に王国には東側に巨大なスラム街が広がっている。我々の上司はそこの4割を占める程の力を持った組織である。


 そしてその手はこの街カナンにも密かに忍び寄っている。とは言っても、密かにとは言えない影響力が出ているがな。


 この街の表向きを覗いてみればスラム街がなく、平和であり商業で賑わっている平和な街に見えるのであろう。

 しかし、掘り返してみればこの街に根付く我々の力を垣間見ることができる。

 見たが最後・・・だがな。


 そこは小奇麗な邸宅が広がり道が舗装された、所為貴族街とも呼ばれる場所である。

 スラム街とは一切無縁なその場所は、いつも通り平民とは比べ物にならない豪華な服を着た成金の婦人連中や、質に拘(こだわ)った布で誂(あつら)えた衣服を身に纏った連中がチラホラと伺える。


 そんな連中には俺の存在など知られてはおらず、俺を畏怖し、引き攣った笑みで迎えるものなど誰一人として存在しない。

 まぁ、関わりも持たないのだがな。


 そして、ある一軒の邸宅の前で俺は足を止める。周りの邸宅と比べてなんの遜色もない平均的な邸宅。

 勿論庶民の者と比べるとその差は天と地ほどもあるのだがね。


 その邸宅の門を潜り、邸宅へと繋がる扉を開ける。

 玄関も綺麗であり、邸宅の中は清潔感溢れる作りとなっていて、掃除も行き届いている・・・まぁ、当然であろうな。

 しかし・・・


「靴が磨けていないな」


 すると部屋の奥から、どう世辞を並べようとも決して綺麗という言葉は出て来ないであろう衣服に身を包んだ、妙齢の女性が血相を変えて玄関へと急ぎ足で向かってくる。


「だ、旦那様お早いお帰りで」

「おい、俺の靴が磨けていないのは何故だ?帰ってくるまでに仕上げろといったはずだが」

「そ、それは、旦那様の帰ってくるお時間がいつもより早く」

「言い訳など聞きたくない!!」


 腹立たしい。持っていた杖で女の頬を打ち据える。

 後ろに仰け反って倒れた女に、それでも尚杖で打ち続ける。

 こいつは俺を舐めているに違いない。そうでなければこのような失態を犯すはずがないのだから。


 顔を腕と手で覆い必死に守っている姿が嗜虐心を唆る。

 女は苦痛に悲鳴を漏らすこともせず、ただ歯を食いしばって耐え忍ぶことしかしない。俺に歯向かうとどうなるかはコイツ自身が一番理解しているのだから当然であろうがな。


「お前も地下(・・)に行きたいのか?」

「そ、それだけは・・・」

「だったら、何故口答えなど出来るんだ?ん?」

「・・・申し訳ございません」


 最後に腹を思い切り蹴り上げ、自分の嗜虐心にフィニッシュを飾ることにする。


「おやっさん」


 足に力を入れて、今まさに蹴りぬこうとりきんだ直後に女の後ろから声がかかる。

 自分の愉悦を邪魔した者に一瞬殺意が沸き立つが、それも言葉を向けた本人を目の前にして綺麗に霧散した。


「何の用だ?」

「あれの件ですが、もう少々の時間が必要らしい。それと・・・とうとうギルドに漏れたがいいのか?」

「ふん。どうせ、何もできまいて。それよりあれの配備、調整を急げ」

「わかった」


 男はそう告げると背中を向けて、廊下の壁に手をかける。すると、壁は二つに分かれ冷たい空気が吹き抜ける階段が姿を現す。

 我々のアジトである「地下」への入口に一歩を踏み出す。


 綺麗に清掃された邸宅からは思いもよらない代物である地下への道。

 どんよりとした空気、溢れんばかりの下の者達の空気、蜘蛛の巣が張り巡らされた表舞台に立つことを許されぬ者達の巣食う場所。

 この街の唯一の闇である。


 俺も直ぐ様この地下へと降り、闇の者達へと指示を出さなければなるまい。


「次はないぞ」

「ヒッ」


 靴を脱ぐのも煩わしい。そのまま地下へと足を運ぶ。

 黒翼の首尾を任されてから早数年、今まで障害という障害はなかったはずだが、最近になって急に組織の成り立ちが不安定になりつつある。


「えぇい!鬱陶しい!!」


 無能な者達の制裁から始まり、我々に仇なす者達の出現、些細な不祥事の数々。

 それが無性に俺をイラつかせる。地下に張り巡らされた蜘蛛の巣を手で強引に払い除ける。

 こんなにも蜘蛛の巣が張り巡らされているとは、あの女は何をやっているのだ!!後でまた痛めつけねばならんな・・・。



 -------------------------------------------------・・・



 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ


 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ



 ・・・-------------------------------------------------



 地下に広がるジメっとした空気は階段を下るに連れてますます増してくる。

 そして、地下に住まう者達の悲鳴もまた響いてくる。


 女は奴隷として売られるもの、嗜好品として用いられる者、娼婦として我らの黒翼に従事する者。男には妻の為にと黒翼の兵として仕える者、重労働を課せられる者。


 その者達の叫びは外に漏れることもなく、壊れるまでこの地下に・・・我々に従事することとなる。


 地下を下って暫くすると、広い通路が現れる。

 壁にかけられた魔道具にボンヤリと照らし出された通路は幾重にも道が広がっていて、案内役がいなければほぼ確実に迷うであろう。


 この地下は土属性に精通した魔法使いに作らせたもので、ギルドに感づかれないように作り上げるのには骨が折れた。

 幾つもの通路の壁側には、部屋として掘られた場所もあり、そこでは攫って来た者の一時的な保管場所であったり、盗み取ってきた金品の保管場所となっている。


 その中でもひときわ大きく作られた部屋が最奥にあり、そこは黒翼に所属する主力との会合場所に使われている。

 そして俺は今そこに向かい、いつも通りの会合を開くのである。


 ジメジメとした通路を歩くこと数分、目の前に現れた扉を開け中へと入る。

 一瞬肌の上を舐めるかのようにゾワッとした何かが通り抜ける。原因は中央に備えられたテーブルにつく三人の殺気であろう。

 いつものことだが未だにこの空気には慣れることができない。


「待ってたぞ、おやっさん」

「ふん。計画は順調に進んでいるようでなによりだ」


 テーブルの右手側から声を掛けられ、それに淡々と返事を返す。


 先程上で俺に語りかけてきたこ奴はBランク冒険者であり魔族である。

 長い舌をチロチロと動かしながら、尾をバシバシと地面へと打ち付ける。

 肩に十字槍を担ぎ、特殊なプレートアーマーを着込み、その出で立ちからは数多の経験を培ってきた冒険者であろうことが一目でわかる。


 名は「グリスト」、種族は「蜥蜴人(リザードマン)」、冒険者として9年やってきたそうだが、殺人を犯し冒険者の称号を剥奪され、汚名だけがこ奴に残った。

 結果が我ら黒翼の戦闘員として悠々とやりたい放題を尽くしているというわけだ。


 殺しの依頼を与えれば速やかに殺し、盗みの依頼を与えれば殺し尽くして盗み出す。ここいらの界隈では「命盗り」と呼ばれている。


「あと数分遅れていたらこっちから出向いて歓迎してやろうと思ったんだがなぁ」


 テーブルの左手側に座るこいつは人間であり、現役のBランク冒険者だ。名は「ゲデイン」、殺人や盗みに関与さえしているが、ギルドの連中がしっぽをつかみ損ね続けている為に未だに冒険者家業を続けることができている。


 大斧を振り回し、魔物の首をどんどんはねて行く姿から「ボーバルパニッシャー」の二つ名を得ている。

 身長は高く、体付きは筋肉質で大斧を振り回す姿が容易に想像できる。


 確かこいつの部下共がサミエルとやらをパーティーに引き込もうとしたのだったな。


「ブハハハ!!こんな集まりなどどうでもいい。新しい女はいないのか!!」


 テーブルの中央に座るこの品も脳みそもないような奴が、黒翼一番の主戦力とは嘆かわしい。

 名は「ブラッハ」、こいつは半豚人(デミオーク)と呼ばれる者で、暴行、殺人、強盗、と手の付けられないお尋ね者だ。元はBランクの冒険者であったが、当然追放されている。

 性欲豚と人間のハーフであり、非常に珍しいケースであるが人間の方が色濃く出た種族らしい。


 しかし、性格は残忍であり凶暴である。冒険者になったきっかけも暴れまわることで金を獲れるからという理由である。

 人の金を盗むことを覚えてからは、殺人に明け暮れ今は大丈夫だが、一度火がつけば止まらない。

 性欲豚とのハーフだけあって、当然の如く色を好み、こいつには金と女を報酬として渡している。少し日が経つと直ぐに新しい女を欲しがることから、飽きたら殺しているのは間違いない。


 腕っ節は黒翼一であり、力量だけであればAランクにも匹敵するのではないかと言われている程だ。

 二つ名こそないが裏の世界からは「血塗りの暴徒」と呼ばれている。


「金はいつもの場所にいけ、女は・・・最近攫った者がいる後で案内人に案内させよう。会合が終わった後で・・・な」

「ブハハハハ!ありがとよ!!」


 こいつと話をしているといつも頭が痛くなる。


 さて、今ここに黒翼の主力を集めたのはあの案件である。

 俺達がカナンの街にアジトを構えてからはや数年、遂に計画は成就しようとしている。


 元々俺は王都のスラム街に位置する本部に所属していた。それも、それなりの地位に立っていたのである。

 俺自身は魔法も武技もこれといって目立ったものを持ってはいないが、こういったやからとの非常に強いコネクションを所持しているのだ。

 それを最大限に利用することで、その地位を得た俺であったのだが・・・。


 ある日、些細なヘマを仕出かしてしまい王都の兵士から目を付けられてしまったのだ。

 それを本部の連中が見逃すはずもなく、俺はどう責任を取るのかと迫られたのである。答えによっては闇に葬られる可能性もあった俺だが、名誉挽回のチャンスを得ることができた。


 内容は簡単だ・・・。

 この街を恐怖のどん底へと突き落とすことだ。計画は二年に渡ってようやく練り上げることができ、それを実行に移す準備ももうすぐ終わろうとしている。


 この街を崩壊させることによって、王都の者共に我々の恐ろしさを思い知らせるのだ。

 そうすれば、俺も汚名を返上することが出来ると同時に幹部へと上り詰めることもできるに違いない。


「例の物は用意できているのか?」

「あぁ、これだろう?手に入れるのにはなかなか苦労したがな」


 グリストは足元に置いていた、大きな袋を机の上に出し、その中身を机の上へとそっと置いた。


 禍々しいばかりの紫色の光を放つ水晶、水晶の中身は時折、苦鳴を上げる人の顔の様な物が蠢いていたり、魔物のような何かが水晶の外に出たがっているかのように中身を這いずっている。


「腐命の呪水晶」と呼ばれるアイテムであり、禁断のアイテムである。これの入手には教会に行く馬車を襲い、聖騎士達を相手に少なくない犠牲を払って入手したのだ。


 このアイテムは魔物や人間を殺すと、少しずつ負のオーラが溜まる。それを死んだ魔物や人間に注げば、「アンデッド化」するものだ。


 アンデッドは人間にとっては非常に厄介な魔物であり、感情がないからして恐怖を感じることがない。恐怖を感じることがないということは死を恐れることがなく、どれだけ傷つけようが痛めつけようが無意味なのだ。


 更に弱点は魔法と聖印の付いた武具だけであり、普通の武具で倒そうとすると確実に頭を潰さなければならない非常に面倒な種族なのだ。


 それを作り出せるこのアイテムは教会からは禁忌のアイテムとされており、厳重に封印されるのだが・・・今回どこぞのダンジョンから発掘され教会に移送する最中だったそうだ。


 これを使えば、無限に強い兵士を作れると言っても過言ではないのだ。まぁ、敵味方の区別がないのが欠点だがな。


「さすがだなグリスト。して・・・あれの準備はどうなのだ?」

「あれなら俺がギルドの伝手に頼んで用意したぜ・・・いやぁ、まさかこんな時にあれが来るとは思わなかったがな」

「ふむ。完璧だな。これで計画は滞りなく完遂されるだろう」


 あれは地下の広間に保管されているらしい。

 あれの準備が出来次第計画は実行するが、今はまだギルドの高ランク冒険者共がカナンにいる・・・実行に移すにはまだ早い。


 幾らあれでも高ランク冒険者を数十人相手取れば討伐(・・)されかねんからな。

 入念な準備こそが、計画を順風満帆に遂行する秘訣である。


「ブハハ!俺はとりあえず暴れたらいいんだろう?俺が取った女と金は全てもらうぞ!!」

「好きにすればいい」


 こいつには制限をつけたり、ルールをつけて縛るよりは好き勝手暴れさせた方が脅威となるだろう。

 あの日になれば高ランク冒険者も街からいなくなる。そうなればあいつも、あれも止められるものなどもういない・・・。


 街が崩壊した後は、こいつを囮に俺は王都へと帰ればいい・・・。

 女や金なんて好きにすればいい、俺は成果さえ手に入れればそれでいいのだから。


「ブハハハハ!!!ゲデインの子飼いが言ってたサミエル・・・とか言ったか?あいつも俺が貰うぞ。少しは俺を楽しませてくれそうだ」


 そう言って下卑た笑みを浮かべ、席を立つ。それと同時に腰に携えた大鉈がチャキっと一度鳴る。


「ブハハ!! 血が騒ぐ、今夜も女で楽しむとしよう!!!」


 高笑いをこだまさせながら扉へと向かう。


「ブハハハァァァッ!?」


 その瞬間ドシャッという音と共にブラッハが地面に倒れ伏した。

 グリストは騒々しいと溜息をつき、ゲデインに関しては大笑いしている始末だ。ゲデインとブラッハには緊張感というものが欠如しているらしい。これからおお仕事が始まるというのに本当に嘆かわしい・・・。


「チッ!なんだってんだ、床の掃除くらいしておけ!!」


 ブラッハは直ぐ様立ち上がると、イラついた様子でゲデインを睨みつける。性欲の方が今は勝っているのだろう扉を開けるとそのまま暗闇へと消え去っていった。


 ・・・さて、計画は最終段階にまで到達している。

 ゲデインには街の襲撃に加わって貰うが、グリストには王都まで俺の護衛という名目で付いてこさせ俺の部下となって貰う。


「襲撃の内容はどうなっている?」

「今日の夜には襲撃できる手筈が整います。アンデッドゴブリン80体、アンデッドウルフ50体、アンデッドソルジャー20体、ゾンビ100体、アンデッドオーガ8体、アレ1体・・・全て調整済みです」

「こっちも子飼いの冒険者共を集めている。数は100とちょっとだ。装備の手入れ、アイテムの補充も既に万全だ」


 自然と笑みが零れ、自分の計画が順調に進んだことに愉悦を感じる。

 今宵この街は狂乱に包まれ、人々の阿鼻叫喚に包まれる。アンデッド達が踊り狂い、抑圧された欲望を解放する冒険者が街を恐怖のどん底へと突き落としていく。


 おそらくこの狂乱(パレード)は終息に向かうことは間違いない。だが、終わった後にもカナンの街には消えることのない爪痕が残る。

 街は荒れ果て、路頭に迷った破落戸(ならずもの)や盗賊に塗れる事となるだろう。


 そうなればこの街はそういった連中の住処になり、ゆくゆくはスラムという名の楽園となるであろう。


「今宵が楽しみだな」


 グリストとゲデインは一度肩を回し、己の獲物を不気味に凝視する。今宵始まる狂乱(パレード)に思いを馳せているのであろう。

 冒険者として魔物を倒すだけに飽きたらず、人を殺す外法を好んだ者達の宴が始まるぞ。



 -------------------------------------------------・・・



 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル


「行動開始。散って!!」

「ショウチ」


 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ


 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ



 ・・・-------------------------------------------------



 十字槍を壁に立てかけ、俺は地下の自室で入念に準備をする。あと少しで始まるであろうカナンの襲撃に備え、槍の手入れとアイテムのチェックを済ませる為だ。


 長年冒険者として技術を高めていた俺は、ちょっとした諍いで人を殺めた。それが原因で呆気なくギルドを追放された。今までの俺が培ってきた功績等関係なかった。

 それが俺には虚しく、悔しく、憤怒した。


 いつしかギルドの連中を殺し尽くしてやろうかとさえ思った。そこに奴が現れた。

 俺は黒翼に所属し、殺人、盗みなんでもやった。それは・・・俺が長年続けてきた冒険者稼業よりも俺を楽しませた。


 金なんて腐るほど手に入った。その気になればブラッハの様に望みの女でさえ手中に収めることができるだろう

 弱者を虐げることは好きではないが、それでも殺しを楽しめることに変わりはない。


 あ奴らがのうのうと暮らしているこの街が崩壊するまであと少し・・・。

 俺を追放したギルドの連中に一泡吹かせてやる。奴らには俺が舐めた辛酸以上のものを味あわせてやる。



 ギィ


「ッ!?」


 壁に立て掛けた槍を手に取り、扉へと突き放つ。

 扉は十字槍の衝撃を諸に受け粉々に吹き飛び、扉の前に居たであろう人物は後ろへと跳躍した。


 このアジトでは俺の部屋に来る者は大凡限られている。そして、俺の部屋に入る前には必ず遠方から扉に意思を三回ぶつけるといった合図を出す。

 ブラッハはその限りではないが、気配を殺し足音を忍ばせてまで来るような奴ではないことは明らかだ。


 つまり、扉の前に立っているのは・・・侵入者だ。


 後方へ着地した人物の姿を壁にかけられた魔道具ランプが映し出す。

 足元まである長いローブに身を包み、背格好は俺とほぼ同じ、武器の類は伺えないがローブの中に隠し持っているのだろう。


 跳躍から着地までの一連の動きに乱れが見られず、相当な経験を積んだ者なのは一目瞭然である。そして、着地の瞬間の音のなさ、武器を持っているとしたら金属が擦れ合うこともさせなかったその身のこなし・・・間違いなく強い。


 フードも目深に被られていて対象の顔がわからないが・・・


「何者だ?」

「主人の命令だ。貴様等を一匹残らず根絶やしにする」

「人間が魔族に適うとでも」

「・・・」


 声からして男、極めつけは二つ目の質問の祭に若干の殺気が感じられたことから恐らく魔族・・・。無駄なことは喋らない辺りが厄介だが、揺さぶりに引っ掛かった事からこういった駆け引きには慣れていないな。


 だがしかし・・・なぜこの場所がバレたのだ?

 俺の位置に的確に強者が送られている事からして偶然では有り得ない。ギルドが無作為に俺達の所まで攻め込んでくる・・・有り得ないな。


 カナンの街を急襲する情報はおやっさんと俺、ゲデイン、ブラッハしか知らされておらず、ゲデインの子飼いの連中でさえ今日知ったばかりなはずだ。

 ブラッハが口を滑らした・・・あいつはここ最近ここを出ていない。


 それに漏れたとしても、ギルドの動きに俺達が気づかないはずがない。ギルドには目付け役の者もいるし、行動を起こせば直ぐに露見する。つまりは、慌ただしい動きは間違いなく俺達のメンバーの誰かの目に入るはずだ。


 討伐依頼が出たというのは聞いていたし、おやっさんにも伝えた。

 過去にも何回かこういうことはあったが、結局は動かずじまいで頓挫していた。一度決行まで動きかけたが、その時はメンバーがいち早く察知し対処した。


 そして今回は衛兵達にも動きはあまり見られず、俺達の所在や動きを嗅ぎまわっている様子もなかった。

 だというのにどうして・・・。


 地下の情報が漏れている事もおかしいのだが、これはゲデインの子飼い辺りが酒で漏らしのだろう。

 しかし、精密な位置の情報を知っている者などほぼおらず、誰にも気取られる事なくここに来ることなんて不可能だ。

 つまりはどうにかしてここに来たのだ。


 内通者がいるなんてこともあるわけがない。

 怪しい動きをしている連中もいなかった・・・。


「ふん!!!」


 瞬間に三歩踏み込み、十字槍を突き放つ。

 同時に横に飛び退って逃げる何者かを横薙ぎの一線で追撃するが、手応えなし。軽く後ろに飛ぶだけで躱されてしまった。


 何故情報が漏れたのかなど今はどうでもいい。

 今は、こいつを殺すことだけを考えよう。



 -------------------------------------------------・・・



「さてと、行動開始したけど・・・あったったこれか?」

「これで間違いないですね」

「ならここで待つとするか?みんな手筈通りに進めてくれるかな?」

「ホウコク・・・アンデッドコロシタ・・・ドウスレバイイ?」

「うーん、んじゃ全員の様子を見てきてくれるかな?もしやり過ぎたりしたら止めてくれる?」

「ワカッタ」


戦闘パート開始!!

フードの男とはいったい誰なのか?乞うご期待です!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!


※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。

方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。


わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!

皆様が快適に読んで下さるよう誠心誠意努力します!

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