開拓:一難去ってまた一難でした!
ハッピーニューイヤー!!
次話投稿は一週間以内です!
どうしてこうなった。今や俺の代名詞ともなっているこの言葉だが、自分の中でそんなことはないさ!と少しばかり思っていた自分もいたわけだ。
しかし、事ここに至ってはもう逃れようがない。
今自分は、騎士・・・に囲まれてどこかしらへと連行されている。
別に自分はそれほど悪いこともしていない・・・はずだ。
は!?もしかして、ここに動物を愛護している団体がいて、あれがその対象だったとか!?
・・・ないな。魔物って言ってたし。
でもそうだとすると本当に身に覚えがないんだけどなぁ。
ってことで振り返ってみよう。
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突如として出現した、B級の中でもかなり上位に位置すると言われているベヒーモスは、俺達を獲物とみなして追いかけてくる。
風の導きの全員が必死こいて逃げてたからかなり手強い魔物なのかな?と周囲掌握でステータスを確認してみると・・・。
ベヒーモスLV3
称号
狂獣
HP:781
MP:12
STR:650
VIT:590
AGL:350
MGI:112
LUC:8
位階:B
スキル:狂走、突進
エクストラスキル:なし
という結果になった
最初は配下よりも強く、少しビビったけど、よくよく考えてみると俺よりも遥かに弱いわけだ。
でもまぁ・・・油断は禁物だ。今まで、大丈夫だろうと油断した結果死にかけたことが何回あったことか・・・。
「ベヒーモスかぁ・・・B級の魔物っていうと強いんだよなぁ」
「大丈夫!! 私達がなんとかするから」
そうして唸っていると、横からネクルトさんが俺に向かってそう叫んだ。一応勝てる相手なのか?
そう思って、周囲掌握で掴んだ情報で彼らに視点を合わせてみると・・・。
平均300・・・これはどう考えても無理だな。
あぁ、でも人族は装備や道具で遥かに強い相手を倒すこともできるってディーレが言ってたっけ?
魔族は高い力と知恵を持っているが数が少ない。人間は魔族と比べて力は低いが、魔族を凌ぐ高い知恵を持っていて数が多い。それで、両者のバランスは取れているらしい。
でも、ただの護衛にベヒーモスを倒せるような用意なんてしてるわけもないな。
思慮を巡らせていると、ネクルトさんが立ち止まりベヒーモスと向かい合う。
それに続いて、テイルさん、ルイリヒトさん、ベイリッヒさんがネクルトさんの元へと駆け寄る。
逃げられないと悟ったのか、テイルさん達は決死の覚悟でベヒーモスと対峙する。
「ユガ達は早く逃げて街の人に伝えてくれ!! ベヒーモスは俺達がなんとか止めてみせる!! だから早く」
うーん・・・これって俺達を逃がしてくれようとしてるよなぁ。
見捨てるって選択肢は嫌だし・・・でも、俺がどうこうなるならいいんだけどキクがベヒーモス相手に大丈夫か心配だし・・・。
『大丈夫じゃない? あの魔物は理性もなさそうだし、あなたならすぐに倒せると思うわよ』
またもウンウン唸っている俺にそう呟いたのは、肩の辺りをパタパタと飛んでいる妖精姿のディーレさんだった。人型になれば美しい、妖精姿は愛らしい、中間の姿は可愛らしい、ディーレさんは素晴らしい。
『あ、ありがとう・・・』
肩に腰掛けたディーレさんの顔が真っ赤になる。
照れてるディーレさんもやっぱり可愛いなぁ。
「それはさておき、本当に大丈夫なの?」
『あの程度なら、あなたと私とで一瞬で蹴散らせば大丈夫よ。キクちゃんにも被害は出ないわ』
「そう? じゃぁ、やってみようか。ダメならどうにかして全員で逃げよう。キクもそれでいい・・・か?」
すると、キクが腰の辺りを指でツンツンとつついてくる。何かあったのかなと後ろを振り返ってみると、・・・キラキラした目で「私にも一発」って顔をしていた。
ステータス差をみると、やっぱり心配で反対したんだけど、キクの眼差しに押されて呆気なく承諾。
ディーレさんも大丈夫だとは言ってくれているが、可愛い配下が傷つく姿は出来る限り見たくない・・・。
ということで「無茶はしない」「一発だけ」「俺の言う事をちゃんと聞く」の三つを約束した上で、キクは意気揚々とベヒーモスへと向かって行った。
その最中にテイルさん達はスキルを使用したそうで、それぞれ体から魔力が滲み出している。
成る程・・・人族も同様にスキルを使えるわけか・・・でも魔物、魔族と同じスキルを使えるのかな? そうだとしたら、俺みたいな変化を使える人もいたりするのかな?
これも、考察対象としよう。
テイルさん達とベヒーモスが互いに交戦範囲へと入るか否かの直後、テイルさん達の背後から飛び出したキクが、全身のバネを駆使した渾身のアッパーカットがベヒーモスの顎へと直撃する。
キクは背がちっちゃくてヒョロいんだけど、一発の破壊力なら配下の中でも一、二を争うからなぁ。
まぁ、そんなキクの一撃を受けたベヒーモスは当然空へと舞い上がるわけで、やがて重力に引かれて落ちてくる。
一発だけといったはずなのに、一発だけじゃ発散できなかったのか、キクの周りを魔力が渦巻き始める。
その魔力はキクの両手へと収束し、キクの両手を真っ赤な炎を思わせる魔力の塊が覆う。
そのままベヒーモスの落下点へと潜り込み、上を見上げる。
「アタイの本気・・・見したげる・・・狂撃・炎舞!!」
そういえば、犬神に進化したコクヨウ達全員はエクストラスキルを習得したんだっけ?
大鬼に進化したショウゲツ達はヨウキ以外持っていなかったっけ?
配下達も日に日に立派になっていくなぁ・・・子を持つ親の気持ちがなんとなくわかったような気がする。
キクは落ちてきたベヒーモスに普段よりも馬鹿でかい轟音を響かせながら、何十発もの拳を叩き込む。これが女子力(物理)・・・。
ベヒーモスはさっきよりも高く上空に舞う。身体中から煙を上げながら、空中に滞空した瞬間、キクがこちらへと視線を投げかける。
体に巡らせていた魔力をディーレさんへと渡し、魔力の渦が俺とディーレさんの周りを覆い始める。
俺とディーレさんから発された大量の魔力は一つの巨大な竜巻を生じさせる。
久々に放つそれは以前のものよりも遥かに巨大で、威力も増している。膨大な水の中に潜む水刃は獲物を求めて竜巻の中を縦横無尽に駆け回っている。
それを空中に滞空するベヒーモスへ向けて放つ。
巨大な竜巻はベヒーモスの体を軽々と飲み込み、水刃は我が意を得たりとばかりに、竜巻の中へと侵入した異物を切り刻もうとベヒーモスの体へと襲い掛かる。
竜巻の中で切り刻まれたベヒーモスは、やがて竜巻の中から外へと弾き飛ばされ巨大な岩へと打ち付けられる。かなり飛んだなぁ・・・。
流石にやったかな?と思っていると、ベヒーモスの体がぴくりと動いたのを捉えた。
しぶといなぁ・・・。
あれ?ベヒーモスがなんか物凄い事になってない?
体が真っ赤になってるし、なんだか刺々しいし・・・あ、やっべぇ、ステータスが倍になってるぞぉ。
キクは不機嫌そうな顔を隠しもしないで、ベヒーモスを睨みつける。
かなりイライラしているのだろう、尻尾と耳がピンと上を向いている。
「あれぇ・・・ディーレさん、倒せなかったんだけど!?」
「・・・むぅ」
ディーレさんが不貞腐れてしまっている・・・。後で甘い果物を上げてご機嫌を取ろう。
「主人・・・あいつうざい・・・」
「あぁ、うん。そだな」
おぉ・・・なんだかテイルさん達がこっちを見てくるんだけど、努めて無視しよう。
うーん、それにしてもどうしてやろうか?ベヒーモスも、こっちに突撃してきてるし時間もないしなぁ。やるっきゃないかぁ。
「ディーレさん、ちょっと全力で行こうか?お願いできるか?」
「任せて・・・」
ディーレはちょっと不機嫌そうだったけれど、「全力」と聞いてやる気を出したようだ。
・・・あ、ディーレさんの目が光った、これはやばい。
「全力・・・ね」
「あ、ほどほd」
「全力・・・ね」
「あ、はい・・・」
「じゃあ、私の後に続いて詠唱して」
「はい・・・」
有無を言わさぬディーレの迫力に押されて、「詠唱」することになってしまった・・・。
ディーレは目をキラキラと輝かせながら、全力の力を出せることがかなり嬉しいようだ。普段俺の中で退屈しているもんな・・・まぁ偶にはいいか。
っても詠唱か・・・出来るんだろうか?
詠唱って確か魔法を安定させたり、威力を調節したりするものだったりするんだよな?
俺の滑舌で噛まずにしっかり言えるかが心配だ。
すると、頭の中に文字が浮かび上がる。
[コドモノナガレワハジメニキヨク]
へぇ、こういう風に頭の中に浮かんでくるものなのか。
「水の流れは初めに清く」
『清らかな水は激しさを増す激流に』
「成長するは大いなる姿」
『思い描く、龍に至った一匹の生』
「滝を登りし、矮小な生」
『至ったものは、その名を変えた』
「紡げ、その名を」
「叫べ、その名を」
「『水天滅激龍!!!!』」
恥っずかしいいいぃぃぃ!!!
なんだろう。うん、かっこいいけど物凄い小っ恥ずかしい・・・。
うーん。これって文脈的から言って「鯉」の物語だよなぁ?
滝を登って、龍に至るって伝説の奴だよなぁ・・・詠唱ってこんな感じの物ばっかなのかなぁ?
うん?なんだか体から力が抜けていく感じが・・・まさかとは思うけどこの手の中に溜まってるすんごいのって魔力・・・なわけないよね!!
『何してるの? はやく貴方のイメージであれやっちゃいなさい』
あ、やっぱりこれって魔力なんですね。
まさか、こんなに凄い事になってるなんて知らなかった・・・。そういえば俺もBランクの魔族なんだっけ?
ベヒーモスがあの暴走?状態になってステータスが同じくらいか・・・これでB級の上位なら俺もそうなのかな?
っと、近づいてきたな。やっちまうか。
イメージしたのは「竜」、西洋の方の「ドラゴン」とは違って胴体が長い「竜」である。ドラゴンもありかな?と思ったんだけど、「セイリュウ」だし「竜」だなと結論づけた。
な、なんだろう。凄いな。
なんか意志を持ってるみたいだ・・・目とかもあるし、体の動きなんかもまるで生きてるみたいで、なんだか凄い。
「なんか生きてるみたいだな」
『間違ってないわね。そこら辺をウロウロしていた精霊が乗り移って一つの意思となっているわ・・・これは当分消滅しそうにないわね』
「まじか!?」
こりゃぁ、えらいものを作り上げてしまったみたいだなぁ。
・・・うん。忘れよう!!
一匹の竜と化した魔法はベヒーモスを軽々と喰らい、そのまま生まれてきたことを楽しむかの様に空を渦巻くように飛び続け、やがて空の彼方へと消え去って行った。
あ、ベヒーモスが落ちてきた。
あぁ、まぁ想像はしてたけどかなりグロイな・・・俺は大丈夫だけどディーレとキクは大丈夫かな?
二人ともケロっとしてる。まぁキクは魔物歴が長かったし、ディーレも長いこと生きてるもんな。
「これでいいかな・・・あぁ恥ずかしい・・・」
『上出来ね』
「主人・・・かっこよかった」
「あぁ、はいはい。ありがとう」
うん。やっぱり詠唱は心に来るものがあるな・・・中学時代を思い出してしまう。
そういえば、何か忘れてるような気がしないでもない。
「夢・・・じゃないのか?」
「夢だと思いたいわ・・・」
「そうであるな・・・」
「うん・・・」
さて・・・どうしようか
・・・-------------------------------------------------
これが事の顛末であるわけで・・・あの後テイルさん達に質問攻めにあったり、それにボディーブローを綺麗にぶちかましたキクを怒ったり、どうにかしてこの場の状況を治めよ
うと頑張って、なんとか納得して貰えたんだけど・・・。
数時間前から一言も発さない騎士に両脇を挟まれて居心地が悪い・・・唯一の和みは膝の上に座っているキクだけだ。
騎士・・・多分王都?から派遣された騎士様だと思うんだけど、その出で立ちは全身を甲冑で包み込み、腰からロングソードを下げ、胸の辺りに何かの紋章が刻まれている。
実はこの騎士様にはこの馬車に乗るまでに一度迷惑をかけてしまっている・・・。実は騎士様の他にも、数名の冒険者も同行していたのだ。
騎士様は何が起こったのかを書類に纏める為にテイルさん達と話し合っていたんだけど、ルイリヒトさん曰く高ランク冒険者はというと手持ち無沙汰になっていたわけだ。
それもそのはず、冒険者がここに派遣された理由は出現したベヒーモスの討伐だったからだ。
しっかりとした装備に身を纏った屈強な戦士が数人その場で立ち尽くしていた。
で、事が起こったのが騎士様は聞き取り調査を開始して一時間。おそらく一つのパーティなのだろう三人の男が痺れを切らして、騎士様に詰め寄ったのだ。
傍から聞いていると「報酬はどうなる?」ってことが大半だったらしいのだが、討伐対象だったベヒーモスは既に俺たちの手で事切れているわけで・・・こうなると報酬は雀の涙程の手間賃という結果に終わってしまう。
それが気に食わないのだろうその冒険者パーティーは初めは騎士様に食って掛かっていたわけだ。
うん・・・多分文脈から分かっているとは思うんだけど「初めは」である。
次にターゲットにされたのはテイルさん達で、かなり言い寄られていた。
しかし、テイルさん達は「そもそも私達はベヒーモスと全く交戦していない」と主張・・・。そうなると・・・必然的に俺達になるわけだ・・・。
まぁ、予想通りだったんだけどこれがひどかった・・・。
やれ「ベヒーモスの手柄を寄越せだ」「ベヒーモスの素材の殆どを寄越せ」だのと宣ったのだ。
それに、「いや、それは・・・」「手柄は俺と風の導きですし・・・」ってな感じで対応していると、ベタな展開が待っているわけでして、そのパーティーの一人が俺に突っ掛って来た。
それに、溜息をついていると・・・その一人がくの字に曲がって吹っ飛んでいった。
そうです。ブチ切れたのはキクです!!
そっからは俺と騎士様、テイルさん達、ほかの冒険者さん総出で切れたキクを止めに掛かったわけだ。
結果は、突っ掛って来たパーティ三名は、重傷一名、軽傷二名・・・。
キクを静めた後は、全員に頭を下げて回ったのは言うまでもない。唯、騎士様の一名が親指を立てていたような・・・まぁ見間違いだろう。
因みにその三名は傷だけ治して、荷台に積んである。
そうして、身の縮む思いを抱きながら更に時間が経ち、馬車が停止する。
外からは恐らく門番をしていたのであろう兵士が御者と話し合っている。すると、また馬車が動き始める。
以前に聞いたことのある街の喧騒が馬車の外から聴こえてくる。
どうやらやっとカナンに着いたようだ。
「今からギルドへと向かう。君にはそこのギルド長に会って貰う」
「はい」
「なに、緊張することはない。君を犯罪者扱いするわけではない」
「そうなんですか?」
「あぁ」
どうやら、独房行きではなかったようだ。仮にも冒険者を三人程黄泉送りに仕掛けた訳だし、何かあるんじゃないかと内心ビクビクしていたけど、何事もなくてよかった・・・。
数分後馬車は止まり、騎士様が先に外へと出て俺とキクをギルドの中へと誘導する。
ギルドの扉を潜ると、多くの冒険者達が俺達の姿を見て何事かと目を丸くしている。
騎士様はギルドの一番奥にある扉を開け、これまた一番奥にある扉の前へと進む。騎士様は扉の前まで歩み出ると、三度扉をノックする。
「入れ」
中から渋いおじさん、恐らくギルド長であるだろう人の声が聞こえる。
騎士様はその扉の両脇へと控え、俺とキクに中へ入れと促す。
俺は緊張した心を少しでも落ち着けようと、一度空気を肺一杯に吸い込み吐き出す。意を決してドアノブを捻り、中へと歩みを進める。
中はきっちりと整えられた書斎の様で、ドラマなどでよく見かける社長室にありそうな机と椅子がある。
そこに、初老の男性が腰掛けていて、後ろに女性の職員さんと・・・ウェルシュバイン家の息女さんの付き人?さんが控えている。
キクは普段通り何を考えているのか掴めない顔をしているが、俺はガッチガチに緊張している。こういう場は慣れてないんだよなぁ・・・。
「初めまして、当ギルドを統括するギルド長『サンタナ』だ。後ろに控えているのは『ユリィタ』だ」
「初めまして、Fランク冒険者ユガ・・・とキクです。宜しくお願い致します」
目の前に座るギルド長サンタナさんは、鋭い眼光で俺とキク交互に視線を向ける。
その視線と態度から、座っているだけだというのにギルド長としての貫禄が滲み出ている。
ギルド長は少しの間こちらを見続けていたが、やがて目を伏せて口を開く。
「護衛対象者への速やかな対処、ベヒーモスの討伐、カナンギルドを治める長として感謝する。・・・ここに来て貰ったのは他でもないその事についてなんだ。早馬から伝えられた報告書に少々気になる点が幾つかあってな。少々質問させてもらう。」
あぁ、やっぱりそうなるよな。
テイルさん達から聞かされた話では、Fランクの冒険者がBランク上位の魔物を倒す・・・それも圧倒することなど有り得ないことなのだという。
Bランク上位の魔物っていうのは「Bランクの冒険者パーティーが幾つか協力」して倒すことがやっとな魔物だという。
それをFランクの、しかも成り立て二人で捩じ伏せたと聞いたら、報告書の間違いを疑うのも当然だろう。
「君達は魔族で間違いないな?」
「はい」
「階位などは?」
「階位?」
「・・・いや、いい。報告書には『風の導き』の者達は君達がベヒーモスを討伐したと言っているのだが・・・これに嘘偽りはないか?」
「・・・はい」
ギルド長は後ろに控える女性職員さんの方へと目を向ける。女性職員さんはそれに気づき一度頷くと、ギルド長は再びこちらへと視線を戻す。
「彼女には『真実の眼』を使わせている故に嘘は見抜ける。街を守ってくれた君達を疑うようで悪いが、正確な情報を把握するため協力頼む」
ギルド長はそう言って軽く頭を下げる。
「さて、それでなんだが今回の件は緊急の要件として、ウェルシュバイン家に書状を送らせて貰った。あちらもかなり大騒ぎになったが娘さんが無事だったってことで落ち着いたようだ」
まぁ、貴族の息女様が危険な目に遭ったんだから当然だろう。
自分の娘が強力な魔物に襲われたとなったら気が気でないだろうしな。
「それでなんだが・・・ウェルシュバイン家現当主が君達に会って礼を言いたいとの事だ」
「え?でも息女様を逃がしたのはテイルさん達風の導きの人達なんですけど・・・」
「うむ。報告書ではそう受け取っているが、ベヒーモスを討伐した君が一番の功労者だって言うのは明らかだしな。ベヒーモスを逃がしていれば、娘さんだけでなく街にも被害が出てたかもしれないしな」
うーん。まぁ、そう言われるとそうなんだけど。
テイルさん達に悪い気がするなぁ。確かに俺とキク、ディーレでベヒーモスをやったとはいっても、初めに戦うことを決心したのはテイルさん達だしなぁ。
「勿論、彼等にもそれ相応の報酬は用意してある。ランク昇格と金、公式の一流冒険者として帳簿にも載せた」
あぁ、そうなのか。ちゃんと報酬があるなら大丈夫だ。
ん?そういえば依頼は達成してないけどいいのかな?
「受けていた依頼ってどうなったんですか?」
「あぁ・・・それはウェルシュバイン家直々に指名依頼が出ていてな。ウェルシュバイン家の私兵と君達で再び護衛依頼をやってもらうことになった」
つまり・・・貴族様から気に入られたってこと!?
うわぁまずい。サテラに何て言えばいいだろう・・・。
「唯君達はFランクで普通なら護衛依頼を受けられない。ということでだ、今回の件を踏まえて、異例ではあるが君達にはDランクへと昇格してもらう」
「飛び級って事ですか」
「そうだ」
おぉ。一気にDランクに昇格したぞ!!
うーんでも、まだ二回しかクエスト受けてないのにいいのかな?
冒険者は様々な依頼を通して経験を積み、 冒険のいろはを学んでいくものだって聞いた。俺なんて、いろはどころか右も左もわからないような初心者もいいところなんだけどなぁ。
「本当ならコツコツと経験を積んでもらわないといけないが、君達の戦闘能力から大丈夫だと結論が出た・・・まぁ本音は貴族様を邪険に扱えないってもんだけどな」
そう言って苦笑するギルド長に、申し訳なさそうに頭を下げるユリィタさん。
えっと、後ろの人忘れてませんかねぇ・・・。
さっきから一言も喋ってませんけど、一応お付きの人なんでしょう?
「おっと。ついつい口が滑ったな」
「聞かなかったことに致します」
「ははっありがたい。こちらはウェルシュバイン家のメイド『ガネッサ』だ。昔馴染みで、少しは融通がきく」
ギルド長がそう告げると、ガネッサさんは軽くお辞儀をした。
「この度はお嬢様のお命を救って頂き、ありがとうございます。指名依頼の方、無理に受ける必要はございません。しかしながら、私と致しましてもあなたのような信頼のおける人物に護衛して頂ければ嬉しいのですが・・・どうでしょうか?」
うーん、正直サテラの事を考えるとこの依頼はパスした方がいいと思ったんだけどなぁ。
申し訳なさそうに俺に頼んでくるガネッサさんは、しっかりと俺の事も考えてくれてるんだよなぁ。
それに少し心配でもある。
いくら私兵が護衛に当たるといっても、またベヒーモスみたいのが出てしまったらまず助からないだろう。
俺とディーレは組めば、勝てない敵でも時間稼ぎはできるしな。
「・・・分かりました。引き受けさせていただきます」
「お心遣い感謝致します。報酬額は先日の報酬額の三倍提供させていただきます」
「あ、はい」
ってことで、引き受ける事になった。
出発は諸事情で明後日になってしまったが、それも仕方ないね。理由はベヒーモスが出現した事で、周囲一辺の緊急調査が行われる事になったからだ。
それに明日は、俺にも用事が入ってしまった。
ベヒーモスを解体した素材が明日ギルドに届くそうで、それの買い取り作業などをしなければいけない。
あぁ・・・それに、サテラに謝らないといけないんだよなぁ。
ギルド長とガネッサさんは未だ事後処理が完遂できていないそうで、俺が去った後はまた事後処理に奔走するそうだ。
そして・・・今自分にはそれ以上の問題が一つ目の前に立ちはだかっているのである。
「噂に聞いたんだが、お前達がベヒーモスを倒したって?冗談はよせよ」
「目立ちたいからって嘘を流すのはよくねぇよなぁ?」
「お前らみてぇなガキがいきがってんじゃねぇぞ!!」
はい。絶賛絡まれております。
新年明けましておめでとうございます!
今年も一年よろしくお願い致します!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になり、今回の様に筆が踊りますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!
皆様が快適に読んで下さるよう誠心誠意努力します!